43:衝突
魔法と聖剣の輝きがぶつかる。
衝突が始まった途端、辺りに火花が飛び散った。私はデリックを殺しにかかる。しかしその全てを彼は受け止め、私へと返してくる。
「なかなか、やるな……! 頼む悪魔っ」
「へいへい。『時間停止』」
悪魔が何やら囁いた。
その途端、時魔法の力が放たれる。それはデリックの体を固め、動けなくするためのものだった……のだが。
「なっ」それすらも打ち払われてしまった。
この剣の話は私も聞いたことがある。
王国に伝わる秘宝。どんな邪の力も振り払う、魔剣だという話だった。
クソ。
どうしたらいい。どうすれば聖剣を奪えるのかと私は思考する。
彼の腕を斬り飛ばし、聖剣を地面に落とせばいいのではないか。
そう考えて腕を狙うも、デリックの動きはまるで達人で、どんな攻撃も払われる。こんなに人殺しに時間をかけるのは初めてだった。
一方、そんな高度な衝突が起きているというのに、デリックは喋り続けていた。
「マレガレット! どうしてこんな無意味な戦いなどをしようとする? なぜ、世界が憎いんだ?」
「――それはっ。あなたには関係ないだろう!」
光魔法を炸裂させた。
それはすでに廃墟だったこの建物や、メアやらジェイク王子の死体たちを吹き飛ばす。しかしデリックだけが健在であった。
「関係ないかも知れないが、でも俺は知りたいんだ。何故君が辛そうな顔をして、泣いているのかを」
「泣いてなどいないっ。ふざけるのも、大概にしろ」
また、衝突。
これで何度目になるのか。数えるのも嫌になるくらいだ。
「泣いてるじゃないか。泣いていないとしたら、目の下に光るそれは何なんだ」
言われてから、初めて気づいた。
自分が……情けないくらいにポロポロと大粒の涙を流していることに。
馬鹿な。
何故私は泣いている? 涙を流す理由なんて何も。
私はもう全部全部諦めた。投げ出した。なのに今更何を。
「どうしてなんだマレガレット、君は――」
「じゃああなたは何故、私を裏切ったの!?」
その瞬間、私は甲高い声で叫んでいた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
好きだった。
好きで好きで好きで好きで、彼だけ守れれば私はそれでいいと思っていた。
だって彼は私の全てだったから。
嫌いになれるはずがない。見捨てられるわけ、ない。
なのに彼は私を何度も裏切る。
婚約破棄を突きつけて、私を遠ざける。
それでも私は良かった。
彼さえ生きていれば、それで。
なのに死ぬ。
私を裏切ったくせに、死ぬ。
時魔法のことを明かしたことだってあった。
なのに信じてくれなかったじゃないの。私のことなんてどうでもいいくせに。
裏切られて、傷ついて、それでも立ち上がって。
でも私はもう折れてしまった。だから魔女になることを決めたのに。
どうして今更、そんなことを言うの?
どうして今更、生き残ってしまっているの?
今からやり直すなんてことできっこないのに。
あなたは私を裏切ったのに。
悪魔に魂を売った私。
メアに絆されたあなた。
二人は決して交わることはないはずだったでしょう? あなたは世界と共に死んでいくはずだったでしょう?
私の心を揺らさないで。
私を、狂わせないで。
「もう、いいでしょう……!?」
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