元妻にトラウマを植え付けられて田舎に帰ってきた僕を待っていたのは、幼馴染の元AV女優でした。〜女性恐怖症の僕に突きつけられたのは、F○NZAの動画〜
東京から東北新幹線と在来線、そして存続が危ぶまれている第三セクターの鉄道を乗り継いで約6時間。
僕、高橋一太郎は10数年ぶりにこの田舎町へ帰ってきた。
稲穂はすっかり実っていて、まもなく収穫を迎える。そんな空気の澄んだ秋の日。
いつの間にか無人駅になってしまっていた最寄り駅を出ると、おおよそ商店街とは呼べないような寂れっぷりが目に入る。
駅前にはタクシーすら待っていないので、すぐ近くにあるタクシー会社の事務所まで直接出向く。これも田舎クオリティといったところ。
「すいません、八木田まで1台お願いしたいんですけど」
誰も座っていない受付窓口でインターホン代わりの内線電話の受話器を手に取って、僕はタクシーをオーダーする。
八木田とは僕の実家がある集落の名前。バスが1日2本程度しか来ないような僻地中の僻地なので、こんな感じでタクシーを頼んだほうが手っ取り早い。
電話をかけて数十秒もすると、『ちょっと待ってね』と事務所の奥から従業員の人の返事がした。
こんな高齢化の進んだ田舎にしては珍しく、若そうな人の声。
それも、どこかで聞いた覚えのある声だった。
「ごめんねー、今運転手がみんな出払ってるからちょっと待っててもらえる? ……って、あれ? もしかして、一太郎……?」
事務所の奥から現れたのは、髪を明るく染めていて商売上手そうな笑顔を浮かべる若い女性。東京にいたら、それこそモデルなんかにスカウトされてもおかしくない美人だ。こんな田舎には似つかわしくないと言えば似つかわしくない。
そして何を隠そうその人は、僕の中学時代の同級生だった桜庭葉月だった。
明るくて、元気で、みんなの人気者だった葉月。そんな彼女がなんでこんな田舎のタクシー会社で事務をやっているのか不思議で仕方がなかった。
「急に帰ってきてびっくりした……。成人式ぶり? 今まで盆にも正月にも帰って来なかったのに、……親戚でも亡くなった?」
「い、いや、そうじゃないんだ。……ただの出戻り」
「出戻り……? でも一太郎、東京で弁護士やってるって……」
「まあ……、色々あってね……」
僕は葉月の質問に端切れ悪く答える。
どこからか伝言ゲームのように尾ひれがついて、葉月の中では僕は東京で弁護士をやっていることになっているらしいが、実際には税理士だ。
東京で色々ありすぎたおかげで、今ここで葉月にすべてを説明するのはさすがに難しい。
すぐにタクシーもやって来るだろうし、とりあえず事実だけを葉月に告げる。
「……離婚、したんだ。だから東京に住むのはもうやめて、今日から実家暮らし」
葉月はそれを聞いて、悪いことを聞いてしまったと少し申し訳なさそうな顔をする。
「そうだったんだ……。まあ、人生色々あるよね」
こんなことを言ったら引かれるかなと思っていたけど、葉月は妙に察しが良いというか、幻滅するようなことはしなかった。
田舎だと未だに離婚に対する偏見が強かったりするだけに、葉月が引かなかっただけでも僕は少し救われた気分になる。
「でも、仕事はどうするの? 弁護士なんてこんな田舎じゃ働き口無いでしょ?」
「弁護士じゃなくて税理士ね。親父の友達に税理士事務所をやってる人がいるんだけど、もう歳も歳だっていうからそこを手伝おうかなって思ってる」
「そうなんだ。やっぱり資格持ってると手に職があるって感じで強いね」
「その分、青春を勉強だけに費やした感じはあるけど」
確かに中学のときからガリ勉だったよねと葉月は笑う。
そんな僕とは対称的に、葉月は青春を謳歌していた。お互い違う高校に進学したのに、桜庭葉月という美人がいるらしいと僕の高校の中でも噂になるぐらいだった。
いわゆる、陰キャラと陽キャラってやつだ。
学生時代だったら、葉月と僕は絶対に相容れないようなそんな存在。
