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第三話 駅前デパート

 日曜日の駅前は、人混みで、溢れていた。家族連れや、カップル、はたまた、女の子同士や、男の子同士など、様々な人達で溢れかえっていた。 千夏と真樹は、そんな人混みをかき分けながら、駅前のデパートに向かっていた。

デパートに着いた二人は、すぐに、洋服を見て回った。

「千夏!これなんかどう? 似合うと思うよ」

真樹が、千夏に差し出したのは、背中が大きく開いたワンピースだった。「え~、こんな背中の開いたワンピなんて、着れないわよ。恥ずかしいよ。しかも、パーティに行くんじゃないんだから」 「そうかなぁ~? 似合うと思うのに」

「普通の服で、いいよ。私は」

「そうなの? どうせなら、冒険した方が、いいのに。千夏の魅力を生かした服を買おうよ」

「いいよ。そんなに私は、魅力なんてないし、着飾るより、普通の格好の方が、自然だもん。健太くんだって、私が、着飾った姿なんか見たくないかもだし」

「そうかなぁ? せめて、スカートぐらいはこうよ。千夏ってば、いつも、ジーパンだからさぁ」「スカートだったらはいてみたいかな」

「そうと決まれば、このデニムのスカートはどう? ちょっと試着してみなよ」

「これ? じゃ、ちょっと着てみるよ」

千夏は、試着室へ入ってデニムのスカートを試着してみた。

「真樹、どうかなぁ。似合ってる?」

「うん。いいじゃない! 似合ってるよ」

「本当に、じゃ、買おうかな」

千夏は、ちょっと高かったが、真樹に推されスカートを買った。

「じゃ、千夏! 次は、下着でも見に行こうか」「何でよ。下着は、いいわよ。デートには、関係ないじゃない」

「あはは、冗談よ、冗談千夏ってば、ムキにならないでよ」

「もう、真樹! からかわないでよ」

「ごめん、ごめん。じゃ、服も買った事だし、何か、食べようよ」

千夏と真樹は、デパートのむかいにあるファミレスに入った。


その頃、健太は、亜子に連れられ、駅前のデパートに向かっていた。

「お兄ちゃん、約束は、守ってもらうからね」

「分かってるよ。今日一日は、亜子様に付き合います」

「よろしい」と、亜子は、胸を張って威張ってみせた。

健太が、何故、一日亜子に付き合うようになったのかと言うと、前日に遡る。


 朝、亜子は、いつものように、健太を起こす。「お兄ちゃん~! 朝だよ、起きて」

「もう、後十分寝かせてくれよ」

「駄目だよ。コラ! 起きろ」と、健太の布団の上に飛び乗った。

「うぅ~、分かったよ。おはよう、亜子」

「おはよう!お兄ちゃん。早く、顔洗って来なよ。朝御飯できてるから」「はぁ~い」

健太は、顔を洗い、髪の毛をセットしてから、亜子が待つ食卓についた。「お兄ちゃん、忘れてた。おはようのチューしてない」と、亜子が、唐突に言った。健太は、呆れた顔をして

「お前なぁ~! 朝から何言ってんだよ」

「もう、お兄ちゃんのイケず」と、亜子は、頬を目一杯膨らませた。

そんなやり取りをしながら、朝御飯を食べた。

「お兄ちゃん、今日なんだけど、私、試合なの。見に来てほしいな」

「試合って、ソフトボールの?」

「うん!今日の相手が、一度も勝った事がないとことなの。お兄ちゃんが、応援に来てくれたら頑張れるから。お願い!」「そんな、強敵相手なのかぁ~! 応援に行ってもいいけど、大丈夫なのか?」

