仮装イベント
10月に入った。冬服への衣替えの時期になったけど、10月初旬はまだまだ暑い日もある。
そんなある日の朝、学校に行くと、あゆみちゃんがチラシを見せてきた。そのチラシには、商店街でハロウィンのコスプレイベントのお知らせだった。ハロウィンの週末の土曜日にコスプレで商店街で買い物をすると1割引きになるイベントで、コンテストも行い、優秀者にはさらに2割引きになり、合計で3割引きになる商店街を盛り上げるイベントだった。
あゆみちゃんはもうチラシの内容をあかり先輩にLINEしているようだった。しばらくして、学校内の掲示板にもそのチラシが貼られていた。LINEで盛り上がり、早速放課後に先輩の豪邸に行って作戦会議を開く事になった。
作戦会議の結果は、あかり先輩は執事で黒燕尾服。僕は黒白のクラシックメイド服に。あゆみちゃんはお姫様でプリンセスドレスに決まった。それも市販品をただ買うのではなく、出来るだけ自分達で作る事に決めた。なので週末に古着屋さんやコスプレショップを巡り、ベースになる服を探す事にした。僕の黒白のメイド服のお金は、あゆみちゃんの薬局でアルバイトをした時のお金を使う事にした。
あかり先輩の黒の執事服は直ぐに見つかった。でも173cmの先輩の身長に合わせると肩幅やウエスト幅が大きかったので、先輩がリフォームする事にした。僕の黒白のメイド服も割と簡単に決まった。学園祭の時に着たピンクのメイド服みたいに派手さは無いけど、シックで長袖で長スカートのメイド服だった。
あゆみちゃん希望のお姫様ドレスは探したけどあゆみちゃんのイメージ通りの物が見つからなかった。なので、あかり先輩のデザインで洋裁して作る事に決めた。早速、豪邸に戻りスケッチブックにラフのデザイン画を書きだす先輩がいたよ。楽しそうにあゆみちゃんから希望のデザインや意見を聞いたりして、何枚も書いていた。
僕はその様子を眺めながら、胸が温かくなった。先輩の真剣な横顔が、なんだか頼もしくて、憧れがまた膨らむ。数日後にLINEにあかり先輩のデザイン画が数枚届いた。みんな可愛いデザインだったね。肩が出ているデザインだったり、大きく胸元が開いていて谷間が見えているデザインばかりで、僕の心臓がドキドキした。想像するだけで、顔が熱くなる……。
放課後に先輩の家に集まり、幾つかのデザインから一つに選ぶ事にした。みんな可愛いデザインだったけど、あゆみちゃんは二つまでに絞り込んだ。一つは胸を隠すデザインでもう一つは胸の谷間が見えるデザインだった。それであゆみちゃんは最後に「ゆうな君に選んで欲しい」と言ってきた。
あゆみちゃんはテーブルの対面に座っていて、そう言われて僕はドキドキした。テーブルのデザイン画から目線を動かし、僕はあゆみちゃんの顔を見る。あゆみちゃんはどっちを選ぶのかを楽しんでいる様に、僕の顔を覗き込んでいる。
僕の視線はあゆみちゃんの笑顔から制服の白いブラウスの大きな膨らみに動いてしまった。心臓が早鐘みたいに鳴って、息が苦しい。僕は自分に負けて、谷間が見えてるデザインの方を指差してしまった。あゆみちゃんは選んでいる僕の顔を見て
「やっぱり男の人ってこういうデザインの方が好きなんだね?」と聞いてきた。僕は恥ずかしくて言葉が出なかった。でもあゆみちゃんは
「ゆうな君がそういうデザイン画が好きなら、私これで良いです」とあかり先輩に言った。僕はそう言われて恥ずかしかったけど、心の奥で嬉しさが爆発したんだよね(笑)
なので、早速あかり先輩はあゆみちゃんの体を採寸し始めた。メジャーで測っては僕にメモを取らせていた。先輩は真剣に測っていたけど、僕とあゆみちゃんは恥ずかしくて顔を見合わせられなかった。Eカップなのは知っていたけど、あゆみちゃんのウエストやヒップの数字を知ってしまった……。あゆみちゃんの体が、こんなに近くて、ドキドキが止まらない。
