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ルルーナガー4

「明日も世界が穏やかに続きますように」


 ベッドの中でそう祈ってから、目を閉じた。

 おやすみ全人類。

 眠りに落ちる直前、しゃりん、と音がした気がした。




 がんがんと壁を叩く音で目が覚めた。

 これはモールス信号を真似して作られた信徒符号だってすぐにわかった。万が一のとき、例えば悪魔に言葉を奪われてしまって、声だけでなく文字も書けなくなったときなんかに便利な伝達方法だから、私たち信徒の子供たちは英語を習うより先にこの信徒符号を教わる。

 目を閉じて、音の間隔を意識した。

「このたびはタルエル決済を御利用いただきありがとうございました。引き落とし予定日は27日です」

 と伝えているようだ。

 私は壁を蹴り返してやろうとして、気づいた。そうか、私は球体だから手足がないんだった。起き上がるのは無理だから転がらないといけない。ベッドからごつんと落下して、玄関に向かって回転する。ごろんごろんと転がっても目が回らないのは我ながらすごい。私には球体の才能があるみたいだ。


 さてと。お母さんはどこに行ってしまったのだろう。世界がこうなる前にはもういなくなっていたような気がする。毎朝ごはんを用意してくれていたお母さんは偽物だったのではないか。でもどうして。


 その瞬間、花に囲まれた母の遺体と、儀式を執り行う自分の姿が見えた気がしたが、すぐさま白い羽が覆い隠した。


 お母さん、と口にしようとして、自分には口がないことを思い出した。そうだった、球体なんだった。もう食事もしなくていいからとってもエコだ。言葉も話せないから喧嘩だってできない。人類がみんな球体になってしまえば世界はもっと穏やかになれるだろう。空がどんな色でも気にしないし、毒にも強いと思う。こんな体なら悪魔たちだってもう人間を食べようとはしないはずだ。


 ああでも珠って不便だな。自分では動けないし退屈だ。やっぱりやめにしよう。


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