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ドレスとメイド服

レッスンは3週間目に入り、僕とあゆみちゃんのペアダンスは、目に見えて上達してきた。

ぎこちなかったステップが滑らかに繋がり、ターンの回転も自然に決まるようになってきた。

これも、熱心に指導してくれたみゆきちゃん姉弟と先生のおかげだ。


毎日の練習が、苦しみから楽しみに変わってきた頃――

先生が「そろそろ、ダンスシューズを穿いてみましょう」と提案した。

男女逆転の社交ダンスだから、シューズも逆。

あゆみちゃんは男性用のダンスシューズを穿くことになった。


見た目は黒のビジネスシューズ風で、少しヒールが高い。

あゆみちゃんは最初、

「ヒール高くて、バランス取るの大変……」

と苦笑いしながら、よろよろとステップを踏んでいた。

でも、数回練習するうちに慣れてきて、

「これ、踊りやすいかも!」

と笑顔になった。

シューズのヒールが、あゆみちゃんの姿勢をさらに凛々しく見せて、格好いい。


一方、僕は女性用のダンスシューズ。

最初に先生が説明してくれた動画で、大人の女性が穿いていたような、華やかなヒールシューズ。

僕の足に合うものを選んでくれたけど――

穿いた瞬間、ヒールの高さに驚いた。


「わっ、転びそう……!」

つま先立ちみたいになって、足がふらつく。

今までフラットな靴で練習してたから、急に高さが加わると、ステップのタイミングがずれてしまう。

先生は「最初はみんなそうよ。バランス取れるようになるまで、ゆっくり練習ね」と優しく言ってくれたけど、


僕は何度も転びかけて、恥ずかしかった。

でも、鏡に映った自分の足のラインが、細くて綺麗に見えて……

なんだかうっとりしてしまった。

――女の子みたいな感覚だな……。


それから、あゆみちゃんとダンスシューズを穿いてのレッスンを続けた。

別に社交ダンスの大会に出るわけじゃない。

学園祭の体育館ステージで、90秒だけ踊れれば良いはずなのに、

気づいたら僕とあゆみちゃんは夢中になって踊っていた。


汗だくになって、リズムに身を任せて。

あゆみちゃんの体に触れても、動揺する事も無くダンスに集中する事が出来た。

そんな頃、先生が「そろそろ、衣装も着てみましょう」と提案した。

これも先生が用意してくれた。


あゆみちゃんは、タキシード風の黒ズボンに白シャツ、黒ベスト。

サイズはぴったりだったけど、黒ベストだけがちょっときつそうで、

Eカップのラインが強調されていたよ……

衣装姿のあゆみちゃんは男装の麗人って感じがして、格好よくてドキドキしてしまった。

あゆみちゃんは照れくさそうに、

「これでリードするの、ちょっと緊張するね……」

と言いながら、鏡でポーズを取っていたよ。


そして、僕の番。

ドレスだった。

みゆきちゃんが動画を見せてくれたとき、女性が着ていたカラフルで綺麗なドレスを想像して、ワクワクした。

これも先生が何着か用意してくれて、試着した。

ここで、あゆみちゃんから貰った黒のスパッツを穿いてみた。

万が一の転びでも、見えちゃう心配を減らせるから(笑)