そんな2人が三十路を迎える歳になって、こんな片田舎で再び出会うこともある。人生とはよくわからないものだ。
「じゃあせっかく再会したわけだし、引っ越しとか終わって落ち着いたらちょっと飲まない? プチ歓迎会的な」
「ま、まあそうだね。それもいいかも」
「それなら連絡先教えてよ。一太郎、携帯電話持つの遅かったから未だに番号とか知らないんだよね」
「そ、そうだったかな……、ははは……」
そうだよと葉月は言って、スマホを取り出しながら僕の隣へと寄ってくる。
葉月が僕の右隣についたその瞬間、僕の身体は急に強張り始めた。
――まずい、血の気が引いて頭が真っ白になりそうだ。
「……ご、ごめん、ちょっと紙とペンを貸してくれるかな。そこに電話番号を書くから」
「えっ? まあ、それでもいいけど……」
葉月は僕の身に何が起こったのかわからず、ちんぷんかんぷんのまま紙とペンを用意する。
彼女が隣から離れたおかげで、僕は身体の強張りから開放されて正気に戻った。
「……はい、じゃあこれ、僕の電話番号」
「う、うん。ありがとう。……大丈夫? 具合悪くなった?」
「大丈夫大丈夫、ちょっと長旅だったから疲れが出たんだよ」
「……そっか、じゃあ今日は実家でゆっくり休んでね」
そうさせてもらうよと僕が言うと、狙いすましたタイミングでタクシーが1台やって来た。
それに乗った僕は、葉月に手を振って実家へと向かう。
その車内、僕はさっきのことで葉月が気を悪くしていなければいいけれど、と思っていた。
◆
「かんぱーい!」
「乾杯」
この町に戻ってきてから1週間程が経った。
引っ越しやら新しい職場への挨拶なども済ませ、待ちわびた週末の夜。
僕は葉月の提案どおり、地元の居酒屋で彼女と一杯交わしている。
いい歳した男女がサシで飲んで大丈夫なのかなと思ったりした。でも、ビールジョッキを持つ彼女の左手には指輪の類は一切ないことに気がついた僕は、ちょっとだけホッとしていた。
「ごめんねー、他のみんなも呼んだんだけど、家庭がある人ばっかりでさ」
「い、いいんだよ。僕はあまり騒がしくないほうが好きというか……」
「それもそっか。一太郎、体育祭とか文化祭の時、いっつも端っこにいる感じだったもんね」
「……よく覚えているね」
葉月いわく、田舎は人数が少ないから僕みたいなのは逆に目立つらしい。だから覚えていたのだとか。
彼女は人を呼べなくて申し訳なさそうにしているけれど、僕はそれに助けられた形だ。
もし人が多かったら、またこの間のようなことになってしまうだろうから。
「……んで、ちょっと一太郎に聞きたかったことがあるんたけど」
飲み始めて少し経ち、最初の一杯の酔いが心地よく回り始める頃、葉月は唐突にそんなことを言い出した。
お酒はそれほど強くないのか、彼女の顔は赤らんでいて少し色っぽく見える。
「……なに?」
「……なんで離婚したの?」
「やっぱりそれ訊いちゃう?」
「当たり前じゃん! めっちゃ気になってるんだから! なに? 浮気しちゃった? 不倫? 慰謝料とか払ったの?」
葉月は格好のエサを見つけたかのように僕へと疑問をたくさん投げかける。
でも、多分葉月の期待しているような答えは返せない。そんなに面白いことではないから。
「……あんまりいい話じゃないよ」
「そりゃ離婚だからね。いい話が聞けるなんて思ってないよ」
「おまけに、ちょっと情けない話だよ」
「だからお酒の力を借りてる」
葉月はまるでスッポンのように僕に食いついて離れない。
あまり思い出したくないけど、話さないと葉月は納得してくれなさそうだった。
「……わかったよ。特別に話すことにする。他言はしないでくれよ?」
「もちろん!」
敬礼ポーズを見せる葉月はすっかりご機嫌らしい。
これから話すことはちょっと重苦しいので、それぐらいの心構えでいてくれたほうが助かる。
「僕は5年前に結婚して、子供が1人いたんだ」
