エピローグ:復活の時
眠りから覚めると、そこは暗い闇の中だった。
「う……」
私はとても重たい頭を上げて周囲を見回した。
やはり、暗黒だ。一面の暗黒以外は何もない。
私はどれほどの間眠りについていたのであろうか。
何ヶ月か、何年か、何十年か。
老いることのないこの体には変化がないので時間の流れはよくわからない。
私はゆっくりと記憶を呼び起こして、そして、大きくため息を漏らした。
「デリック……」
愛していた人の前に敗れた自分の姿はなんと醜かったことだろう。
それで死ねればよかった。しかし現にこの身はこうして復活を果たしたのだから、笑ってしまう。
もはや生きる意味など何もないのに、どうして生き続けなければならないのだろう。
なのに死ぬことなどできない。……私は魔女なのだから。
私は立ち上がり、紫の短髪を揺らしながら静かに歩き出した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「あれから、千年」
私が知り得たことは、デリックに敗れてから千年もの長い長い時間が流れていたという事実だけだった。
――もはやこの世界に私の知る人や物は何もないのだろう。そう思ってなんだか悲しくなった。
「もう悲しみなんて捨てたはずだろう」
自分を叱責し、無理矢理に微笑みを作った。
「私は、私はこの世界を滅ぼさなければならない。そうだ。そうだった。まだ存続し続けているのであれば」
私は破滅の魔女。魔女ならば、果たさなければならないことがあるはずだ。
千年が経ったこの世界は、私の知るものとは異なってしまった。けれど、私の役目はまだ終わっていない。
「そしてきっといつかは……」
一人きりになってしまうのだろう。
その言葉が喉元まで出かかり、私はそれをグッと堪えた。
孤独でも構わない。
……あの悪魔と契約を交わした時から、いいや、全てを投げ出したその瞬間から、私は孤独のままだったのだから。
だというのに涙が溢れるのを抑えられず、私は嗚咽した。
ねえ、私はいつ救われるの? もう救われたっていいでしょう? どうして私はこんなにも苦しまなければならないの? もう、いいでしょう……?
感情のない冷徹な魔女になろうと決めたのに、まだまだ女々しい私はダメだな。
そう思って情けなくなる。すぐさま涙を拭った。
「こんな世界、早く消えてしまえばいい」
復活を果たした悪の魔女は、悲壮な笑みを浮かべたのだった。
〜完〜
ご読了、ありがとうございました。
面白いと少しでも思ってくださいましたら、ブックマークや評価をしていただけると作者がとっても喜びます。
ご意見ご感想、お待ちしております!
続編にあたる話は↓こちら!
『裸の聖女』が世界を救うまでの物語 〜異世界召喚されてしまった少女は、早くおうちに帰りたいのです〜
https://ncode.syosetu.com/n5006ht/
他にも同じ世界観のシリーズ他作品もあります。評価欄★★★★★下にリンクがありますので、もしよろしければそちらもよろしくお願いします。