ドレスはワンピースタイプが多かったけど、思っていたよりも動き易くてでびっくりした。

背中が大きく開いたデザインのものがあって、

「これ、着るの?」

とドキドキしながら袖を通した。



背中のファスナーが上がりにくくて、あゆみちゃんに手伝ってもらった。

「あゆみちゃん、ごめん……上げて」

あゆみちゃんは「いいよ、任せて」と、そっとファスナーを上げてくれた。

その瞬間、指が背中に触れて、ぞわっとした感覚が走った。 着終わって、鏡の前に立った。

少しターンをしてみると、スカートがヒラヒラと綺麗に広がって、嬉しくて自然と笑顔になった。


――こんなに綺麗に動くんだ……。でも、みゆきちゃん親子の目が痛かった。

僕が女装してることを知らないからね、

普通、男の子がドレスを着たら嫌がるのに、僕が嬉しがってるのを見て、驚いてるみたい。

「あの子、ちょっとおかしいかも……?」って顔。

慌てて、あゆみちゃんが「ゆうな君!」と声を掛けて、僕を現実に引き戻した。


それから、試着と踊りを繰り返して、一番しっくりくる本番用のドレスと練習用の2着を選んだ。

でもやっぱり僕は男だから胸が無い訳でで衣装に若干の違和感があるんだよね。

だからパットが入ったブラを着けたかったけど、それだけは恥ずかしくって言えなかったよ。


本番用の衣装が決まって、ダンスシューズを穿いて踊ってみた。

最初は大変だったけど、慣れると楽しかった。

あゆみちゃんは格好いいし、僕はスカートをヒラヒラさせながら踊れるし、

何より、男装のあゆみちゃんに抱かれているような変な感覚になって、自分に酔いしれたんだ。

まだ高校生だからお酒を飲んだことないけど、そんな感じかも。


そしてみゆきちゃんにあゆみちゃんとのペアで写真を撮ってもらった。

練習後に、本番用の衣装です、とあかり先輩にLINEで送ったら、

返信で「ドレスが似合ってるよ♡」「あゆみちゃんも格好良いね」と来たけど、

続けて「あゆみちゃんの衣装を見て、面白いこと思いついたよ」と意味深なメッセージ。

それは、学園祭のステージで意味がわかることになったよ(笑)