「えっ、子供までいたの!? 一太郎もやることやってんだねえ」
「茶化さないでくれよ。結構僕は真面目に話してる」
「ご、ごめん……」
葉月は自分のテンションの高さを少し反省したようだ。上がっていた口角はもとに戻り、彼女は真面目な表情へと戻る。
5年前、僕は友人のツテで出会った女性と結婚をした。
今思えば、この結婚がすべての間違いだったのだ。
程なくして子供が生まれる。それはとても喜ばしいことだった。
しかし僕の元妻は、育児らしい育児をすることはなかったのだ。
別にそれほど収入に苦しんでいたわけではないが、キャリアが途切れるのが嫌だということで、彼女はすぐに働きに出た。
僕は育児休暇や在宅ワークをうまく利用しながらなんとか子供を育てる日々を送った。
育児はわからないことだらけ。それでもこの子が生きていくためには自分がしっかりしなければならないと思い、がむしゃらに取り組んでいたと思う。
もちろん家事と名のつくことも全部やった。炊事洗濯掃除、買い物や家計簿の計算も僕の仕事。
帰りの遅い元妻は、全力で働いているのかいつも疲れた様子だった。だから僕が頑張らないといけないと盲目的に思い込んで、毎日を過ごしていたのだ。
子供が4歳を迎えた今年の春、事件は起こった。
体調を崩してしまった子供を連れて病院に向かうと、血液検査を行うことになった。
そこでついでに血液型を調べてもらったところ、衝撃の事実が判明した。
僕と元妻はA型、でも子供の血液型はAB型だったのだ。
遺伝子的にそんなことがあり得るのかと、僕はパニックになった。もしかしたら、この子は僕の子ではないかもしれない。それでは一体誰の子なのだ?
真偽を確かにするため、元妻には内緒で子供と僕の遺伝子鑑定を依頼した。
結果は案の定、僕の子ではないことが明るみになってしまったのだ。
元妻にこの事実を突きつけると、あっさり他の男との間に出来た子供だと白状した。
しかも、キャリアが途切れるのが嫌だと言って働いていたというのは全くのウソで、実際には多数の男と遊んでいたことまでわかってしまった。
僕は、まんまと元妻に搾取されてしまっていたのだ。
こうなると離婚まではあっという間。
しかもそのの条件はひどいものだった。
子供の親権は元妻へ、おまけに元妻が支払う慰謝料はなし。その代わり僕の養育費の支払いもいらない。という、極端なもの。
まるであなたとは最初から家族ではなかったのよと言いたげな、そんな条件。
精魂尽き果てていた僕は、もう元妻の顔も見たくないぐらいに心が荒れていた。この条件で構わないから、一刻も早くこの呪縛みたいな人から逃げ出したいという気持ちでいっぱいだったのだ。
そうして孤独になった僕は、地元へと出戻ることにした。
「……とまあ、こんな情けない事情があるわけだよ」
僕は手元にあるウーロンハイのグラスを手に取り、乾いた口を潤すように一口だけ飲む。
「……なにそれ、意味わかんないんだけど」
「意味がわからなくても、これが現実」
「なんで一太郎がそんな目に遭わないといけないの……? ひどすぎ……」
「そういう星のもとに生まれてきたんだよ、僕は」
僕は自嘲する。
終わったことを悔いても仕方がないのだ。そういう運命だったと諦めるのが精神衛生上一番楽である。
「でも、それなら別にこっちに帰って来なくても良かったんじゃない? 仕事だって東京の方があるだろうし」
「確かにそうなんだけどさ、ちょっと厄介なことになっちゃって……」
「厄介なこと?」
「ほら、この間僕が葉月に電話番号を教えたときのこと覚えてる?」
葉月はそう言われて、何かに気がついた。
「ああ、あの時ね。なんか、一太郎ってば具合悪そうにしてた」
「……実は、その離婚が原因で女性恐怖症みたいになっちゃってさ」
そう僕が告げると、予想だにしない言葉が出てきたのか葉月は慌て始めた。
「えっ!? ウソ? そうだったの!? ご、ごめん、私と一緒にいて大丈夫?」
