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第四話 卵粥と誕生日

健太の一日は、いつものように、亜子の声から、始まる。

「お兄ちゃん! おはよう、朝だよ! 起きて」 「もう少しだけ、寝させて、せめて後五分」

「ダメだよ。早く起きて。朝御飯が冷めちゃう」 亜子は、布団にくるまっている健太の布団を勢いよく剥ぎ取った。

そして、亜子は、声高らかに、健太目掛けてダイブした。

「うぅ~、もう、起きるから、止めてくれぇ~」 「分かればよろしい。早く、顔洗って、ご飯食べよ、お兄ちゃん」

健太は、亜子に言われた通り、顔を洗い食卓についた。

「今日は、お兄ちゃんの大好きな亜子特製のだし巻き玉子だよ」

「おっ! やった。亜子のだし巻き玉子は、本当美味しいからなぁ」「もぅ、お兄ちゃんったらぁ~、そんなに褒めても何もでないよ」

「それは残念。でも、まじで、亜子が、作る料理は、どれも美味しいよ」と、健太は、亜子の頭を撫でた。亜子は、顔を真っ赤にして

「大好きなお兄ちゃんに食べてもらうんだから、一生懸命作ってるんだ。お兄ちゃんの喜ぶ顔が、見たいから」

「亜子みたいな妹がいて俺は、幸せ者だよ」

「あはは。あっ、そうだ、今日は、お弁当作ったから持って行ってね」

「本当に! 助かるよ。毎日、学食で、飽き飽きしてたから」

健太は、亜子から、弁当をもらい学校に行った。亜子は、健太を見送ってから、食事の後片付けをした後、学校に向かった。亜子は、学校に行く途中何だか、身体がだるく感じていた。

学校に着いても、身体に感じるだるさが、消えずにいた。教室に着いて、机の上に突っ伏していると、クラスメイトの有村雪絵が

「亜子、おはよ! 朝から、どうしたの? もしかして、恋煩い?」と、亜子を茶化す。亜子は

「そんな事ないよ。好きな人もいないのに!」と、気力のない声で、答えた。雪絵は

「またまた、亜子って男子に大人気じゃん。告白されても、毎回ふっちゃってさぁ~」

「それは、今のところ彼氏なんかいらないから」「勿体無いよねぇ~。恋は、した方がいいよ。今、うちらの学校で、流行ってる恋のおまじない教えてあげようか?」

と、雪絵は、目をキラキラさせながら言った。亜子は、ダルい身体を起こして 「何? 一応聞かせて」 「あのね! 生徒手帳に気になってる人の写真を入れて持ち歩くの。そうしたら、恋が叶うんだって。素敵でしょ」

「そうなんだ……」

「亜子、今、生徒手帳持ってる? 見せて!」と、雪絵にせがまれ、亜子は、しぶしぶ雪絵に生徒手帳を渡した。

亜子は、雪絵に、生徒手帳を渡した後に、健太の写真を入れていたのを思い出した。が、すでに遅く、気付いた時には、雪絵は、生徒手帳を開いていた。健太の写真を見た雪絵が、驚いて

「ちょ、ちょっと、亜子! この人だれよ! 超イケメンじゃないの! 亜子、好き人いないって言ったくせに、何で、こんなイケメンの写真入れてんのよ」と、雪絵は、亜子に食って掛かった。

「誰って、私のお兄ちゃんだけど」

「はぁ~、亜子に、こんなイケメンのお兄さんがいたなんて……って、何で、お兄さんの写真が、入ってるの?」

「べ、別に、いいじゃない。お兄ちゃんの写真が入ってても」

「亜子って、お兄さんが好きなんだ」

「そうだよ。お兄ちゃん、優しいもん」

「でも、いいなぁ~、私も、こんなイケメンのお兄さんが欲しいなぁ」と、雪絵は、健太の写真を眺めながら、しみじみと言った。

「ねぇ、亜子! 今度、お兄さんに会わせてよ」 「それは、いいけど」

「じゃ、約束だからね」と、雪絵は、ウキウキしながら言った。

 チャイムが、鳴り授業が、始まる。亜子は、身体が、だるくて、頭も、ボーっとして仕方なかったが、何とか、放課後まで乗り切った。さすがに、こんな状態で、部活なんか出来るはずもなく、今日は、すぐに、健太のアパートに帰った。

