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初ドライブ

年が明けて1月になり、短い冬休みも終わり、3学期が始まった。


1・2年生は授業が始まったけど、3年生の先輩方の大学受験が本格的に始まった。なので、今まで通りに通学して来る先輩方は大幅に減った。僕の高校は卒業後の進路が決まった生徒の場合、3学期は週に1度の通学のみでOKになり、3年生の教室は静まり返る事が多かった。


あかり先輩は推薦入試で合格が決まっていたから、週に1度は通学して来ると思っていたが、3学期が始まってもあかり先輩の姿は高校には無かった。学校帰りにあかり先輩の豪邸に見に行っても、夕方になっても家の中が明るくなることは無かった。


それは冬休み中からあかり先輩は自動車の免許取得のために、自動車教習所の合宿免許に出掛けていたからだ。合宿免許は2週間ちょっとの期間だと聞いていた。僕の高校は進路が決まっている場合であれば、申請すれば合宿免許のために通学する事は免除されていた。


なので、あかり先輩は冬休み中から家を離れていた。今までならば、あかり先輩に呼び出されて学校内で合う事もあったのに、3年生の教室に行っても会えない寂しさを僕だけでなく、あゆみちゃんも感じていた。まだ先輩が帰って来る2週間が経っていないのに、学校帰りに先輩の豪邸に寄っては、もしかして家の電気が点いていないかを確認する日々だったよ。


LINEでやり取りはしていたんだけど、あかり先輩に会えない事がこんなにも辛いのかと思ったね。学校の廊下を歩くたび、夏の思い出がよみがえって、胸がきゅっと締めつけられる。そんな3学期の始まりだったけど、もう少しで先輩が合宿免許に出掛けて2週間が経とうとした時に、


【予定通りに帰れるよ】とLINEが届いた。


僕もあゆみちゃんも喜んだよ。続けて


【免許取ったら3人でドライブに行こうね】ともあった。先輩の運転で出掛ける日を楽しみに、学校に通う事になったよ。


そして、数日後にあかり先輩が合宿免許から帰ってきた。合宿免許から帰って来て嬉しかったけど、今までも大きかったあかり先輩がより大きく見えた。もう免許証を持っていると思って、免許証を見せてと言ったけど、「まだ免許は持っていないよ」と笑われてしまった。


合宿免許は卒業したけど、まだ運転免許センターで学科試験があって、それに合格してやっと運転免許証が交付してもらえるんだよと、笑顔で教えてくれた。僕らはもう免許を持っていると思ったからちょっと残念だったし、まだ学科試験があるんだと思ったら、免許を取るのも大変だなと思ったね。


それで、また数日後には、あかり先輩は無事に学科試験にも合格して、免許証を貰って来て僕らに自慢してきたよ。早速その週末に、レンタカーでのドライブの予定を立てた。寒いから少しでも暖かい南の海岸を目指した。


でも、初心者の先輩の負担を考慮して、電車で出掛けて駅近のレンタカー屋さんで車を借りる事にした。レンタカーを予約をして、僕らは電車で出掛けたよ。レンタカー屋さんで車を借りて、初心者マークを貼って、先輩の運転で楽しいドライブのはずだった。


でもね―――  


あゆみちゃんが助手席に座り、僕がその後ろに座るように言われたんだよね。シートベルトの着用を言って。何でだろと? と思っていたら、あかり先輩は一つずつ声を出して確認し始めてから、緊張した顔でハンドルを握って車を発進させたんだよね。


僕とあゆみちゃんは楽しいドライブを期待してたんだけど、あかり先輩のドライブは予想と違っていたね。あかり先輩は僕とあゆみちゃんに「左側見て!」とか「後ろを見て!」と、普段は言わないような命令調で驚いたよ。直ぐに僕らは緊張感に満たされてしまった。


ナビもセットしていたんだけど、あかり先輩はナビを見ている余裕は無いようで、助手席のあゆみちゃんにナビを見ている様にも言って、あゆみちゃんも緊張した顔でナビの画面を見ていたよ。普段のあかり先輩はお喋りで、いつも楽しそうに喋っている。でも初ドライブ中の先輩は運転に集中しているようで全くの無口で、僕らの緊張感を煽っていた。


もし何でもない会話をしたら、先輩から「煩い!気が散る!」とか言われて怒られそうな雰囲気で、楽しいドライブとは真反対だった。僕もあゆみちゃんもドキドキの初ドライブだったよ。


でも、そんなあかり先輩も次第に運転にも慣れてきて、普通に会話を出来る様になってきて、やっと僕らを安心させたよ。「疲れたからあそこのコンビニに入ろう」と言い、コンビニの駐車場に車を停めたけど、エンジンを切った瞬間に先輩は大きなため息をついて「緊張した!」と言っていたね。


僕らも緊張の糸が切れて、ドアを開けて外の空気を吸ってホッとしたね。あゆみちゃんもホッとした顔でお互い思わず笑ってしまった。海岸通りの空気は暖かく、少しでも春の感じがした。コンビニで飲み物を買って再び車を出した。


僕が後ろを見て「後ろは大丈夫です!」と。あゆみちゃんも「左も大丈夫です」と言って先輩をフォローしたよ。砂浜の近くの駐車場に止めて、砂浜を3人で歩いた。先輩は初めてのドライブで短い時間の運転でも疲れているように感じたので、長めの休憩を取った。


3人でベンチに座り、ちょっと冷めたペットボトルを手に持って、1時間ぐらい色んな話をした。何でもない会話が本当に楽しかった。


車を返す時間もあり、来た道を戻ったけど、もう運転に慣れたのか、先輩から普通に話し掛けてきて、僕らは内心ホッとしていた。帰り掛けにセルフのガソリンスタンドで給油したけど、初めての給油で先輩も大変そうだった。


それで無事にレンタカーを返して、電車に乗った。運良くBOXシートに3人で座れたけど、珍しく先輩は直ぐに寝てしまった。余程疲れていたのか、乗り換え駅まで一度も起きなかった。


初めて見るあかり先輩の寝顔に、僕はドキドキしてしまった。無茶苦茶に可愛かったからだ。こっそりと写真を何枚も撮ったよ。後でその写真を先輩に見せたら怒られたけどね(笑)


初めてのドライブに僕とあゆみちゃんを選んでくれて嬉しかった。僕らも緊張したけど、良い思い出になった。いつかは僕も免許を取って、二人を乗せてドライブしてみたくなった。


免許を取ったあかり先輩が、いつも以上に大きく見えた楽しいプチ旅行だったよ。



読んでいただいてありがとうございます

免許を取得したあかり先輩による初ドライブのお話しでした


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