「この距離なら大丈夫。……でも、隣にいられるとまたあんな風にパニックみたいになる」
医者が言うにはPTSDの一種らしい。
厄介なことに、満員電車なんかで女性が近くいるだけで発作が起きてしまう。もし触れようものなら、多分泡を吹いて倒れるだろう。
それでは東京で暮らすことは難しいと思い、僕は田舎へ戻ってきたのだ。
その事実を告げると、さっきまで心配そうにしていた葉月の瞳からついに涙が溢れはじめた。
「そんなの……、ひどすぎるよ。全部奪っておいておまけに心にまで傷をつけて……、居場所も失わなきゃいけないなんて……」
「お、おい、そんなことで泣くなよ……。別に葉月が心配するようなことじゃないから大丈夫だって」
「そんなことなんかじゃないもん! だって……、だって……」
他人のことでこんなに悲しみや辛さを共有してくれる葉月は、本当に出来た人なのだなと改めて僕は思った。
できることなら泣き出す葉月のそばに寄り添って背中でも撫でてやりたい、そんな気持ちだ。
でも、今の僕にはそれができない。
その事実がものすごくむず痒くてもどかしくて、叫びだしたくなる。
「……よしっ! 決めた! 今からその女殴りに行こう!」
急に葉月は立ち上がって、何かのスイッチが入ったかのようにそう叫ぶ。
「えっ……? ちょっと葉月、何言って……」
「もう我慢ならんのよ! 私の初恋相手をボロボロにしておいてタダで逃げるとか絶っ対に許せない!」
「落ち着いてよ葉月、そんなことをしてもなんにもならないし、そもそも僕は元妻の居場所なんて知らない」
その時の僕は興奮気味な葉月を抑えることで手一杯だった。けれども、葉月をなだめてからよくよく彼女の発言を咀嚼し直すと、サラッととんでもないことを言っていることに気がついた。
「……ちょっと待って? 初恋相手? 僕が? 葉月の?」
「えっ、あっ、そ、その、それは……、ねっ……?」
僕に言われてから葉月は自分の発言に気がついたらしく、急に顔を真っ赤にしてシナシナと縮こまってしまった。
「……中学の頃、ずっと片想いしてた」
「ええっ!? だってあの頃から僕、ただのガリ勉メガネだったんだよ? 好かれるような要素全然ないじゃん!」
「それが逆に落ち着いて見えて大人っぽかったと言うか……、あーもう! こんなときにこんなこと言わせないでよね!」
言わせているつもりはないのだけれども、葉月がポロポロと喋ってしまうので仕方がない。
随分と彼女はお酒の力によって背中を押されるらしい。
「……この間タクシー呼びに来たとき、思わず一太郎の左手の薬指を見ちゃったんだ。結婚してないよなって」
「まあ、離婚してたからね」
「そう聞いたときはちょっとモヤっとしたけど、結局最後にはほっとしてた」
それは、僕の最初の結婚に対して葉月が少なからず嫉妬したということ。
人に想われるということに悪い気はしない。でもそのせいで葉月が今の今まで他の誰とも添い遂げようとしなかったのであれば、僕にも罪悪感が生まれる。
「……ごめん、僕がずっと気づかないままだったから」
「いいのいいの。たかだか中学生にそんな気の利いたことなんてできないって」
葉月は手元にあったビールを飲み干してニカッと笑う。
そしてその拍子に何かいいことを思いついたのか、彼女は大きな瞳をさらに大きく見開いて僕を見た。
「そうだ! いっそのこと、私と付き合わない?」
「えっ……?」
こぢんまりとした店内に、葉月の大きな声が響く。
一瞬周りに聞かれてしまうと思ってドッキリしたけど、店主以外に他に人がいなくて助かった。
「で、でも……、わざわざこんなバツイチ都落ち男と付き合う必要なんて……」
こんな田舎では僕みたいな奴と付き合うなんて周囲から疎まれること間違いなしだ。
葉月が良いと思っていたとしても、そこは良心が痛んでしまう。
「バツイチとかそんなこと気にしてないって。私いまフリーだし、一太郎が良いんならリハビリ……、とかも兼ねちゃえば一石二鳥じゃん」
