ゆうな君人気者になる
こうして僕とあゆみちゃんの男女を逆にした社交ダンスのレッスンが始まった。
既にレッスン場では健太君が入念にストレッチしていて、
遅れていたみゆきちゃんも更衣室に入って行った。
でもレッスンの前にちょっと慣れるまでに大変な出来事があったんだ。
僕らの高校は共学だけど体育の授業だけは男女別に行われていて、女子生徒のジャージ姿を間近で見る事はあんまりなかったんだ。
勿論、共学だから廊下やグランドやジャージ姿の女子を見る事は普通にあるから何とも無いと思っていたんだけどね。
ダンス教室の更衣室から出てきたあゆみちゃんを見たらね......。
黒のショートパンツに黄色のTシャツ姿が僕には眩しかった。
それでEカップの体のラインがね......。
制服姿や普段のオシャレな服のあゆみちゃんは知っていたけどさ、滅多に見る事の無いTシャツとショートパンツ姿のラフな格好を見るのは、あんまりなくてね、並んでストレッチをしている時にもドキドキしてしまったよ。
でもそんな事よりもレッスンが大切な訳で、みゆきちゃんと健太君の姉弟も協力してもらっているには頑張らないと思い気合を入れたよ。
そして先生が説明してくれた。
僕らが習うのは社交ダンスでは比較的簡単な入門種目のワルツだとね。
ゆったりした3拍子のリズムで優雅に回転・上下動する。
普通は男性がリードして女性がそれに合わせるんだけど、僕ら場合は男女が逆にあるから、あゆみちゃんが僕をリードして踊る事になるって教えられたよ。
それで、みゆきちゃん姉弟が見本で踊って見せてくれた。
あゆみちゃんと並んでそれを見る。
昨日見た見本よりも迫力があったように思えた。
学園祭のステージパフォーマンス用に90秒にアレンジしてあったけど90秒が圧倒言う間に過ぎた。
これを僕らがするんだと思った時に武者震いが背中を走ったよ。
それで2人が先生になって基本的なステップから教えてもらったよ。
1.2.3.と声を出して足を動かす。
あゆみちゃんはリズム感があるらしく簡単そうにステップを踏んでいたけど、僕はそのリズム感が無くて難しかった。
基本的に片手は繋いでもう片手でお互いを支え合う様に対面しながら踊るから、お互いのステップが逆になるとか言われて頭が混乱しながら必死だったよ。
そんな僕に丁寧教えてくれる中2の健太君が僕よりも年上のお兄さんの様に思えてしまった。
まぁ身長158㎝の僕よりも遥か大きい健太君だから知らない人が見れば、大人が子供に教えているように見えたと思うけどね。
それで何とかステップを踏めるように。
でもまだ下を向いているから前を向いてステップが踏めるようにひたすら反復練習だったよ。 もうステップを踏んでいるだけなのに汗が拭き抱いてくる。
体育の授業以外の運動経験の無い帰宅部の僕にはきつくて休憩を入れてもらった。
汗をタオルで拭いて水分を取る。
そんな時にあゆみちゃんを見ると汗が輝いていてドキドキしてしまったよ。
そんな時にあゆみちゃんがみゆきちゃんに聞いたんだ。
いつから社交ダンスをしているかをね。 ちょっと恥ずかしそうな顔をしてみゆきちゃんは言ったよ。
「多分小学校に入る時くらいかな?」
「もう昔過ぎて忘れちゃった」と笑いながら言ったよ。
健太君も同じように「僕も同じくらいだよ」と言っていた。
だから2人共に10年近いキャリアに驚いたよ。 あゆみちゃんが驚いたように
「凄いもう大ベテランだね」と言ったけど、みゆきちゃんが
「上手いように見えてもまだまだよ」とちょっと寂しそうに言った。
そこで先生が会話に加わり「最近は競技会にでても成績が良くないんだよね」
「最近みゆきがスランプ気味でね」とちょっと悲しそうに言った。
みゆきちゃんもそう言われて床を見た。 先生が続けて
「だからこの話を聞いた時にみゆきのスランプ脱出になればと思ってね」
「自分からあなた達に社交ダンスを勧めたってきいたから余計にね」と言ってから笑顔でみゆきちゃんの肩を叩いた。
その話を聞いて僕はみゆきちゃんの為にも更に頑張ろうと思い、あゆみちゃん見てお互いアイコンタクトをして「頑張ろうね」と誓った。
そしてレッスンが再開した。
それで徐々にだけど上手くステップを踏めるようになったと思ったら、健太君がまた長い定規を僕の背中に入れてきた「ゆうな兄ちゃん姿勢が悪いよ」と言ってね。
姿勢の悪い僕への矯正だったんだけど、皆に笑われながら基本のステップのレッスンは数日続いたよ。
あゆみちゃんと汗を流しながら素敵な先生達に囲まれてのレッスンは覚える事が沢山あって大変だったけど楽しかったよ。
その程よく筋肉痛が出始めた朝に高校に行ったら、校舎の至る所で人だかりが出来ていた。
最初は何だ?と思ったけど直ぐに分かったよ。
