後悔のない人生を
ある村に仲のいい二人の少年がいました。彼らは毎日の仕事にうんざりしていていつも何かおもしろいことはないかと探していました。
そんなある日、一人の旅人が村にやってきました。
語られた冒険の数々に心を躍らせます。
旅人が村を去った後も二人は彼から聞いた話を毎日くり返しました。
「冒険に出よう!」
ひとりが誘いましたが、ひとりは首を横に振りました。
「無理だよ。絶対無理」
「いいのか、後悔するぞ」
「でも、失敗するかもしれない。後悔してからじゃ遅いんだ」
「やらないほうがもっと後悔するさ」
少年は一人で旅に出ることにしました。村の出口で一度振り返ったきり、大きく足を前にだしてあっという間にいなくなりました。
友人を見送り村に残った少年はいつもの仕事を始めました。
村に残った少年の元に手紙が届きます。その中には旅がいかに素晴らしいもので毎日が楽しくてしょうがないということが書かれていました。
「やっぱりボクも冒険すればよかった……」
旅先にいる友人のことをうらやましく思ったのです。ため息をつきながらいつもの仕事を始めました。
旅に出た少年は初めて見聞きすることにわくわくしっぱなしです。もっと知りたい、もっと楽しみたい。どんどん前にすすみました。だから気が付かなかったのです。目の前にぽっかりあいた穴に。
穴の中、うっかり足をすべらせて落ちた先で少年は困っていました。体は痛くてうまく動けません。助けをよんでも誰かがくる気配もありません。
彼はぽろぽろと涙を流しながら、村に残った友人のことを思い出しました。
「やっぱりボクも冒険なんてしなければよかった……」
とある村で旅人がひとびとに話します。
「冒険はいいものです。後悔のない人生を」