表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/44

決定パフォーマンス

翌朝のホームルーム。

高橋さんが教壇の前に立って、クラス全員に向かって明るく発表した。


「昨日、ゆうな君とあゆみちゃんのポスター撮影が無事に終わりました! それと、学園祭の女装男装コンテストで、90秒のパフォーマンスをするんですけど、みんなでアイデアを出してくれませんか?」


教室が少しざわついた。男子の誰かが、ぼそっと言った。

「そんなの俺らに聞いても無理だよ……」


その声だけが、妙に耳に残った。

やっぱり難しいよね。

クラス全体が沈黙して、誰も手を挙げず、ホームルームはあっという間に終わった。

僕の胸に、ぼんやりとした不安が残った。

――これ、本当に僕らにできるのかな……。


――

昼休み。

高橋さんたち数人と、教室の隅で話し合っていた。

具体的なアイデアは誰も出せず、みんな困った顔をしている。

僕も、どうしたらいいか分からなくて、ただ黙って考えていた。


そんな時に、ひとりの女子が静かに近づいてくるのがわかった。


みゆきちゃんだった。


クラスではいつも目立たない子で、僕とは一度も話したことがない。

近くで見ると、背はあゆみちゃんより少し高くて163センチくらい。

背筋がぴんと伸びていて、姿勢がすごく良くて、スタイル抜群だった。

地味な印象だったけど、こうして近くで見ると、意外と綺麗な顔立ちだなと思った。


みゆきちゃんは少し緊張した声で、でもすぐに流暢に話し始めた。

「私……いいアイデアがあるんです」

「男女のペアだから、社交ダンスをしてみませんか?」


みんながぽかんとした顔でみゆきちゃんを見る。

「私の母が、駅前のビルの2階で社交ダンスの教室をやってるんです」

「お母さんに頼めば、教えてくれると思います。私も少し踊れるから、手伝えます」


驚いたけど、僕らのために考えてくれたことが嬉しかった。

あゆみちゃんや高橋さんも、目が少し輝いてる。


あゆみちゃんがすぐに聞いた。

「社交ダンスって、どんなの?」


みゆきちゃんはスマホを取り出して、動画を再生した。


画面に映ったのは、みゆきちゃんだった。

男子とペアで、華やかな衣装を着て、音楽に合わせて優雅に踊っている。

クラスでは地味な印象のみゆきちゃんが、信じられないくらい格好よく、輝いていた。

ステップが軽やかで、回転するたびにスカートがふわりと広がって、まるで本物のダンサーみたい。


みんなでスマホを覗き込んで、食い入るように見た。

ダンスが終わると、自然と拍手が起きた。拍手が予想外だったのか、みゆきちゃんは恥ずかしそうにスマホをしまった。

その顔が、なんだか可愛かった。


あゆみちゃんが僕を見て、にこっと笑った。

「どうする? やってみる?」


僕は即答できなかった。

正直、ダンスなんてほとんど経験がない。

でも、みゆきちゃんの動画を見て、少しワクワクもしてる。

「……放課後に、見学だけでも行ってみない?」

みゆきちゃんはすぐに母親に電話をかけてくれた。

会話が終わると、笑顔で言った。

「大丈夫だって!」


こうして、放課後に4人で駅前のダンス教室に行くことになった。

――

駅に向かう道。

誰かが「動画で一緒に踊ってた男子、誰?」と聞いたけど、

みゆきちゃんは「着いたら教えてあげる」と笑うだけ。

楽しみが増えた。


いつものたい焼き屋さんの前を通り、駅前のビルの階段を上る。

……あれ?


この場所、電車のホームからシルエットが見えるところだ。

何度か「何してるんだろう?」って思ったことがあったのを思い出した。

教室に入ると、動画で見たペアの男子がストレッチをしていた。


「姉ちゃん、遅いよ!」

……姉ちゃん?

みゆきちゃんが紹介した。

「弟の健太。中2なの」

健太君は立ち上がって、明るく自己紹介した。


「健太です、中学2年生です! 姉ちゃんから、同級生に社交ダンス教えるの手伝ってって言われたんで、よろしくお願いします!」

いい感じの子だった。


でも、それより驚いたのは背の高さ。

僕なんかよりずっと大きくて、180センチ近いんじゃないか。


奥の椅子には、みゆきちゃんのお母さんが座っていた。

「みゆきに頼まれたから、ビシビシ鍛えてあげるわよ」

怖そうだったけど、笑顔が優しくて、いい先生っぽかった。


高橋さんがクラス委員らしく丁寧に挨拶して、僕とあゆみちゃんを紹介。

僕らは頭を下げた。高橋さんが説明してくれた。

「学園祭まではあと3週間半。90秒間のパフォーマンスで、女装と男装のペアなので、男女入れ替わった形になります。みゆきちゃんが社交ダンスを提案してくれたので、見学に来ました」


僕だったら上手く説明できないところを、完璧に話してくれた。

きっと高橋さんのような子が生徒会に入るんだろうな、と思った。


健太君が「わかった!」と元気に言って、

「姉ちゃん、早く着替えてきてよ。踊ってみせるから」


みゆきちゃんが着替えに出て、すぐに戻ってきた。

Tシャツに短パンというラフな格好。

でも、ストレッチを始めて、先生が音楽をかけると――


生で見た社交ダンスは、圧倒的だった。

優雅で、力強くて、息がぴったり合ってる。

回転するたびに空気が揺れるみたいで、動画よりずっと迫力があった。

踊り終わると、僕ら3人は思わず拍手した。


先生が笑顔で言った。

「どう? 今のなら、3週間あれば何とかするよ」

「それに、男女入れ替わったダンスってのも面白そうね」

あゆみちゃんが僕を見て、すぐに決心したみたいに頭を下げた。


「頑張りますから、よろしくお願いします!」

僕も慌てて頭を下げた。

先生は「明日からのメニュー考えておくから、毎日放課後に来なさい。お金はいらないわよ」と笑った。

さらに、朝晩のストレッチの重要性を教えてくれた。

みゆきちゃんと健太君が見本を見せてくれて、僕らはスマホで録画。


そして、健太君が僕を見てニヤッと笑った。

「ゆうな兄ちゃん、小さいね」

「でも大丈夫。姿勢が悪いだけだよ」

そう言って、長い定規を僕の背中にスッと入れてきた。

「これくらい背筋伸ばさないと!」いきなりでびっくりしたけど、健太君の笑顔が悪戯っぽくて、

みんなが大笑い。

僕も、なんだか笑いが止まらなくなった。

ダンス教室の雰囲気は、すごく良かった。


明日からの本格レッスンが、なんだか楽しみになってきた。



読んでいただいてありがとうございます

男女を入れ替えて社交ダンスをする事になったゆうな君とあゆみちゃんでした。

次回は学園祭後の予定が決まってしまいます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