テスト結果が出た
3月も初旬を過ぎ、1年生を締めくくる期末テストが始まった。
3日間続くテストの毎日、僕は朝から晩まで机に向かい、放課後になるとすぐに鞄を掴んであゆみちゃんの家の薬局へ急いだ。 理由は一つ。あかり先輩が、そこに短い間だけアルバイトに来ていたからだ。
大学生になったらアルバイトをしてみたいと言っていた先輩に、あゆみちゃんのお母さんが「うちの薬局でアルバイトの経験を積んでみたら?」と声をかけてくれたらしい。先輩も快く了承し、毎日ではないけれど、短い間になるだけ手伝うことになった。
あかり先輩の頭の良さはアルバイトでも本物だった。あゆみちゃんから聞く話では、すぐにレジ操作を覚え、お客さんにも優しく対応して、まるで昔から働いていたかのように楽しそうにしているという。
僕が薬局へ向かうのは、もちろんあゆみちゃんと一緒にテスト勉強をするためでもあった。でも、本当の目的は――あかり先輩に会うことだった。先輩がエプロンを着けて、カウンターの向こうで微笑んでいる姿を見るだけで、心がふっと軽くなる。あゆみちゃんも僕も、なんだか嬉しくて仕方なかった。
もちろん勉強が一番の目的だけど、先輩が近くにいるだけで、安心感がまるで違う。そのアルバイトの合間に、先輩は4月から住むアパートも決め、引越しの日取りまで決めてしまったらしい。僕らがその話を聞いたとき、少し胸がざわついた。
でもあかり先輩はいつもの明るい笑顔で、「引越しの時は、色々と手伝ってね?」 と、からかうように言ってきた。まだまだ僕らをドキドキさせるつもり満々なのが、先輩らしい。
数日後、頑張った1年生最後の期末テストの結果が返ってきた。 答案用紙をめくった瞬間、僕は思わず小さくガッツポーズをした。テスト勉強を頑張った成果は、確実に表れていた。あかり先輩が出していた目標値を――大幅に超えていた。
担任の先生からも、「留年になるか心配してたのに……2学期以降、右肩上がりで上がってるな。驚いたよ」と、目を丸くされてしまった。あゆみちゃんも僕の答案を見て本気で驚いていた。「ゆうな君、良く頑張ったね」と笑顔で言ってくれて僕は嬉しかった。
でも実は、僕は密かに思っていた。あゆみちゃんの成績に、少しでも近づけたらいいなって。1学期末は赤点だらけだった僕からすれば、かなり近づいた。でも、まだまだ差はあった。それでも、2年生になったらもっと頑張って、あゆみちゃんと同じくらいの成績になる――そんな新しい目標ができた。
この結果を、一刻も早くあかり先輩に伝えたくて、放課後になると僕はあゆみちゃんと一緒に薬局へ駆け込んだ。カウンターの向こうで先輩がレジを打っている姿が見えた瞬間、胸が高鳴った。レジ作業が終わり僕らを見たあかり先輩に。
「先輩! 見て!」 採点済みの答案を差し出すと、先輩は目を輝かせて受け取った。一枚一枚丁寧に確認し、平均点を計算する。先輩の表情が、驚きに変わっていくのがわかった。「
え……これ、本当にゆうな君の?」 そして、次の瞬間――「良く頑張ったね……!」 先輩はカウンターから飛び出してきて、僕をぎゅっと抱きしめてくれた。エプロンの柔らかい感触と、いつもの優しい香り。顔を上げると、先輩の目には嬉し涙が溢れていた。
僕は本当に嬉しかった。 僕のいろんな窮地を救ってくれたあかり先輩。ちょっと変わってるけど、背が高くて美人で、僕の成績をまるで自分のことのように喜んでくれる先輩。その笑顔を、こんなに近くで見られる幸せを、僕は噛みしめていた。
あかり先輩は少し目を拭ってから、予想外のことを言い出した。
「ゆうな君、本当に頑張ったからご褒美に……何処か行きたいところがあったら、連れてってあげるよ」 僕は少し考えて、静かに口を開いた。
「僕は遊園地……行きたいです」 その言葉が出た瞬間、先輩とあゆみちゃんの目が同時に見開かれた。 実はこれまで、二人からは僕に何度も「遊園地に行こうよ」と誘ってくれていた。でも僕は絶叫系が大の苦手で、ずっと断っていたのだ。
でも今回は違う。あかり先輩を喜ばせたくて、僕の方からリクエストした。二人は最初驚いていたけど、すぐに顔をくしゃくしゃにして喜んでくれた。「本当? ゆうな君から言うなんて!」「絶対行こう!」 その場で計画が立てられた。
3学期が終わり、短い春休みに入ったらすぐに行けるように。けれど先輩には同級生との卒業旅行や引越しもある。だから、僕ら三人で行ける日は、たった一日しかなかった。
それでも、僕はその日を指折り数えて、心の底から楽しみにしていた。
あかり先輩と良い思い出を作るんだと強く願いながら、その日が来るのを楽しみに待っていた。
ここまで読んでいただいてありがとうございます
あかり先輩のおかげで成績優秀になった、ゆうな君からの遊園地への誘いでした




