だから、これは嘘コクじゃないから!!
今日、俺こと、新島大和は絶賛片想い中の女子に告白します!クラスにいる友達にも応援してもらった。いける、俺は大丈夫だ。思いを伝えるだけでも良い、やるんだ俺。
フン、フン、フン、告白。
軽く優雅なステップで教室に向かい、クラスで1人放課後の日直の仕事をしている彼女の隣に立つ。
背が小さいから黒板に手が届かないのか……、手伝おう。
彼女、色葉さんは黒板消しを手に頑張って消していた。ジャンプするたびに揺れる髪やモノ達が愛おしい。
「……?」
俺が黙って黒板消しを取ったからか、色葉さんはとても不思議そうに俺を見る。
「……ああ、いや、大変かなーと思って」
「……?、どうも」
喋った!!声高い!!冷たい、でも優しい!
俺が変にニヤついているからか、絶妙に気まずい空気になる。
「……」
「……」
なんか喋らなければいけないのに、何も言葉が出ない。まずいぞまずい。
「……あの、色葉さん」
「……はい?」
俺は黒板消しを置き場に戻す。
緊張のせいか、何も話題が作れないまま、声をかけてしまった。
どうしよう、天気?占い?ペット?すきなもの?桐⚪︎聡逮捕?
全部地雷だったら駄目だ。
先程までのルンルンは消え、残っているのは恥ずかしさと緊張。
……そうだ、俺は今日覚悟を決めたんだった。告白するってな!
「ーーッッ、色葉さん、好きです。付き合ってください!!」
目を閉じて、手を彼女に差し出すように俺は告白する。
言った!言ったぞ、皆、見てるか?!
返事は、どうだ……ッッ?
「……」
……なんだ?どうしたんだ?反応が何もない。
体調が悪いんだろうか?
「……ああ、私なんだ」
「え?」
謎の返事に驚き、目を開けると、心底嫌そうな顔をした色葉さんがいた。
な、え、?
そんな俺に告白されるの屈辱?!
もうキモすぎて告白したのが自分だと認めたくないレベルに嫌なのかなぁっ?!
「なんで、私にしたの?一番面白そうだから?」
「ええ、語っていいんですか?長くなるけど」
面白そうだからってなんだ。
もしかして、俺におもしれー女ムーブをしろってこと?
難しい、それは。
……色葉さんを好きになった理由を聞かれてるなら、まずは入学式に遡らなければいけない。
「……ああ、ちゃんと設定作ってくきてるんだ偉……」
何かボソッと色葉さんが呟いたような気がしたけど、聞き取れなかった。
「あの……返事は、」
「ああ……返事、いいよ。付き合っても」
「?!??!本当!?!で?!?!?!」
「……それは喜び?それとも嫌なの?」
「喜びに決まってる!!」
色葉さんが俺を睨む。
な、なんで??これ、もしかして嫌だった??気を使わせちゃったってこと??
俺が頭にハテナを浮かべてると、色葉さんが鼻で笑う。
「ま、どうせこの教室のどっかにお仲間さんがいるんでしょ?…、早く呼べばいいのに」
嬉しすぎて頭がハイになってる俺は、一瞬お祝いされたいから呼んで欲しいのかと思ったが、そんなわけないよな。
……ねえ色葉さん、もしかして……俺たち、何か、スレ違いが発生してない?
「えっと……いないよ?」
「じゃあカメラとか録音機でも設置されてるの?」
「ううん、ないよ」
仲間?カメラ?録音?
……もしかして、俺嘘コクしていると思われてる?
よくある、罰ゲームで告白してこいみたいな?
だから私なんだとか言ってたってこと?
「……もう、演技いいから、私知ってる。これ罰ゲームで私に告白してるんでしょ?」
うわーーーーッッ、やっぱり、思われてんだ?!
違うし、全然違う!!こちとら二年間ずっとアンタに片想いしてきましたけど。
「罰ゲーム?そんな訳ない。俺は本気の告白だよ。本当だよ」
「嘘、じゃあ、さっき貴方達ちらちら私の方見て笑ってたのはなんだったの?」
さっき、そんなことしてたっk……ああ、あれか。
あれは色葉さんに告白することを友達に言ってギャーギャー騒いでたんだ。
ぜんっぜん、悪意はないです。好意ましましで見てました。
「嘘じゃない、俺は、嘘コクなんてしないッッ。……あれは告白するから、皆に応援してもらってて」
「……嘘コクって言っちゃうところが怪しい。そういえば今日、トイレ前でじゃんけんして負けてたね」
なんで見てんの、と言いそうになった危ない。
そういえばそんなことした。
じゃんけんは、運試しのつもりでやったんだよな。
「一対一のじゃんけんで負けたら断られる、みたいに遊んでました。すみません。
「……本当に、嘘コクじゃないみたいだね」
「うん、本当に、マジコクです」
「マジ?」
「マジ」
「……しぶといなぁ…………えと、じゃあこれからよろしく、なの?」
「!??!はい、!!!」
ん?あれ、しぶといとか聞こえたけど気のせい?
ーーーー八年後
俺達は結婚生活3年目である。
今日は結婚記念日なので、家でパーティをしているところだ。
俺がケーキを切っている最中に、ほんのり幸せそうな顔で色葉が言う。
「私たちが付き合って八年か、長いようで短いような」
「そうだなぁ……」
「私ね、今となっては貴方が嘘コクしてくれてよかったって思ってる」
「そうだなぁ……俺も、ッッてえ!?」
衝撃のあまり包丁が深くまでいきすぎ、底の紙を切ってしまった。
嘘だろ、あの時完全に誤解は解けたと思ってたのに……ッッ。
俺は八年間もの間、ずうううっと罰ゲームで告白したと思われてたのか。
「ん?どうしたの」
「どうしたのじゃないよ、罰ゲームとかじゃないからねほんとに好きだから」
「………ええっ」
色葉は目を丸くして驚いている。
「ええ……、もしそうだったとしてもだよ?この八年間俺嘘つき続けるのやばくない?」
「いや、私、一緒にいるうちに好きになってくれたんだと思って」
「……正直泣きそう」
十年間、ずっと好きでしたよ???
「え、嘘コクじゃなかっ……た?」
色葉はいまだに困惑している。
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。