測り終えて、先輩は型紙を作りだしていた。先輩は授業で習ったと言っていたが、デザインから洋裁まで何でも出来る本当にスーパーウーマンだった。もう将来を考えてデザインとかの勉強を自分でしていると語り、僕らを驚かせていた。
それでみんなで必要な生地を買いに行ったよ。その生地を選んでいる先輩の目はプロ感を感じたよ。しかも生地を見て色んなアイデアが浮かんでくるようで、色々とメモを書いていた。生地を買って帰り、型紙に合わせて裁断していた。僕らも手伝ったりしていた。仮縫いをしてはやり直しの連続だったけど、難しくても楽しい共同作業だった。
少しずつ形になっていく事が不思議で、ワクワクが止まらなかった。あかり先輩のラフのデザイン画から1着の服が出来上がっていく作業は本当に面白かった。それで自分の黒白のメイド服も弄りたくなって、先輩に教わりながら、自分なりにリボンを足して可愛くリフォームしたりしたよ。
それで、苦労の末にあかり先輩デザインのあゆみちゃんのお姫様ドレスが完成したよ。僕が部屋から出てあゆみちゃんに試着をしてもらったんだけど、作っている時には夢中で胸の谷間が見えるデザインだとは忘れていたんだよね。
着替えが終わり部屋のドアを開けたら、恥ずかしそうに立っているあゆみちゃんがいて、胸の谷間に目線が……。大きく開いた胸元と、初めて見たあゆみちゃんの胸の谷間は僕をドキドキさせていた。僕は冷静を装おうとしたけど、きっと顔は真っ赤になっていたね。でもあゆみちゃんは照れながらも僕に
「どう? 大きいでしょ!」「本当は見れて嬉しい癖に」と言って見せびらかせて、僕を困らせて喜んでいたよ。でもあかり先輩は冷静に手直す所を探したりしていたね。
そして、あかり先輩と僕もリフォームした黒の執事服と黒白のメイド服を着てみたよ。あかり先輩の執事服は似合っていたね。長身の細身に黒の執事服が格好良かった。胸が苦しそうだったけどね(笑)。僕の黒白のメイド服も良かったんだけど、パッド入りのブラを着けていたけど、2人を見るともっと胸のボリュームが欲しくなったね。
それでお姫様に従う執事とメイドの3人が出来上がった。早速三脚を立ててセルフタイマーで自撮りを楽しんだ。鏡に映る3人の姿を見て、胸が熱くなった。ハロウィンの日が、待ち遠しくてたまらなかった。
学校ではあゆみちゃんの家が商店街の薬局だと知っている同級生がチラシを見て「仮装して買い物に行くよ」と言っていた。その同級生に「私も仮装しているから楽しみにしていてね」と言っていた。
そして月末のハロウィンのコスプレのイベント日になった。先輩の家に集まり、メイクをし髪の毛もセットして、それぞれ仮装の衣装を着てアクセサリーも着けた。お姫様と執事とメイドが完成した。先輩の豪邸の玄関で3人並んで三脚でセルフタイマーで自撮りをした。洋風の玄関と3人のコスプレが変にマッチしていて面白かった。
僕の心は、興奮でいっぱいだった。沢山のお客さんが僕らのコスプレを見た反応が楽しみだった。それで商店街に出かけてあゆみちゃんの薬局に行った。その日はあゆみちゃんはお休みだったんだけど、あゆみちゃんはお姫様ドレスのままレジに立ったりしてお客さんを驚かせていたよ。
僕も許可を貰い黒白のメイド服でレジに立ったよ。僕の顔を知っている常連のお客さんなのに僕だと気づかないみたいで、ゆうなだと知った時の驚いた顔が面白かったよ。また女装が可愛いだとか、メイド服でレジに立ってくれたら毎日買い物に来るとか言われて、僕は嬉しくて堪らなかったよ。心がふわふわ浮かぶみたいだった。
