ゆうなの初めてのプリクラ
手を繋いだまま、僕らはプリクラコーナーへと歩いていった。
ブラウスの上に羽織ったカーディガンと色違いのなんちゃって制服で、まるで本当に姉妹のようだ。
でも、30分前とは明らかに違う。
あゆみちゃんの胸元が歩くたびに柔らかく揺れて、視界の端を横切るたびに目で追ってしまう。
新しいブラの効果は絶大だった。
「……ゆうな君、前見て歩こうよ」
「えっ?」
「私の方が背が高いんだから、見てるの見えてるよ」 バレてた。
顔から火が出そうなくらい恥ずかしくて、僕は慌てて視線を前に固定した。
プリクラコーナーに着いた瞬間、僕は気づいてしまった。
──男の頃の僕は、プリクラなんて一度も入ったことがない。
するとあゆみちゃんがバックから折りたたんだ紙を取り出した。
先輩からの指示書だ。
そこにはびっしりとポーズの指定が書いてあった。
「最初はアイドル風で、一番可愛く撮る!」
「次は姉妹っぽく、ほっぺをくっつけて!」
「最後の方は……えっ?」 僕は最後のページを見て固まった。
【最終ミッション:彼氏彼女風キス顔(唇は絶対くっつけないけど、超至近距離でチュッ♡って顔)】「これ……本当にやるの……?」
顔が熱くなる。耳まで真っ赤だ。
でもあゆみちゃんはもう完全にスイッチが入っていた。
「いいじゃん! 先輩の指令だよ? それに……私、ゆうな君のことこうやって近くで見るの、嫌いじゃないし……」
小声で呟くその言葉に、胸がどきんと跳ねた。
機械の前に並んで立つ。
唇は触れていない。
距離は、もうゼロに近い。あゆみちゃんの吐息が頬にかかる。甘い香水と、少しだけ緊張した熱が伝わってくる。
「じゃあ……いくよ? 3、2、1……」 カウントダウンが始まった瞬間、あゆみちゃんがそっと目を閉じた。
長いまつ毛が震えて、唇を少し尖らせる。 僕も慌てて目を閉じて、顔を近づけた。
唇は触れていない。けれど、ほんとに0.5センチくらいしか離れていない。
あゆみちゃんの手が僕の背中に回されて、ぎゅっと抱き寄せられる。
「チュッ♡」 効果音が鳴った瞬間、長いまつ毛が頬をくすぐった。
──ドクン。
心臓が、壊れるかと思った。
撮影が終わり、機械から出てきた写真を二人で見る。
しばらく、沈黙が続いた。
そこに写っていたのは、完全に恋人同士みたいな二人だった。
僕の顔は真っ赤で、あゆみちゃんは恥ずかしそうに、でもどこか幸せそうな笑顔を浮かべている。
「……これ、先輩に見せたら絶対からかわれるよね」
「うん……でも、ちょっと嬉しいかも」 あゆみちゃんが写真を両手で大事そうに持つ。
プリクラコーナーの明るい照明の下で、彼女の頬も僕と同じくらい赤く染まっていた。
読んでいただいてありがとうございます
ゆうな君の初めてのプリクラでした
次回はゆうな君の優しさが溢れます




