カツ丼
オープンキャンパスへのデートから一週間が過ぎた土曜日の午前中だった。
もうすぐ、あかり先輩の推薦入試の日だった。なので、僕とあゆみちゃんは神社に行って、合格祈願のお守りを買いに行った。境内は秋の風が心地よく、落ち葉が舞う中、神社でお賽銭を入れて手を合わせた。「先輩が合格しますように」と、心の中で強く祈った。あゆみちゃんも隣で目を閉じて、真剣な顔をしていた。
その帰りに、評判のカツ丼屋さんに寄ってカツ丼をテイクアウトした。3つ買ったんだけど、あかり先輩のは奮発してちょっと高いのをチョイス。僕ら2人で先輩の豪邸に向かった。お昼過ぎに家に着いてチャイムを押すと、先輩はいつもの明るい笑顔で迎え入れてくれた。
「わぁ、2人共どうしたの?」僕が合格祈願のお守りを買ってきた事を言うと、先輩は目を輝かせて喜んで受け取ってくれた。「ありがとう! 嬉しいな!これで絶対合格するよ!」と、嬉しそうに胸に抱きしめる姿が可愛くて、胸が温かくなった。
そして、あゆみちゃんが「勝てる様にカツ丼を買ってきました。3つあるんで、一緒に食べて下さい」と丼ぶりを差し出す。でも、先輩は「今お昼を食べたばかりなんだよね……夕飯にするね」と言った。珍しくあゆみちゃんは「それは駄目なんです! 今食べて下さい!」と、ちょっと大きな声で言った。
僕も驚いたけど、先輩も目を丸くしていた。それで先輩はリビングに僕らを招き入れて、インスタントの味噌汁と緑茶を入れてくれた。僕らはカツ丼をテーブルに並べた。あかり先輩は自分のカツ丼が違う事に気づいて、その訳を聞いてきた。
あゆみちゃんは「奮発して、あかり先輩のカツ丼だけちょっと高いのを買ってきたんです」と言った。先輩は「無理しなくても良いのに……」と言っていたが、顔は嬉しそうだった。僕らは「いただきます」を言って食べ始めた。
評判のお店のカツ丼は美味しかったよ。あかり先輩も「美味しい!」と言っていたけど、別にお昼を食べた後だったから、最後は苦しそうだったけど完食してくれた。3人共に食べ終わり、あかり先輩は語り始めた。
先週僕と学園祭とオープンキャンパスに行った事や、春からは家を離れて一人暮らしをする事をね。あゆみちゃんも僕と同じように、先輩が僕らの街を離れる事に驚き、動揺している様だった。僕は知っていたけど、あゆみちゃんも寂しそうな顔をしてテーブルを見ていた。
でも、あかり先輩は喋り出した。先輩はあゆみちゃんに、僕が先輩自身が進む大学の入学を目指している事を語った。そして、あゆみちゃんの進学はどうするのかを聞いた。あゆみちゃんはちょっと悩んだ後にお父さんやお母さんの様に薬剤師になりたいと言い、薬学部のある大学に進みたいと言った。
それには僕も驚いたけど、あゆみちゃんが薬剤師の仕事をしているお母さんの姿を見る目を僕は知っていた。きっと憧れているんだろうなとは僕も薄々感じていたからね。あかり先輩はもう将来を考えている事に喜んでいるみたいだった。
それでノートパソコンを持ち出して、あゆみちゃんの成績を教えてもらい、薬学部のある大学を検索しだした。あゆみちゃんはまだそこまで考えていないみたいだったらしく、先輩の横でノートパソコンの画面を見ていた。
でも、あゆみちゃんは大学の場所を気にしている様だった。先輩はそれに気づいたみたいであゆみちゃんに聞いていたんだよね。あゆみちゃんは先輩の志望する大学の近くに薬学部の大学があるのかを探していると言ったよ。
それを聞いたあかり先輩は嬉しそうに涙を我慢しているのがわかったよ。それであゆみちゃんは目当ての薬学部のある大学を見つけたんだ。最初は嬉しがっていたけど詳しく調べてみてあゆみちゃんは絶句していた。
何故ならば予想していたよりもレベルの高い大学だったからだ。渋い顔をしていたあゆみちゃんだったけれど、意を決した様で「私この大学に行ける様に頑張ります!」と宣言した。ちょっとびっくりしたけど先輩は「厳しいけどいいの?」って聞いたけど、あゆみちゃんは「勿論そこが第一志望で他の大学も受験しますよ」と笑顔で応えていたよ。
それで夏休み中から始まっていた勉強会を強化しようと言う事になった。とりあえずもうすぐある2学期の期末テストを頑張ろうと僕らは気合を入れた。そんな僕らを温かい目で見ているあかり先輩は嬉しそうだったよ。
後書き
読んでいただいてありがとうございます
美味しいカツ丼を食べた午後のひとときでした