そして翌日に女子クラス委員の高橋さんが、視察に来てくれた。

ダンスシューズと衣装を着て踊る僕らを、動画で撮影してくれた。

高橋さんは、僕らの息の合ったダンスを見て、

「すごい……綺麗!」を連発して驚いてくれた。


僕らはその言葉が嬉しかった。みゆきちゃんが、

「ゆうな君もあゆみちゃんも、毎日遅くまで頑張ってるんだよ」

と言ってくれて、高橋さん潤ませて

「これなら、一番狙えるね!」って励ましてくれた。


翌日、その動画を昼休みにみんなで見てたらしい。

僕がトイレから帰ってきたら、わいわい盛り上がってる。

「踊って見せてよ!」

って言われて、僕もあゆみちゃんも「恥ずかしいよ……」って抵抗したけど、


みゆきちゃんが「それは良い練習になるよ」って提案。

高橋さんも「絶対良いよ!」って賛成して、

他のクラスに見られないように、廊下側の窓とドアを閉めて、

机と椅子を端に寄せて、インスタントのステージを作ってくれた。


みゆきちゃんがスマホでワルツを最小限の音量で流してくれて、

あゆみちゃんが僕の手を握ってリードして踊ってみせた。

でも、いつもの練習のように踊ればいいだけなのに、初めて大勢の人前で踊ったせいか、無茶苦茶緊張した。

普段ミスらないところで間違ってしまい、焦ってしまい、

何とか踊り終わることは出来たけど、散々だった。


みんなは「すごい!」って言ってくれたけど、僕らはちょっと凹んでいた。

みゆきちゃんも渋い顔だった。

あゆみちゃんが「今のは失敗だからもう一度躍らせて」と言ったけど

みゆきちゃんは「それはダメ」って止めた。


「本番はたった1回限り。その1回に全てをかける集中力が大事」

「今は何回も踊るのは良くないよ」続けて、みゆきちゃんが提案した。

「明日から本番まで、昼休みにみんなの前で1回だけ踊るのはどう? 絶対良い練習になると思うよ

普段あまり喋らないみゆきちゃんが、自分の意志をはっきり言ったから、みんな驚いていた。


高橋さんが「それは良い提案だね!」って言って、

明日から昼休みに、僕とあゆみちゃんの「1回限りのオン・ステージ」が決まった。

大勢の人前で踊る経験を積めて、本番の緊張を少しでも減らせたと思う。

みゆきちゃん、本当にありがとう。



学園祭は、女装&男装コンテストだけじゃなかった。

各クラスの催し物もあって、1年生は生徒会からの指定で模擬店をやることに。

しかも、喫茶店限定で。


コーヒーや紅茶は必ず出すけど、それ以外は全くの自由で基本的に何でも良くて各クラスの個性が強くでる催し物になっていた。

審査員の先生方と生徒が各クラスを回って味と雰囲気とで審査して点数を付けて、それに各クラスの売り上げを順位づけして点数化して審査点と合計して順位を付ける。 


だから、負けたくないクラスは放課後にみんなで話し合ってるみたいだった。

でも僕とあゆみちゃん、みゆきちゃんの3人はコンテストがあるから、模擬店はノータッチでOKだった。でも、昼休みに教室を見ると、コーヒーの淹れ方を研究してる男子がいたり、

ケーキのレシピをタブレットで調べてる女子がいたり。

コーヒー豆のいい匂いが、教室中に漂ってる。

僕も、毎日のようにコーヒーの試飲をさせられてた。

ブラックは苦手なのに……。


そんなある日、女子たちが僕のところに来た。

「ゆうな君、お願いがあるんだけど……」.......ちょっと嫌な予感がした。

「昨日の放課後にみんなで相談した結果なんだけど、1A組の喫茶店は【味一本】で勝負するけど、

メイド喫茶風にする他のクラスには負けそうだから、客寄せが必要だって」続けて

「学園祭は土日だけど女装&男装のコンテストは2日目の日曜日。

だから、土曜日に僕を手伝ってほしい」と「え、僕が?」

「うん! だってゆうな君さコンテストの選挙ポスターであかねちゃんとして、2年や3年生の先輩方に人気あるじゃん! 客寄せにぴったりだよ!」しかも、

「可愛いメイド服も用意するから!」隣の席のあゆみちゃんが、笑いをこらえてるのがわかった。


僕は言った。

「女子がメイド服着ればいいじゃん……」そしたら、

「だって、味で勝負するのにメイド服って、私たちには似合わないと思うんだ……」

「でもゆうな君なら、あかねちゃんとして先輩方に人気あるし、いいじゃない! もう話し合いで全会一致で決まったよ!」


……僕の知らないところで、僕の勝手に予定が決められてた。

この流れ、まるであかり先輩と出会ってからずっと翻弄されてるのと同じだ。

どうやら僕は、女の子に弄られる運命なのかも知れない。

高校入学前までは、女の子と触れ合うことなんてほとんどなかったのに。


そう思ってたら、女子がタブレットを持ってきて、

「ゆうな君の身長とかサイズ教えて!」

答えたら、画面を見せてきた。

「学園祭の予算で買えるのはこの辺りだけど、ゆうな君が選んでも良いよ!」って

全部、可愛いメイド服ばかりで目移りする。

クラシックな黒白から、フリフリのピンクまで。僕は、ついつい真剣に選んでしまった。


それで一番可愛いと思って選んだのは、胸に大きなリボンがついて、ピンクのフリルがいっぱいのやつ。女子たちに、

「ゆうな君って、こういう服好きなんだね……」って言われて、顔が真っ赤になった。

「こういう服を見るの、初めてだからさ……」って嘘で誤魔化したけど、

怪しまれたかも知れない。


最後に、

「あかねちゃんの可愛いネームプレート作っておくね!」って言われてしまった(笑)

男子からは、

「コーヒーの味は確かだから、売り上げはゆうなのメイド服にかかってるぞ!」ってプレッシャーまでかけられた。


終始笑いを堪えていたあゆみちゃんが、

「あかねちゃん、クラスのために頑張ってね!」

「それと、あかり先輩に報告しておくね♪」って笑顔で言ってきた。


……そんなこと言ったら、絶対先輩来るじゃん(笑)

でも、正直なところ学園祭初日の土曜日の可愛いメイド服の客寄せのアルバイトが、

楽しみになってしまった。

クラスのためにも、頑張ろう!






読んでいただいてありがとうございます

日曜日の本番用のドレスを試着しただけでなく、土曜日にはピンクのメイド服を着る羽目になったゆうな君でした

次回は学園祭前日の金曜日の出来事です

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