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前編

 漆黒の刃が頭上に迫る。俺は清浄な光を纏う聖剣を両手で握り受け止めた。しかし、その手応えは予想より遥かに軽かった。マズイと身構えるよりも早く魔王の炎を纏った右足が脇腹に迫った。


「させるか!」


 間一髪、戦士が飛び込んで蹴りを盾で防ぐも、勢いを殺しきれず俺と共に吹き飛ばされる。その隙を逃さず追撃しようと追ってくる魔王。しかし、光弾が嵐のように飛来しそれを防ぐ為に足を止めざるを得なかった。


「すまない、賢者。追撃を食らっていたらまずかった」


「俺達は3人パーティーだろ、気にするな」


 体勢を整え再び魔王と対峙する。俺や戦士の体力はかなり消耗し、賢者の魔力も残りはそう多くないだろう。魔王も消耗していないとは思えないが、見た目からは判断する事が出来ない。


「貴様らがどう足掻こうと我に勝つ事は出来ぬ、大人しく魔剣の錆となるが良い。まあ、我の魔剣は錆びる事など無いのだがな」


 高笑いしつつこれまで以上の魔力を魔剣に込める魔王。俺や戦士よりも体力が少ない賢者は限界を迎えたのか、片膝を床に着き項垂れてしまった。


「賢者は観念したようだな。貴様は最後にトドメを刺してやる事としよう。まずは勇者ぁあっ!」


 俺に渾身の一撃を叩き込もうとした魔王の体勢が大きく崩れる。踏み込んだ魔王の足元には20センチ程度の窪みが出来ていた。そう深くない穴だが、体重をかけた踏み込みをされた時バランスを崩すには充分といえる段差だった。


「最も油断しやすい時、それは勝ちを確信した時なんだよ!」


 戦士が剣を捨て、両手で盾を支えて魔王に突っ込む。よろけた魔王の魔剣に全力でぶつかり、腕ごと横に弾く事に成功した。


「一度こっきりの子供騙しの初見殺しだ。こんな手に引っかかる自分を恥じるのだな!」


 残る力を振り絞り、最高の一撃をガラ空きとなった魔王の胴体に叩き込む。武器を腕ごと弾かれ、体勢を崩した魔王にはそれを防ぐ手段は無かった。


「くっ、我がこんな事で敗れるとは・・・」


 いくら魔王といえども、神より授かりし聖剣の一撃を食らって無事では済まない。決して浅くない傷口から広がりつつある光は魔王の体を徐々に消し去っていった。


「だが、タダでは死なぬ。残りし力の全てを使い、勇者を呪ってくれようぞ!」


「なっ、ぐああああっ!」


 最後の一撃に全てを掛けた俺は動く事が出来ず、魔王より吹き出した黒い霧は俺を包み込んだ。魔剣を弾いて離れていた戦士も、魔王城の床を力技で凹まし魔力を使い切った賢者もなんの手も打つことが出来なかった。


「その呪いは、貴様が最も恥を感じる姿となる呪い。貴様の深層心理を読み変化させる、我にもどのような姿となるかは想像もつかぬ呪い。太った醜男となるか、醜い獣と成り下がるか。一生人目を避けて生きるが良いわっ!」


 力を使い切り、光に対する抵抗を失った魔王は光に侵食され消え去った。俺は体がバラバラになりそうな激痛に耐えていた。


「勇者、しっかりしろ!お前がどんな姿になろうと、俺達は一生の仲間だ!」


「そうです、生きてさえいれば、解呪出来るかもしれません。耐えて下さい!」


「お、お前達・・・」


 戦士と賢者の励ましを受け、俺は激痛に耐えた。そして果てしなく続くと思えた痛みが去った時、俺の姿は全く違う物となっていた。

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