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重課金騎士ソシャゲイザー!  作者: 宇奈木 ユラ
case.02 十連ガチャだ、ソシャゲイザー!!
21/42

2-10 「言っておくけど、お前それ失敗フラグだからな?」

「重課金戦士、ソシャゲイザー!!」


 名乗りと共に背後でホログラム製の大爆発が巻き起こる。

 今回はカッコよく決まったことに内心ちょっとだけ満足したソシャゲイザーにイッカクが話しかける。


『そうなのか?』


「え、何が?」


『天井してからが、真の勝負なのか?』


 どうやら名乗りの際に適当に(のたま)った口上についての質問らしい。


「んー、諸説アリ」


 ()()()戦士だから、重課金者っぽいことを適当に言ったというだけだった彼はその質問をサラッと流す。


「さて、今回は何怪人?」


 校舎から飛び降り、滑空を経て着地した怪人の全身像を見ながら考察を開始する。


「半分は鳥っぽいのはわかるけど、もう半分はなんだ?」


 半身は色や形状からして鷹か鷲か、兎に角猛禽類っぽいというのはわかる。

 だが、問題は別の半分だ。


「紫色でテカってつるつる?」


 ──おおよそ、生物っぽさが無い。

 彼は、前回の怪人が牛と蜘蛛だった為、何か関連した生物同士が融合したのが怪人のテーマではと考えていた。

 だが、猛禽類と関連がある生物でツルテカ紫は思い浮かばず頭上に疑問符を浮かべる。

 いっそ宇宙人か、はたまた自分が法則性を勘違いしてたのかと思った時、イッカクがおもむろに口を開く。


『おそらく、茄子だ』


「茄子?」


 言われてみれば、紫の色合いや光沢はまさしく熟れた茄子──に見えなくも無い。

 だが、鳥と茄子に何か関連あったか。

 そう考えた瞬間、思い浮かぶモノがあった。


「──あ、一富士ニ鷹三茄子(なすび)!?」


 昔から言われている、お正月の縁起物。

 初夢でみたら嬉しい、一富士二鷹三茄子。

 半分の鳥の正体が鷹とするなら、その二番と三番という共通点が発見される。


「富士山要素抜けちゃってるじゃん!」


 むしろ一番重要なトコなくなってるじゃないか、と半笑いでいうソシャゲイザーにイッカクが注意する。


『油断するなよ』


 ふざけた見た目ではあるが、超常的な力を持ってることには変わりない。


「了解!」


 拳を構え、先手を打って走り出すソシャゲイザー。

 対する怪人は茄子側の半身をブルリと動かし、数本の触手を大きく長く彼へ向けて伸ばす。

 そしてその触手を()()()()て、鋭くソシャゲイザーへ打ち込んだ。


「蔦の鞭か!」


 鞭による打撃を交わし、一旦距離を取って様子を見る。

 バチンバチンと複数の触手を振り回して結構痛そうな音で地面を叩きながら威嚇する怪人に対して、ソシャゲイザーは奥歯を噛み締める。

 鞭による攻撃の網を潜り抜けながらの接近は、中々厳しそうに見えたからだ。


「肉を切らせて骨を断つ、べきか?」


『それは非推奨だ』


 いっそ、ダメージ覚悟で突っ込むべきかと思案するソシャゲイザーの案をイッカクが否定する。


『茄子はソラニン等のアルカロイドを有している。茄子の怪人なら、それを攻撃に付与してくる可能性がある』


 あまり知られていないが、生茄子の皮などにはアルカロイド系の成分が含まれている。

 それは微量の摂取では影響は無いものの、大量に摂取すると有毒になる成分である。

 通常はあまり気にする要素では無いが怪人であるならば、その要素を強化して攻撃に転用してくる可能性もある。


「死ぬやつ?」


『死にはしないが、頭痛嘔吐下痢には悩まされるだろう』


「じゃあ無し!!」


 嫌すぎる症状を想像し、身震いして近づくのを取りやめるソシャゲイザー。

 だがしかし、近づけないとなると攻撃手段がない。


「武器は無い? 銃とか遠距離の!」


 こと近年は販促事情もあり、特撮ヒーローに武器は必須だ。

 銃とか剣とか、はたまたモードチェンジでどちらにもなる奴とか。

 ついさっきバイクを出したのだし、武器もまた用意されているのではと期待する。


『無い』


「なんでさ!」


 無碍もなくそう即答され、思わずツッコミが入る。

 バイクより武器出す方がむしろ簡単だろうと続けて言おうとして、イッカクの言葉がそれを遮る。


『万が一、民間人を誤射したらどうする』


 ソシャゲイザーは想像する。

 敵を撃とうとして、間違って変な方向に誤射った場合を。

 その先にもし人がいた場合にどんな惨事になるかを想像して、背筋に冷たいモノが伝う。

 仮に剣とかだとしても、敵に奪われた上に民間人にソレを振るわれたらと思うと──。


「──うん、武器は諦めよう!」


 寒気がする想像と共にサクッと武器を諦めたソシャゲイザーだが、次の瞬間に触手の鞭がサッと頬を掠めて別の意味でまた寒気を感じた。

 改めて眼前の怪人から放たれる鞭の嵐を必死に回避しながら打開策を探す。


「いやでも、コレどうすんの。ジリ貧だぞ?」


『安心しろ』


 中々良案が思いつかない彼に変わり、イッカクが声を上げた。


『私にいい考えがある』


「言っておくけど、お前それ失敗フラグだからな?」


 よりにもよって機械(AI)がそれ言うか、とソシャゲイザーはひとりごちた。

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