それで僕とあゆみちゃんの2人は急遽、薬局の店前で特売品の販売担当になってしまい、頑張って特売品を売ったよ。黒白のメイド服とお姫様コスプレの2人が店先に立っていたから注目の的でお店が賑わっていたよ。
コスプレをした人が商店街に溢れていたけど、中には同級生も数人いて面白かったね。黒白のメイド服の僕よりもあゆみちゃんのお姫様の谷間に目が行くようで、女子もそうだったけど特に男子が嬉しそうに買い物をしていたね。僕のあゆみちゃんなのに鼻の下を伸ばしている奴ら怒りたくなったけど、僕もチラチラ見ていたから同罪だなと.....(笑)
それでパレードの時間になった。僕はあゆみちゃんのお姫様の横に立ち、あゆみちゃんに日傘をかざして、あかり先輩の執事は少し後ろを歩いていた。お姫様と執事とメイドの3人は周囲の注目の的だった。パレードでは沢山声を掛けられたり写真を撮られていたよ。
みんなの視線が熱くて、恥ずかしいけど、幸せで胸がいっぱいになった。パレードが終わり審査になった。ドキドキワクワクだったけど、僕ら3人のグループは優秀者の中に選ばれる事が出来た。審査員から「ドレスがとても可愛かった」と評価してくれた。3人で夢中にハイタッチをして喜んだよ。あかり先輩とあゆみちゃんは抱き合っていたけど、僕も二人の中に入りたかったけど、そこは自重したよ。それで3割引きのクーポンを1人2枚ずつ計6枚も貰えた。
先輩は初めてデザインした服が評価してもらったのが嬉しかったらしく、珍しく泣いていた。そんな泣いている先輩を見て僕らも嬉し泣きをしてしまい、商店街の関係者さんやその場にいたお客さん達から拍手されてしまい恥ずかしかったけど嬉しかった。
涙が止まらなくて、みんなの優しさが胸に染みた。そんな、ハロウィンのコスプレの手作りドレスが、あかり先輩デザインの初めての表彰の記念日になった。
あかり先輩は恥ずかしかったのか僕らを引き連れて歩き出したけど、もう16時を過ぎていて冷たい風が吹き始めていた。肩出しの衣装のあゆみちゃんがくしゃみをした。あかり先輩はさりげなく上着を脱いで、そっとあゆみちゃんに着させた。
そんな事をしていたら、いつものたい焼き屋さんに着いた。いつもの様にたい焼きを3個注文したら、店長さんが「今日は仮装なんだと」言ったので、あかり先輩は自慢げにあゆみちゃんのドレスを指差して「このドレス私がデザインしてみんなでで手作りした」と言ったので、あゆみちゃんは借りていた上着を脱いでその場でターンして見せた。
そしたら店長さんが「凄いから今川焼を1個サービスだよ」と言ってくれて、3人でお礼を行ったよ。 あかり先輩のおごりのたい焼き3個とサービスの今川焼を買って貰い、いつもの小さな公園のベンチで温かい内に3人で食べた。ちょっと冷えた体には温かく、とても甘くていつも以上に美味しかった。
たい焼きの熱さと甘さが、心まで溶かしていくみたいだった。そしてあかり先輩は語りだした。
「ドレスを作るって決めたけど、もっと簡単に作れると思っていたけど、本当は失敗だらけで難しくて投げ出しそうになったけど、2人が助けてくれたから良い物を作る事が出来て本当に嬉しかった」「本当に難しかったけど頑張れば出来るとわかったから服飾関係の道に進む覚悟が出来た」熱く語った。
僕もあゆみちゃんも嬉しくなり涙目になってしまった。そんなあかり先輩は両手を開いて僕らを抱きしめてくれた。温かくて、優しくて、幸せで──この瞬間が永遠に続けばいいのにと思った。
そんな10月末のもう寒くなり始めたけど熱い一日でした。
読んでいただいてありがとうございます
10月のハロウィンの仮装イベントの出来事でした




