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中編

 魔王の残した呪いにより姿を変えられた俺は、戦士と賢者と共に魔王討伐の依頼を出した王国へと帰還した。


 姿を人に晒せぬ俺は黒い大きなローブを纏い、顔も姿も見えぬようにして移動した。途中立ち寄った街で不審がられたが、呪いにより変化した事、勇者にしか抜けない聖剣を抜いてみせた事で勇者本人と証明して旅を続けた。


 無事王国の王都へと着いた俺達は、門衛の兵士に事情を話し先触れを出して貰った。謁見の日程を組んで貰おうと思ったのだが、迎えの騎士が来てすぐに謁見することとなった。


「伝令より話は聞いておる。魔王討伐の成功、本当に目出度い。しかし、魔王最後の呪いにて勇者が変化したと聞いたが真か?」


「はい、見られると最も恥ずかしいと感じる姿となる呪いを掛けられました。道中で解呪も試みたのですが、魔王が全てを込めた呪いは解呪不可能と思われます」


「勇者と王女様の婚姻は、呪いにより不可能となりました。申し訳ありませぬが、勇者と王女様の婚約の撤回をお願い致します」


 賢者と戦士の言葉に玉座に座る国王陛下や隣に座る王妃様、王女様の視線は勿論居並ぶ貴族や騎士達の視線も俺に集中した。


「それは勇者の意思なのか?何故勇者は発言しないのだ?」


「勇者は声も変化させられています。その声を聞かれることも勇者にとっては恥ずかしいと感じるのです」


 賢者の返答に、居並んだ面々は驚きを隠さなかった。偉業を達した勇者の境遇を嘆く声もちらほらと聞こえてきた。


「勇者殿がどのような姿であろうとも、どのような声であろうとも、我らを救いし英雄である事に何ら変わりはありません!」


「然様、これは謂わば名誉の負傷。勇者殿には堂々とその偉容をお見せいただきたいと思います!」


「皆の思いはわかった。静まれ」


 口々に思いを叫びだした貴族達は国王陛下に窘められ口を閉じた。そして国王陛下の次の発言を待ち耳を澄ます。


「余も皆と同じ思いだ。勇者よ、そなたがどのような姿であろうとも我らは態度を変えぬ。何かあった時そなたを守る為にも姿を披露してはくれまいか」


 その心意気は嬉しいのだが、出来れば姿を晒す事なくこの場を去りたかった。だが、そうまで言われてローブに隠れたままという訳にはいかない。


「わかりました。変わり果てた姿をお見せ致します。どうか驚かれぬようお願い致します」


 前の俺とは到底思えないこの姿を見て驚くなという方が無理な注文だ。だが、決まり文句のようなものなので一応言っておいた。


 姿と同じく変わってしまった声を聞いた皆は啞然として俺を凝視している。声を発したのが本当に俺なのかと疑問に思っているだろう。


 そんな注目を浴びる中、俺は覚悟を決めてローブを脱ぎ去った。

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