第二話:破滅の余波
遠目にデカいモンスターたちを見つけてから、やることは決まった。
とにかく、興味深いので近づいて見てみたい。
ということで、一番近くにいた空島のような亀に近づいていく。
甲羅は地面を擦るように移動しているので、浮いてはおらず、空島のような、という表現は正確ではないのかもしれない。しかし、その巨大さゆえに甲羅の上に乗った山々がまるで浮遊しているように見えるのだ。
この時の俺の好奇心について、後からとやかく言うつもりはない。ただしかし、これだけは言える。俺はバカだった。あの質量の相手には…まさに手も足も出ない。
近づくことはおろか、地面からの衝撃と風圧で吹き飛んで体がバラバラになったのだ。
余波だけでこの破壊力だ。意味が分からない。
そして、核の部分をあと1秒でも外の空気に露出していたら命が危うかったかもしれない。スライムは、どうやら体の中に浮かぶ核を破壊されると死ぬらしい。脳だのなんだの、神経の中枢がここに凝縮されているのだろう。
そして、核が外気に触れ、表面が乾きそうになったその瞬間、凄まじい痛みが俺の中を暴れ回った。
必死に肉片?スライム片?を手繰り寄せ、核を体の中に隠せたから良かったものの、少しでも手際が悪かったらどうなっていたか分からない。
しかし、一方で収穫といえることもあった。
それは、俺がこの暗黒大陸(仮)で生き抜くには、奴らと渡り合うだけの質量を得なければならないというのが分かったことだ。
現時点では無理ゲーに思える挑戦…だが、少なくともやってみる価値はある。
俺は急ぎ元の場所へ戻り、泉の水にフニと体の一部を浸してみる。するとどうだろう。水に触れた部分の体の制御が効かなくなり、どんどんと泉の方へと肉体の一部が吸われていく。
やめだやめ!体がなくなってしまう!
焦って泉から飛び退き、元いた石の裏に引き篭もる。もう何もしたくない。俺は弱すぎてこの世界では生きていけない…そう確信して、ジッと石の裏で息を殺し続けた。