アパートに着いた亜子は、健太が、帰ってくる前に、いつもは、夕御飯の支度をするのだが、今日は、限界だったのか、帰った途端、力が抜けソファーにもたれ掛かるように、眠ってしまった。亜子が、眠ってしまってから三時間後、健太が、アパートに帰って来た。「ただいま、亜子、帰ったよ。弁当美味しかったよ」と、リビングに入って、亜子が、真っ赤な顔をして眠っているのを見つけた。健太は、亜子に駆け寄り

「亜子? どうしたんだ。顔が、真っ赤だぞ」と、亜子の身体を揺さぶると亜子が目を覚まし

「あっ、お兄ちゃん、お帰り。ごめんね、ちょっと寝てたみたい。すぐに、夕御飯作るから」と、亜子は、立ち上がったが、天井が、グルグル回って倒れそうになった。健太は、倒れそうになった、亜子を支え

「夕御飯は、とりあえず、いいから。亜子、ちょっと熱を計ってみろよ」と、健太は、救急箱から体温計を取り出して、亜子に手渡した。亜子は、体温計を受け取り、体温を計った。

ピピピッピピピッ! 体温計が、終了を知らせる音が鳴る。亜子は、体温計を取り出し、体温を確認した。心配な健太は、「亜子、何度だった?」「えっと、三十八度八分だよ。通りで、身体が、だるかったんだ。風邪ひいたのかな?」

「亜子、高熱じゃないか! 今日は、何もしなくていいから、早く、薬飲んで寝なよ」

「でも、お兄ちゃんの御飯が……」

「俺の事なら何とかなるから、まずは、自分の心配しろよ」

「うん。ごめんね、お兄ちゃん」と、言って、亜子は、再びソファーに横になった。

健太は、亜子の為に、何か、栄養がある物を作ろうとしたが、健太は、料理をした事がなかった。迷った健太は、携帯を取り出し、電話をかけた。

「もしもし、倉橋です」健太が、電話をかけた相手は、千夏だった。

「もしもし、如月です。千夏ちゃん! ちょっと相談したい事が、あるんだけど」と、健太が、焦った口調で、言った。

「えっ! 健太くん? どうしたの?」

「実は、妹が高熱で、何か、栄養のある物を食べさせてあげたいんだけど……何を作ればいいのか分からないだよ。俺、料理したことないから、千夏ちゃんならって思って電話したんだ」

「そっか、妹さん大丈夫?」

「うん、今は、ソファーの上で、寝かせてるよ」「そっか! 卵粥なら、すぐに、教えてあげられるよ」

「お願いします」

健太は、千夏から、卵粥の作り方を教えてもらった。

「大丈夫? 分かったかな?」

「うん、メモも、とったし、何とかしてみるよ。ありがとね、千夏ちゃん! 千夏ちゃんに、相談してよかったよ」

「いえいえ、じゃ、お大事にしてあげてね」

健太は、千夏から、教わった、卵粥を不器用な手つきで、何とか、作り上げた。

作った卵粥を持って、亜子のところに行き

「亜子、一応、卵粥作ってみたから、食べときなよ。初めてだから、味は、分からないけど……」「ごめんね、お兄ちゃん。ありがと」

「しんどいだろうから、食べさせてあげるよ」

健太は、卵粥を亜子の口まで運んだ。亜子は、差し出された卵粥を一口食べた。

「あっ! 美味しい!」「本当に! よかった」「お兄ちゃん、料理した事なかったのに、よくつくれたね」

「まぁね、実は、学校の友達に、作り方を聞いてその通りに作ったんだ」「そうなんだ。でも、お兄ちゃんが、作ってくれた卵粥、美味しいよ。」亜子は、卵粥を全部食べて、市販の風邪薬を飲んだ。

