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重課金騎士ソシャゲイザー!  作者: 宇奈木 ユラ
case.04 正義の後継、ソシャゲイザー!
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4-3 「俺、昨日のヒーローです。白い奴」

 先日自身が積み上げた飲料段ボールの山──、いやむしろ壁と表現した方が適切であろうか。

 その物影に身を潜めながら、顔半分を出して慎二が見つめる先に居るのは、鏡太郎だ。

 彼は手元のメモに時たま視線を落としながら、整頓されて積まれた洗剤類の中から売り場へ出すべき在庫を捜索しているようだった。


「え、えぇ?」


 その労働姿勢には、不自然さは感じられない。

 だからこそ、不自然さがないのが──あまりにも不自然だった。


「普通に、働いてる」


 昨日見たあの顔は間違いなく和泉鏡太郎のモノだった。

 竜頭怪人=彼であるという公式は、慎二の中では間違いなしの確定事項だったのだが。

 それでも、こうまで平常通りにされるとその確信にも揺らぎが生じる。

 

「どうしようか」


 斜め上から予想と予定を裏切られて、出鼻をくじかれたという感じの慎二。

 昨日の一件が色濃かったが故に彼は失念していたが、直近で鏡太郎との間柄は若干拗れていたのだった。

 故に気軽に話しかけるのは憚られるし、そもそも「ヘイユー、もしかして怪人かYo!?」みたいな内容の話を突然振るだなんて果たして出来るのか。


「出来る訳がないじゃないか。何かキッカケがあればいいんだけど全然思い浮かばないし」


 慎二は中番、鏡太郎は早番。

 ぐじぐじしている内に時間は過ぎて、あと一時間もすれば彼は退勤になってしまう。

 一体どうすれば、と頭を抱えていると。


「やっぱり血は争えないね、縁寿ちゃんそっくりよ」


「ニギャァァァァ!?!?」


 突然の背後、それも至近距離からの肉声に驚き思わず叫ぶ。

 叫ぶどころか、少し飛び跳ねもした。

 そして慎二の見ていた先にいた鏡太郎もその叫びに驚いて肩を揺らして振り返る。

 隠れてみていた自分とばっちり目が合ったが、それは一旦おいて置いて。


「てん、ちょ!」


 慎二は振り返って元凶の女性を睨む。

 ワイシャツに制服エプロン姿の店長は、わざとらしくコメディチックに肩をすぼめて見せる。


「お節介かもしれないけど、職場内の人間関係がガタつくのは責任者としてさけたくてねぇ」


 何か様子がおかしかったというのは、そんなにわかりやすかったかと慎二は内心で自問自答するがさもありなん。

 追い詰められた人間は、自身を客観視出来ないのである。

 そんな様子の慎二に「駄目だこりゃ」と店長は乾いた笑いを浮かべた。


「ちょっと早いけど、休憩入っていいよ。和泉さんも彼と話し合ってきて」


「はい?」


 すたすたと状況把握の為に駆け寄ってきた鏡太郎にもそう声をかける店長。

 しかし、鏡太郎的には寝耳に水というか何か起きているのかがさっぱりわかっていないが故に、困惑の表情を浮かべるしかない。


「別に、何も」


「何もじゃないわ」


 呆れ顔を浮かべて半眼で慎二を睨む彼女は、「こんな事もわからいでか」と言わんばかりであった。


「気まずそうにしてんのは片方のみだけど、貴方が何かしたならさっさと謝りなさい。逆に和泉さんに言いたい事があるなら、きちんと言葉にしなさい」


 まるで母親か小学校の先生か。

 いい歳しま成人男性に対して、正論で叱りつける店長の姿に慎二は羞恥と申し訳なさ、そして居心地の悪さを覚えた。


「私らはみんな超能力者じゃないんだから、コミュニケーションは人間関係構築に必須!」


 正しく子供を叱りつけるみたく「めっ!」という効果音がつきそうな姿勢で彼女は慎二に対する叱責を負える。


「汝、隣人を恐れることなかれ──あ、これは和泉さんにも言ってる台詞だからね」


 最後のその言葉にギョッとする鏡太郎。

 その表情からは「なんで俺まで!?」と言わんばかりの感情がありありと読み取れた。

 挙動不審を起こしていたのは慎二ひとりだが、彼女の視点では原因はもう片方にもあると見ているからだ。

 例え、鏡太郎(とうにん)に自覚がなかろうとも。


「いいから、話し合いなさい!」


 そう言ってスタスタと帰って行く彼女の後ろ姿を呆然と見つめる二人。

 

「「──。」」


 気まずい沈黙が降りる。

 だが、先程の慎二が待ち望んでいたキッカケそのものが到来してきたのだ。

 上手い話題の切り出し方は全然わからないが、もう単刀直入に最短距離で行くしかないと慎二は覚悟を決める。

 パシンと頬を両手で軽く叩いて気合いを入れると彼は鏡太郎へ向き直り、真剣な眼差しでその目を見据えた。


「少し裏口で話しましょう、()()()()()さん」


 瞬間、鏡太郎の目がスッと鋭く細まる。

 彼の中で慎二への警戒度が数段引き上げられた。

 当たり前だ。

 彼がまだ公表していない、かつての芸名を口にされたのだから。

 

「今、なんて言った?」


 低くて暗い、ドスの効いた声で鏡太郎が聞き返す。

 同じ職場で働く年下の先輩へ向けるような声色ではない。

 正しく、敵へ向けるべき声色であった。

 だからこそ、ここまで来ては後には引けない。


「俺、昨日のヒーローです。白い奴」


 だからこそ慎二はその問いを無視して、更に決定的な言葉を吐いた。


「アンタ、元ダイリュウガンで現怪人ですよね」

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