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重課金騎士ソシャゲイザー!  作者: 宇奈木 ユラ
case.01 ソシャゲイザー爆誕!
4/42

1-1 【健闘を祈る】

【……………】


【システム起動】

【テリトリー再確認 完了】

【対象範囲 ⬛︎⬛︎県⬛︎⬛︎⬛︎市】

【適性者情報 収集】


【……………】


【適性者 剪定】

【リストアップ】

【再精査 開始】


【……………】


【適性者No.24】

【sinzi maki】

【第一候補 選出】

【対象者 スマートフォン】

【アプリケーション"ソシャゲイザー"】

【強制インストール】


【……………】


【インストール 完了】

【以後計画の全権を"イッカク"へ譲渡します】


【|健闘を祈る《I wish you good luck.》】


▽▲▽


 この世界はなんというか、()()()()()()モノである、と真城慎二は常々思っている。

 降水確率十パーセント切ってるのにゲリラ豪雨にピンポイント直撃するとか、BOXガチャは毎度毎度欲しい奴が箱の底に張り付いているだとか、給料日前で金欠の時に買うしか選択肢のない商品がプ○ミアムバ○ダイから出るとか。

 何ともまぁ、この世は諸行無常であるとある種の諦めに近い達観をいだいて生きてきた。


「──けど、これはもうあんまりじゃないか?」


 ()()()()()()と言っても限度があり、そこを超えると面白くもないのに乾いた笑いが溢れてくるということを彼はたった今知ってしまった。

 バイト先のスーパーに出勤する途中、たまたまプレミア○バンダ○の支払いをしようと立ち寄ったいつものコンビニ。

 レジでの決済手続きをしている正にその時。


「テメェら動くな、金を出せやオラァ!!!!」


 怒声と共に、覆面で顔を隠した二人組の男がナイフを手にコンビニ内へ投入して来たのだ。

 ──そう、俗に言うコンビニ強盗である。

 慎二はすぐさま両手を頭の上に上げて、無抵抗の意思表示をする。


「おら退けにぃちゃん!」


 剣呑に光る刃をちらつかせながら、レジの前から退けるように指示を出す強盗その一。

 両手を上げながらゆっくり後退してレジ前を開けると、強盗そのニがドカッと安っぽいカバンをレジカウンターに放り投げる。


「レジの有り金全部! ニ台とも!」


 怒声と共に店員へと指示を飛ばす、が。


(あ、やばいな)


 その指示された店員を見て、慎二は嫌な予感を感じた。

 たまたまレジへ入っていたのは線の細くて若い女の子で、その子は恐怖で固まってしまい動けないでいた。

 今にも涙をこぼしそうになりながら、更に小さく「ひっひっ」という声が聞こえることから、相当()()()()いるらしいことが伺えてしまった。

 時間は未だ早朝と言っても過言ではなく、一般的な通勤時間にはまだ早い。

 つまり、外からの助けはあまり期待できない。

 

(俺が、なんとかするしかないのか!?)


 指示に従わない店員に強盗が痺れを切らして何かやらかすのも時間の問題かと、慎二は腹を括る。

 彼が、何か起こった瞬間にいつでも動き出せるように心構えたその時だった。


『シンジ・マキ』


 突如、名前を呼ばれた。


「はい?」


 聴き覚えの全くない、というか明らかにこの場に居る()()()()()声であった。


『彼女を助けて、この場を解決したいのならば指示に従って欲しい』


「いや、いきなり何を」


 突然謎の声にそう提案され、困惑する慎二。

 それもそうだろう、強盗犯が目の前にいるのに堂々と彼等をどうにかする話をされたのだから。

 しかし、その慎二の様子を見た強盗はこう声を荒げた。


「うるせぇぞ()()()()()くっちゃべっとんじゃ、頭おかしいんかワレ!?」


 そう言われた慎二の方こそ、意味がわからないと更に困惑する。


『特殊な指向性音声を使用している為、私の声は君にしか聞こえていない』


 嘘だろ、と言う言葉を彼は寸前の所で呑み込んだ。

 理屈の正誤は置いておくとして、他の様子を見るに自分にしかこの声が聞こえていないというのは確かに思えたからだ。

 それなら、この声に下手に言葉を返すのは得策ではない。

 これ以上誰にも気取られることがないよう、慎二は敢えて口を噤んだ。

 慎二の判断を理解して、声の主は言葉を続ける。


『以後、Yesなら咳払い一回、Noなら咳払い二回で確認を取る──よろしいか』


 なるべく小さい声で、慎二は咳払いを一回する。


『了解した。君が物分かりの良い人間で助かる』


 そして声の主は、慎二に対して作戦の指示を出し始めた。


『まず、強盗達(かれら)に対してこう言って交渉を開始して欲しい──』


▽▲▽


「お、俺がレジから金を出そうか!?」


「あ゛ぁ、ナンだいきなり」


 突然慎二に話しかけられ、二人組のひとりがナイフ片手に詰め寄ってくる。

 その威圧感に怖気付いて後退りしそうになるのを堪えて、指示通りの言葉を続ける。


「そこの店員さん、ちょっと役に立たなそうだから!」


 未だに怯えている店員の子を指し示して、単刀直入に慎二は言う。


「俺も死にたくないし、アンタらもさっさと終わらせたいだろ!?」


 Win-Winだから、と必死に身振り手振りを交えて伝える。

 そんな慎二の様子と店員の怯え様を交互に見やり、強盗のひとりがこう言った。


「わかった、お前やれ」


「アニキ!?」


「その方がスムーズだ」


 どうやら強盗二人にも上下関係があるらしい。

 主犯格らしき方が、慎二の提案を呑んだ。


「じゃあ、失礼します」


 心の中でガッツポーズをし、慎二はレジ側へ周る。

 店員の子の肩を掴んでレジ前から離し──更に言うと強盗たちからも距離を離した位置に移動を促す。


「さて、やるか」


 彼はバイト先のスーパーでレジは扱っている為、種類は違えどコンビニレジの扱い方も何となくわかる。

 声の主の指示を聞きながらレジ画面を操作し、お金が入ったトレーを開ける。

 そしてソレを取り出す──()()をする。


「あ、あれ、上手く取り出せないナァ?」


「さっさとしろ!」


 ガチャガチャとトレーを触りながら、何かが引っかかって取り出せない演技をしてレジ下を覗き込む。


(──あった!)


 レジ下のスペースにあった()()を手にして隠しながら、自然な風を装って立ち上がる。

 そしてトレーから現金を取り出して、紙幣と共に()()をこっそりとカバンへ入れ始める。


『変な疑いを持たれないように、テキパキとこなしても良い』


 時間稼ぎとかは必要ないのかとも思ったが、言われた通りに紙幣と硬貨の順番に詰める。

 そしてカバンにレジ一台分の金を詰めた所で──。


『OKだ』


 ──声の主から、反撃開始の合図が出た。

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