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42:第二王子の横槍

 鋭い風の刀たちが、デリックに降り注ぐ。


 しかしそれが彼に当たることはなかった。

 何故なら、聖剣でその全部を払い落としていたからだ。


「クソ……!」


 思わず汚い言葉が口から漏れ出す。

 見えざる刃を弾かれるなど、あってはならないことだった。

 どうしたら、こいつを殺せる。どうしたら――。


「マレガレット、どうして君はこんなことをしたんだ? 城の者たちも、メアも、街の民も……。俺のせいなのか? 俺が憎かったなら、俺を殺せばいいじゃないか!」


「あなたが憎い……!? 私は、この世界が憎いんだっ」


 また『ウィンド・カッター』を投げる。

 だがまた落とされた。どうして、届かない。ならばと水の濁流を起こせば、しかしまたも聖剣でそれを打ち払われてしまう。

 反対に私の方へ水が押し寄せ、私は少し流された。


「はぁ、はぁ、はぁ……っ」


「これはなかなかの修羅場ですねぇー。別れた男と女の再会って感じですかい?」


「うるさい!」


 私は邪魔な悪魔へ、適当な魔法をぶつける。

 もちろんそれくらいのことで悪魔が怯むわけはないが、黙らせるのには充分であった。


 そして、私が再びデリックへ向けて攻撃をしようとしたその時だった。


「お二人さん。お熱いところ悪いが、オレが相手だよ?」


 ……また別の邪魔者が姿を見せたのは。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ジェイク第二王子の横槍は、私にとって想定外だった。

 『闇の騎士』たちを大勢引き連れた彼は、デリックを殺すつもりに違いなかった。ヘラヘラ笑いながら、ここ――廃墟となった建物の中へ入って来る。


「魔女さん、あとはオレに任せて。敵のメア・ドーラン妃はやれたんだろ? だから兄さんはオレが……」


「死ね、愚か者」


 そして直後にはジェイクの首が宙を飛んでいた。

 彼は「は?」と目を丸くしている。死んだことにさえ気づかぬままで、一瞬にして息絶えた。


 威張り散らしていたくせに口ほどにもない奴め。


 私はイライラしながら、ジェイクの死体ごと『闇の騎士』どもを風の刃で切り刻んだ。

 私の邪魔をする奴は何者であろうと許さない。恨むなら、愚かで頭の足りない己を恨むがいい。


 処理を終えて振り向けば、赤髪の少年が唖然としていた。

 当然だろう。弟が入って来たかと思えばすぐさま殺されたのだから。


「何を――」


「邪魔者を排除しただけだ。あのような知恵の回らぬ奴を生かしておく義理はない。そうだろう?」


「マレガレット、君は……君はどうしたんだ? どうしてジェイクを」


「第二王子は王国への謀反を企んでいた。もちろんそれを手伝ったのは私だ。だが不要になったので処理した。これで、気兼ねなく世界を滅ぼすことができる」


 私はふふっと笑って見せた。

 それはまさしく魔女の笑み。誰もを魅了する魔の微笑だった。


「邪魔者はもういない。デリック、今からあなたをこの手で殺してあげる」

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