「熱が、出てるせいか、汗で、服がびしょびしょだよ」

「ちょっと、待ってな、タオル持って来るから」健太は、洗面所まで、タオルを取りに行き、タオルをお湯で濡らして、持ってきた。

「ほら、タオル持ってきたよ。身体拭こうか?」「えっ! それは、さすがに、妹の私でも、恥ずかしいよ。自分で、拭くから、ありがと、お兄ちゃん」と、亜子は、高熱で、真っ赤な顔をさらに、真っ赤にして言った。

身体を拭いて、寝巻に着替えた亜子が、リビングに戻ってきて、しばらくソファーの上で、ゆっくりすると、だいぶ楽になったのか、亜子の顔色が、良くなってきたのを健太は感じた。

「亜子? 少しは、楽になったか?」

「うん、全然、楽になったよ。熱も、下がってたし、もう大丈夫だから」「そっか、それならいいけど、病み上がりなんだから、無理はするなよ」「うん。気をつけるね」「じゃ、亜子も、少しだけ、元気を取り戻したみたいだし、亜子に渡したい物があるんだ」と、健太は、ポケットから、包みに包まれた、箱を取り出した。

「何? 何か、くれるの?」と、亜子は、不思議そうな顔をしていたが、健太の言葉で、今日が、何の日か、思い出した。「亜子! 誕生日、おめでとう! 俺からのプレゼントだよ」

「お兄ちゃん、私の誕生日、覚えててくれたんだ。嬉しい、ありがとう」「当たり前だろ! 妹の誕生日ぐらい覚えてるよ。プレゼントは、何が、いいか迷ったけど、亜子には、似合うと思って、買ったんだ。開けてみてくれよ」

「うん」亜子は、健太から、プレゼントを受け取ると、箱を開けた。箱の中には、今、流行りのピンクゴールドのネックレスだった。

「わぁ~! 私、このネックレス欲しかったの! ありがとう、お兄ちゃん! 一生大事にするからね。付けてみてもいいかな?」

「付けてみなよ」

「どう、お兄ちゃん? 似合ってる?」

「うん! 似合ってるよ! 可愛いよ」

「嬉しい! 今年の誕生日は、一生忘れないからね。じゃ、私も、お兄ちゃんにお返ししなきゃ」と、健太に近付き、健太の頬にキスをした。

「お兄ちゃん! 今日は、本当に、ありがと。お兄ちゃん、大~好き」と、亜子は、健太に、抱きついた。健太も、亜子の頭を撫でながら、今日一日は、甘えさせてあげる事にした。


次の日の朝、亜子は、いつものように、健太を起こし、いつものように朝ご飯を二人で食べた。「亜子、今日は、無理するなよ、大事をとって今日は休みなよ」

「そうだよね、分かったよ。今日一日は、ゆっくりしとくね。でも、寂しいから、お兄ちゃん、早く帰ってきてね」

「はいはい、なるべく早く、帰るようにするよ。じゃ、行ってきます」

健太は、学校に向かった。学校に、向かう途中に、千夏と会い

「あっ! おはよう! 健太くん。妹さんは、大丈夫?」

「千夏ちゃん、おはよう! うん、大丈夫だよ、熱も下がってたみたいだし、一応、今日は、大事を取らせて休ませてるけどね」

「そっか! それならよかったよ。あれから、私も、心配してたの」

「心配してくれてありがとう。もう大丈夫だから! お粥も、何とか作れたし」

「そっか! 困った時は、お互い様だから、また、何かあったら遠慮なく聞いてね」

「うん! ありがと」 健太と千夏は、その後も、いろんな話をしながら、学校の校門に着いた時、後ろから、高級車が一台、やって来て、校門の前で、止まった。

健太と千夏は、互いの顔を見合わせ

「あの高級車、ベンツだよね。誰が、乗ってるのかなぁ」

「さぁ、誰だろうね?」健太と千夏は、不思議そうに、ベンツを見ていると、助手席から、白髪のタキシードを着た人が出てきた。その人が、後ろのドアを開けると、学校の制服を着た、女の人が現れた。

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