それは、女装&男装のコンテストの選挙用ポスターだとね。
当然、僕は見たかったけど人だかりが凄くて僕の身長ではポスターまで近づく事が出来ずに諦めて教室に行く事にしたよ。
そしたら、いつもの様にあゆみちゃんが先に居たから
「ポスター見た?」て聞いたら
「人がいっぱい居たからまだ見ていないよ」と言ったのを聞いていた男子が「まだ見ていないのか」とスマホを見せてきてくれた。
まだ人が少ない時にQRコードを読み込んだから、動画を見ても良いよって言ってくれた。
嬉しかったよ。
なので、その場にいた皆で動画を再生して見たよ。 でも僕らのクラスはA組だから一番最初に僕とあゆみちゃんが再生される訳で、女装した僕と男装したあゆみちゃんが画面に表れると笑いが起こったけど、直ぐに皆真剣な目でスマホの画面を食い入るように見たよ。
見終わり見せてくれた男子にお礼を言った。
そしてあゆみちゃんを見た。
正直、僕が見た感想では僕らのペアが一番だと思ったけど、あかり先輩のメイク術のせいか、そんなに差が無いように思えた。
選挙だけは楽勝だと思っていたけど、ちょっと心配になったけど、一緒に動画を見ていた同級生が
「ゆうなとあゆみのペアなら選挙は楽勝だよ!」と励ましてくれたのが嬉しかったよ。
そして朝のホームルームで高橋さんから投票方法についてのお知らせがあった。
それを聞いて驚いてしまった。
まず全校生徒と先生方に自身の名前入りの入場券を配布して、投票期間中にその入場券と顔写真入りの学生証で本人確認をして投票をするってね。
これは社会に出てからの選挙投票の大切さを学ばせる意味もあるとね。
驚いたよ。
ここまで厳粛な選挙投票だとは知らなかったからね。
普通の選挙と違うのは、立会演説会みたいに立候補者本人が直接アピール出来ないだけだと思っていたんだ。
なのに違ったんだ予想外にね。
お昼休みにお弁当を食べ終わったあたりから、僕らの1-Aの教室の廊下に普段は見る事の無い2年や3年生の女の先輩の姿がチラチラ見える様になり、開いている窓やドアから教室内を覗き込む様に見ているんだ。
うん何だろうと?思っていたら、たまたま廊下にいた女子とその先輩達が話をしているのが見えたと思ったら、その女子が教室に戻ってきて僕の席の所までやって来て笑顔で、こう言ったんだよ
「あかねちゃん呼び出しだよ!」ってね。
えぇ呼び出し?って
「僕は何も悪い事はしてないよ」って言ったけど、その女子が
「早く何人も待っているからと」言われて慌てて廊下に出てみたら、一瞬で女の先輩達に囲まれてしまった。そして立て続けに言われてしまった。
「君がゆうな君いやあかねちゃんなの!?」
「ポスターよりも可愛い!」
「男の子なのに小さくて可愛い!」
銘々好き勝手に言っていたよ。 僕は驚いたよ。
だって年上の女の先輩に呼び出されたから、何か悪い事で怒られるかもと思っていたからね。
でも実際は掲示された僕のポスターを見て生の僕を見に来た先輩達だと理解するのにそんなに時間は掛からなかったよ。
それで何故か?アイドルの特典会みたいに一人づつ2ショットで自撮りをする事になってしまった。
あかり先輩とあゆみちゃん以外の女の子と2ショットで自撮りをした事が無かったから、
最初は戸惑って緊張した顔だったけど、次第に楽しくなって笑顔で対応していたら
先輩達も喜んでくれて僕も嬉しくなてホッとして、にやついた顔で席にに戻ったら、
その様子の一部始終を教室からあゆみちゃんが見ていたらしく
「あかねちゃんは人気者ですね」と嫌味を言われてしまった。
それで、あゆみちゃんに
「これも選挙のためだからね!」と言うと思ったら、再び廊下で待っている先輩が居るからと僕に呼び出しが掛かってしまった。
そんな忙しい昼休みが、3日くらい続いた。
また廊下に呼び出されて一連の自撮りが終わりようやく席に戻ろうとすると、
あゆみちゃんが肘をついて頰を押さえ、横目で僕を見て、
「ゆうな君、鼻の下伸びすぎー!」
「今の人で、何人目?」僕は一々数えてなくて
「10人くらいかな……」と答えたら、
あゆみちゃんがメモを見せてきた。
「一昨日7人、昨日9人、今日はさっきの人で8人で合計24人です」
機械的に読み上げられてしまった。
驚いたよ、あゆみちゃんがカウントしてたことにね。
――女の子の嫉妬って怖い……。
「だって選挙のためだから……」と言い終わる前に、また廊下から呼び出しの声が聞こえてきた........。
「もう!また!」って怒っていたけど
あゆみちゃんのふくれっ面は、可愛いんだよな。
今日のレッスンも楽しみだ。
今日から手を繋いで踊るって言っていたからね。
読んでいただいてありがとうございます
社交ダンスのレッスンが始まったゆうな君とあゆみちゃんでした




