47:世界を焼き尽くして
「ファイヤー」
視界が赤く染め上がる。
それは、メアを殺す時に放った炎よりも何十倍も巨大に巨大に膨れ上がっていく。
「……マレガレット!」
デリックが私を呼んでいる。
私はもうマレガレットではないというのに愚かだ。愚かで愚かで愚かすぎる。
「マレガレットには戻れない。もう、二度と」
私の内側から溢れ出した炎は、瞬時に世界を包み込んでいった。
廃墟を焼き、街を焼き、さらに全てを赤くする。生き残りも恐らくは死んでいるのではないだろうか。
けれどそんな業火の中、私の目の前に立つデリックは死んでいなかった。
聖剣で必死に炎を薙ぎ払い、熱風を耐え凌いでいたのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……っ。君は、俺を殺す気か」
私は頷き、水・風・土の魔法を一気に放つ。
地面がめくり上がり、水が溢れ出し、風が渦巻く。だがデリックはやはり倒れなかった。
「ならば――仕方あるまいな。そうやすやすと世界を滅ぼさせるわけにはいかん」
聖剣を天に掲げるデリック。
それに一体何の意味があるのか? それを問いかける前にことが起こった。
空へ凄まじい稲妻が駆け抜けたのである。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ハハハハッ! 面白いですねぇ。いいですよいいですよ、僕がお相手いたしましょう!」
聖剣から迸った光を受けた悪魔。しかし悪魔は腹の下にバリアを張り、それを勢いよく跳ね返した。
「聖剣の力、素晴らしいっ! もっともっと味わせてくださいよ」
世界を焼き尽くす赤。
空に伸びる白い光。
天を覆い尽くす黒い悪魔。
衝撃と轟音が繰り返され、デリックと悪魔の攻撃が交わっていく。
私は風の刀でデリックを狙う。絶え間なく、愛しい彼の首を刎ねるため。
世界は今、私たち三人のものだった。
悪の魔女に立ち向かう王子。その姿は物語にすれば人気が出そうだな、と私は思った。
しかしそんなことにはならない。
王子は無惨に死ぬ。悪の魔女がこの世界を掌握し、闇に染めていくのだ。
そしてその時が来る――。
「このまま持久戦に持ち込むのもアレなので……さっさと決着つけちゃいましょうか!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
直後、空から無数の氷柱が降り注ぐ。
本来それに串刺しにされるのはデリックのはずだった。なのに、
「ぎへぇっ!?」
苦鳴を漏らして地に落ちたのは、他ならぬ悪魔の方であった。
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