「うん! でね、今日、勝てたら明日の日曜日私に付き合ってほしいんだけど」

「分かったよ。勝てたら、明日、一日亜子に付き合うよ」

「約束だよ、じゃ、今日は頑張るね! 場所は、市立運動公園の球場で、夕方、六時からね」

「了解~! 学校から帰ってすぐ行くよ。じゃ、また、夕方な。行ってきまぁ~す」

「待って、お兄ちゃん! 行って来ますのチューしてない」

「亜子、お前なぁ」

「冗談だよ。行ってらっしゃい」


学校が、終わって、アパートについた健太は、すぐに、亜子が、試合する市立運動公園の球場に向かった。

球場では、すでに、亜子たちは、練習していた。 健太は、客席の一番前に座り、練習している亜子を眺めていた。

亜子も、健太に気付き、 健太に向かって両手を振った。健太も、亜子に振り替えした。

その光景に、亜子のチームメイトたちが

「亜子? あの人、誰? すごいイケメンじゃない! もしかして、亜子の彼氏なの?」

「違うよ。私のお兄ちゃんだよ! 今日、応援に来てって頼んだの」

「いいなぁ~、あんなイケメンのお兄さんがいるなんて」

「いいでしょ、私の自慢のお兄ちゃんだよ」

と、亜子は、胸を張って自慢した。

午後六時になって、試合開始になった。試合は、緊迫した、シーソーゲームになったが、最終回に亜子が、試合を決めるサヨナラホームランを放って、勝利した。

試合後、健太は、亜子が来るのを待って、一緒に帰った。

「お兄ちゃん、今日、ありがとう。お兄ちゃんが、来てくれたおかげで、勝てたよ」と、健太の腕を掴んで喜んだ。

「おめでとう。亜子。観てても楽しかったよ。勝ったんだから、明日は、約束通り、亜子に一日付き合うよ」と、健太は、亜子の頭を撫でてやった。亜子は、顔を赤く染めながら

「やったぁ~! ありがと、お兄ちゃん! お兄ちゃん、大好き」と、

健太に抱きついた。そうして、日曜日に、健太と亜子は、駅前のデパートに出掛けたのだ。


健太と亜子は、駅前のデパートに行きながら、周りの視線が気になって仕方なかった。たぶん、周りからは、カップルだと、思われているだろう。イケメンと美少女が、腕を組んで歩いているからだ。健太は、周りの視線を気にしながら

「亜子、別に、腕を組まなくてもよくないか?」「駄目! 今日は、可愛い妹の言うこと聞く約束なんだから! 私は、一度、お兄ちゃんと、腕を組んで駅前を歩きたかったの」と、亜子は、兄妹ではなく、カップル気分で歩いていた。

デパートに着いた健太と亜子は、一通り店を回って、亜子の買い物に付き合った。健太は、いつの間にか、亜子の荷物持ちになっていた。

「亜子? まだ、何か買うのか?」

「どうしようかな? 服も買ったし、お兄ちゃんは一緒に来てくれなかったけど、下着も買ったし、後は、夕御飯の材料かな?」

「夕御飯は、せっかくだし、外で済ませようよ」「仕方ないなぁ~! じゃ、お兄ちゃんのおごりね」

「ちゃっかりしてるなぁ! 分かったよ。おごらせて頂きます。亜子様」「やったぁ~! さっすが、お兄ちゃん」

健太と亜子は、デパートを後にして、近くの喫茶店に足を運んだ。


一方、千夏と真樹は、ファミレスで、千夏の恋話に花を咲かせていた。「千夏、いつ如月くんに告白するのよ」

「分からないよ。告白したいけど、いざ、健太くんを前にしたら、恥ずかしくて、告白どころじゃないもの」と、外を見ながら話をしていると、窓の外に健太の姿を見つけた。千夏は、思わず

「あっ! 健太くん! 一人なのかなぁ。何処にいくんだろう?」と、口にした。真樹は、

「何処、何処」と、窓の外を見つめ、健太を見つけた。

「如月くんって、やっぱり、格好いいよね。こんな、人混みなのに、格好いいからすぐに見つかるね。一人っぽいし、誘ってみる?」と、真樹は、千夏に言った。

「いいのかなぁ~?」

「誘いなよ。チャンスじゃない」と、千夏を立たせ、健太のところに行かせようとした時に、健太の横に、千夏も真樹も知らない女の子が、健太の元に駆け寄っていた。もちろん、妹の亜子である。千夏と真樹は、突然、健太の前に現れた、女の子に驚いて

「ちょっと、千夏、如月くんの横にいるあの可愛い女の子誰? 知ってる?」

「知らない。誰なんだろう? 健太くんの彼女なのかな? 私、バカみたい! 健太くんとデート出来るかもって思って浮かれちゃてさ。健太くん、格好いいもん。彼女ぐらいいるよね」と、千夏は、肩を落とした。

「真樹! 今日は、もう帰ろうよ。買い物付き合ってくれてありがとう」 「うん。分かったよ。千夏、大丈夫?」

「うん。大丈夫だよ。それじゃ、明日ね」と、千夏は真樹と別れ家路に着いた。

千夏は、夕御飯が喉を通らないほど健太の横にいた、美少女が気になってしょうがなかった。

「あの子、本当に、だれなんだろ。健太くんと、楽しそうに話してたし、あんなに笑う健太くんも初めてみたなぁ~」

お風呂に入っていても、布団に入っても、あの子の顔が気になって、眠れなかった。

朝になって、千夏は

「今日、健太くんに聞いてみよ」と、決意を胸に学校へ行った。

学校に着いて、教室に入った千夏は、健太の姿を見つけ、すぐに

「おはよ。健太くん。ちょっと聞きたい事があるんだけど……」

「あっ! おはよう、千夏ちゃん。何、聞きたい事って?」

「実は、昨日、駅前にいた健太くんを見つけたの! 一人かなって思って、声をかけようかなって思ってたんだけど……」「そうなんだ。声かけてくれればよかったのに」「でも、女の子と一緒だったし、デートの邪魔かなって思って」

「女の子って、亜子の事?」

「亜子って名前なんだ、あの子。健太くんの彼女なの? すごい楽しそうだったみたいだし」

「亜子が、俺の彼女? 違うよ、千夏ちゃん。亜子は、俺の妹だよ。昨日は、一日、亜子に付き合ってたんだよ」

「妹なの? でも、腕とか組んでたじゃない」

「あれは、亜子が、勝手に組んだんだよ。本当に妹だから」

「本当に!」

「うん、今度、妹を紹介するよ」

千夏は、あの子が、健太の妹だったという事に、ほっと胸を撫で下ろし、健太に彼女がいないという事に安心した。

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