表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/60

45:愛の叫び

 マレガレット視点に戻ります。

「あなたが、私をずっと好きでいてくれれば良かったの! 私はあなたを愛してたのに、こんなにも愛してるのに! 私を見捨ててメアを選んで! 私をお嫁さんにしてくれるって言ったのに! 言ったのに、いつもいつも死んで! 死んでばっかり! 私がどんなに悲しかったか……苦しかったか、辛くて死にたくなったか、わかってるの!?」


 私の怒声が、街中に響く。

 ずっと胸の内に秘めていた想い。それが溢れ出し、止まらなくなる。


「……私がすぐに諦めたとでも思ってるの? 大切な物があって、守りたい人がいて。ボロボロになっても頑張って、でも裏切られ続けて。

 もう、嫌になった。私なんかが何をしたって無駄。どうせあなたは殺される。私の幸せは奪われる。私はただ、幸せになりたいだけなのに……!」


 デリックの表情が、ほんの少しだけこわばったように見えた。

 彼は私の繰り返しの日々を知らない。だからこれは、私の身勝手な八つ当たりでしかないのだろうけれど。


「もう、いい! もういいでしょう!? どうせ世界が滅ぶなら私が滅ぼす! あなたを殺すのは私! 私が、あなたをこの手で……この手で殺すの」


 私の愛は彼には届かないから。

 だから、私は叫ぶ。歪んだ愛と言われてもいい。彼に最期を与えるのは私だ。それが私のデリックへの最後の愛なのだから。


「君は、君は何を言ってるんだ、マレガレット。俺は君を裏切ってなんか」


「裏切ったわよ。何度も何度も何度も何度も! 婚約破棄? 断罪? 何でもいいわ。『これ』のせいで私は何度あなたに裏切られたか」


 私が取り出したのは、『魅了の石』。

 これを持っていた方が便利なこともあるかも知れないと思い、悪魔にありかを聞いて手に入れておいたものだ。私はそれを憎たらしい思いで見つめる。


「こんな石ころに覆されるくらいの愛なんでしょう? あなたの私への気持ちは。所詮、私はドブネズミよ。哀れみだけで助けてもらったことくらい知ってた。……だからもういいの」


 私は、『魅了の石』を握りつぶした。

 ガシャンと音を立てて石が割れる。私を苦しめ続けたこの石は、あっさりと砕け散ったのだ。


 そして私――魔女は静かに笑った。


「悪魔。頼む」


「わかってますよ、マレ様」


 その瞬間、私の肩の上で大人しくしていた黒い鳥の体が膨れ上がった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「マレガレット、これは……」


「私はもうマレガレットではない。マレと、そう呼べ」


 私の口調はもうすっかり戻っている。

 先ほどは取り乱してしまったが、これが本来の魔女の姿なのだ。


 そして私は、天を指した。


「あれは見ての通り、終焉の悪魔だ。今からあれが全てを吹き飛ばし、消し炭にする」


 空に広がるのは巨大すぎる黒い翼。

 それは巨鳥と化した悪魔だった。気持ちの悪い笑みを浮かべながら彼は言う。


「さあさあ、これから大きくやらかしちゃいますよ〜」


 赤く染まった空の下、世界の終焉が始まる……はず、だったのだが。


「――待て」


 それを止めたのは、デリックだった。

 面白い! 続きを読みたい! など思っていただけましたら、ブックマークや評価をしてくださると作者がとっても喜びます。

 ご意見ご感想、お待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