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恋をしたいお年頃

作者: 下菊みこと

私はルシータ。女公爵であったお母様ナターシャとその夫であるお父様ゲオルグの実子です!お母様の従兄弟の子供で養子縁組済みのデリックお兄様と、お父様の連れ子のリナリアお姉様という兄姉がいます。


デリックお兄様は今はお母様から爵位を継いで、若くして公爵様になりました。素敵なお嫁さんのエロイーズお義姉様と恋に落ちてプロポーズも成功し、素敵な新婚生活を送っています。リナリアお姉様は侯爵家の嫡男のマクサンスお義兄様から一目惚れされて熱烈なアプローチを受けて、結婚しました。デリックお兄様もリナリアお姉様も幸せそうです。


お母様とお父様は爵位をデリックお兄様に継いでもらったので、領内ののどかな風景が広がる田舎に別荘を建てて移り住みました。たまにお土産のお野菜をたくさん持って帰ってくるお母様とお父様は、前にも増してすごくラブラブです。


「はぁ…私も恋をしたいなぁ」


そんな私の悩み事は、恋をした経験が一度もないこと。家族はあんなに素敵な恋をしているのに、私には出会いがないのです。お母様とお父様は恋愛結婚推奨派ですから縁談は用意してもらえませんし、お兄様とお姉様は結婚しなくてもずっと幸せでいてくれたらそれでいいと甘やかしてきます。これでは結婚なんて夢のまた夢です!!!


「でも、異性にときめいたりとか経験がないからなぁ」


私は夜中に、窓を開けて星を眺めます。


「風がひんやりして気持ちいい…あ、流れ星だ」


素敵な恋を出来ますようにと、流れ星に願います。


「…叶うといいなぁ」


私は窓を閉めて、ベッドで眠りました。














「…王太子殿下の婚約者探しのパーティー?」


「そうだよ、ルシータ。未婚の貴族女性はみんな招待されている。どうする?」


デリックお兄様にそう聞かれます。急に言われても不安しかありません。けどいつまでも結婚せずに家にいるのは迷惑をかけてしまいますし、私もそろそろ結婚適齢期に入りましたし。