「確かにそうだけど、葉月に迷惑が……」
リハビリ――、要は僕の女性恐怖症を治すということを手伝ってくれるわけだ。
まずは距離を詰めて触れ合えるように、そしていずれは一つになれるようにということだろう。
おそらく一筋縄ではいかないだろうし、彼女を傷つけるようなこともたくさんあるに違いない。そう思うと、素直に首を縦に振ることができない。
僕がくよくよしていると、葉月は距離を詰めてすり寄ってくる。僕が発作を起こさないギリギリの距離だ。
「それとも、私じゃ嫌……?」
今日の葉月の服装は、ちょっと肌を出しているなと思っていたけど、ここに来てそれが猛威をふるう。
彼女の胸の谷間が間近にある。
女性恐怖症とはいえども、やっぱり僕の目はそこに行ってしまうのだ。
ガン見していると思われないよう、僕は視線を逸らす。
「い、いや、そんなことは全然無いんだけど……」
「大丈夫大丈夫、心配なんて不要だよ。私、結構リハビリのテクニックには自信あるよ? 伊達に元AV女優やってないから」
サラッと葉月は衝撃的な事実を言う。
僕の耳がこんな至近距離で聞き間違えるようなポンコツでなければ、彼女は間違いなく『元AV女優』と言ったはず。
念の為、確認をとろう。
「……葉月? 今、なんて?」
「だから、元AV女優だって。ほらこれ、私の出演作品」
葉月はスマホを開いてFから始まる男性陣御用達のアダルトなアプリを開いて僕に見せてきた。
その画面には、かなり化粧で顔を盛られた女優の姿。いわゆる黒ギャルというやつ。
確かに葉月だと言われれば葉月に見えなくもない。
「ほらこれ、かなり化粧濃いから全然気づかれないんだけど、1番売れたやつだよ。イヤホンあるから視聴する?」
「い、いいです! 遠慮しておきます!」
「えー、面と向かってそう言われるとちょっと落ち込むんたけどー」
「……こんなところでAVなんて見るわけないでしょ」
正直なところ、気になるといえばめちゃくちゃ気になる。でも、人が少ないとはいえ公共の場でAVを見るのはさすがによろしくない。
そんなたじろぐ僕を見た葉月は、なぜか不敵な笑顔を浮かべる。
「今はだめってことは、家に帰ったら見るんだ。ふーん、一太郎のえっち」
「なっ……!」
心を見透かすような葉月の言葉に、心臓がはちきれそうになった。
そんな僕に追い打ちをかけるように、葉月はとんでもないことを言う。
「じゃあせっかくだし、告白の返事はそれを見てもらったあとで聞こうかな」
今日イチいたずらっぽい顔で葉月はそう言う。
何がせっかくなのかよくわからないが、これは完敗だ。逃げるに逃げられない。
「もう僕が見るのは確定なんだね……」
「むしろ見てくれないと嫌」
「……わかったよ、ちゃんと見てから返事をすればいいんでしょ」
我ながら、男として最高に情けない告白の保留のしかただったと思う。
◆
その夜、葉月に言われたとおりに作品を鑑賞した。久しぶりに自分の中の『男』に火がついたと思う。
リハビリと称してあの葉月と作品中のようにあんなことやこんなことが出来るのかと思うと、なかなか僕自身が収まるのに時間がかかってしまった。
吐き出すだけ吐き出したあと、僕は賢者になった語彙の足りない脳で感想をまとめる。
黒ギャルというものは、とってもえっちだ。
葉月と一緒なら、僕は立ち直ることがてきるのかも。そう期待してしまった僕は、そのまま葉月へ告白の返事をするために電話をかけた。
……立ち直るではなく、『勃ち直る』と表現したほうがいいのか? まあ、どっちでもいいか。
読んで頂きありがとうございます
キチゲ開放みたいな作品でした、以前に書いたものの放出です
本来は青春バンドものを書きますが、たまにはこういうこともやらかします
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