「行ってみます!」


「お兄様はルシータが心配だよ」


相変わらず過保護なデリックお兄様。変わらない優しさに、少し安心します。


「大丈夫です、デリックお兄様」


「…うん。男どもが生半可な覚悟では近づけないほど完璧に、美しく着飾っていっておいで」


「ふふ、もう。わかりました!お兄様がそこまで言うなら、完璧に着飾ってみせます!」


ということで、私はダンスパーティーと言う名のお見合いパーティーに参加することになりました。












「ルシータ!お兄様から頼まれたから、今日は私がルシータを綺麗にしてあげる!」


「リナリアお姉様、ありがとうございます!」


「いいのよ!元々ルシータはすごくすごく可愛らしいもの!磨けばさらに美しくなるわ!」


リナリアお姉様の指示で、使用人達があれやこれやとやってくれます。


「…はい、メイクまで完璧ね!ルシータ、鏡を見てみて」


「はい、リナリアお姉様!」


鏡を見ると、とても美しくなった私がいました。


「…詐欺メイク!」


「そんな言い方しないの!最大限ルシータの魅力を引き出しただけよ!」


あんまりにも綺麗になっているので、本気でびっくりしました。


「じゃあ、行ってらっしゃい」


「う、うん。素敵な男性のハートをがっちり掴むわ!」


「ふふ、その意気よ」


こうして私はダンスパーティーに向かうため馬車に乗り込みます。















「…王太子殿下には元々婚約者がいて、けれどその婚約者である他国の姫君は護衛の騎士とともに駆け落ちしたんですよね」


結構な騒ぎになり、姫君の国と我が国がかなり揉めたのは記憶に新しいです。


「結局、多額の賠償金を受け取って国同士は和解しましたが。今では交易や外交も正常に動いていますし」


でも、王太子殿下の気持ちを思うと、なんとも言えないです。


「…王太子殿下は、気持ちの整理はついたのでしょうか」


せめて今日のパーティーで、良い方と出会えて幸せになってくれれば良いと思います。


「そして私も、運命の人を見つけられたらいいな」


そんな願いは、呆気なく叶いました。













「…ルシータ嬢!俺と結婚して欲しい!」


そう言ってきたのは王太子殿下…の、側近のイポリート様。ちなみに王太子殿下は結局のところ、侯爵令嬢である自身の従姉妹と婚約を結んだのでした。


「で、でも、あの、私あのパーティーでは特別メイクを頑張りましたけど、普段はこんな感じで」


「とても可愛らしいと思う!」


「あ、ありがとうございます…」


積極的な態度に、思わず照れてしまいます。


「婚約指輪も用意した!このバラの花束と共に受け取って欲しい!」


ガンガン攻められて、熱に浮かされそうです。


「えっと、あの…よろしくお願いします」


「そうか!良かった!よろしく頼む!」


そしてイポリート様と、正式に婚約を結ぶことになりました。














「ルシータ!君は本当に可愛いな!」


「あ、ありがとうございます」


「肌は白く、頬は赤く、艶やかな髪は美しく!それでいて俺のアプローチを受け入れてくれるその心の広さ!なんて素敵な女性だろうか!俺は毎日幸せだ!」


あれから。イポリート様は毎日のように私に会いに来て、愛を囁きます。王太子殿下の側近の仕事ももちろん疎かにしていないらしく、私のために「以前にも増して驚異的なスピードで、しかもいつも通りの正確さで仕事を片付けるようになった」とイポリート様の部下から聞きました。


「あの…イポリート様は何故私にそんなに好意を持ってくださるのですか?」


「一目惚れだ!」


「一目惚れ…」


「だが、君と接していると内面にも惹かれる!やはり君は、存在してくれているだけでただただ愛おしい!」


「あ、ありがとうございます…」


最初は警戒していたデリックお兄様も今ではイポリート様の熱烈な態度に、「妹の良さがわかる良い男」だと認めてくださっています。リナリアお姉様はイポリート様を「愚直な方ね。でも安心してルシータを任せられるわ」と嬉しそうに評価していました。お母様とお父様は「熱烈過ぎて、その内たまに疲れそうだけどまあ頑張れ」と応援してくださっています。


イポリート様のご両親は、私が公爵家の娘であるというのもあって大歓迎してくださっています。あとは私の心の問題ですが。


「あの、イポリート様」


「なんだ?君のためならなんだって出来るぞ!」


「私、こんなに一途に恋愛感情を向けられたのは初めてです。幸せです」


私の言葉に、イポリート様はすごく嬉しそうにはにかんでくれます。


「俺も、こんなに人を好きになったのは君が初めてだ!君が生きていてくれるだけで幸せだ!」


その言葉に、私の決意は固まりました。


「婚姻届はいつ出しましょうか。結婚式は、準備もあるので来年にしますか?」


「…っ!そ、そうだな!結婚式は一年後、入念に準備をしよう!式の後すぐに婚姻届を出そう!」


「家族になるのが楽しみですね、イポリート様」


「俺が君を絶対に幸せにする!」


「もう幸せですし、一緒に幸せでい続けましょうね」


私の言葉に、イポリート様は言いました。


「君が隣にいてさえくれれば、俺はそれだけで幸せだ!」















「リナリア、ルシータ。結婚生活は順調かな?何かあればすぐに帰ってきていいからね」


「お兄様ったら!ルシータは新婚さんなんだから大丈夫よ!私だって夫に恵まれて幸せなんだから!ね、ルシータ」


「えへへ。イポリート様が毎日愛を囁いてくれるので、なんだかすごく満たされてます」


「我が妻は世界一可愛いからな!」


月に一度の家族の集まりの席で、盛大に惚気るとイポリート様に抱き寄せられます。


「あら、それを言うなら私の旦那様も世界一の男よ?」


「リナリア、愛してる!」


「私もよ、旦那様?」


リナリアお姉様達も惚気出します。


「おや。それを言うなら僕の妻だって、すごく優しくて愛情深くて美しい素敵な人だけど?」


「ちょっとデリック様、恥ずかしいです…!」


そして隙あらば妻を自慢するデリックお兄様に、人前で惚気るのが苦手で赤面するエロイーズお義姉様。


「ふふ、ゲオルグさんと私だってラブラブよねー?」


「ナターシャは私の一番のお嫁さんだからね!」


お母様とお父様も相変わらずの惚気っぷりです。幸せいっぱい。その内ここに子供の声も混じるようになるのでしょうか。それを楽しみに、私はイポリート様と思う存分イチャイチャして過ごしました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 皆幸せでそれが良い。 ホッコリさせて貰いました。
[良い点] みんなにこにこでふわふわでシアワセなところ。 [一言] ・・・あれっ? 私は何を読まされていたのだろう・・・? きっと今日も何だかぐっすり寝そうな気がします。
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