間話8:これでアタシは幸せに……
王妃になるための躾はさらに厳しいものだったけど、それも構わない。
だって幸せのためだと思えば、どんなに厳しくたって今更平気だった。
そして三年後、アタシは憧れの花嫁になるため、ウェディングドレスを着付けてもらっている。
これから念願の結婚式なのだ。
「アタシは『平民上がりの妃』として、後世にまで語られるんだろうなぁ。だって華々しい人生だよね? 親に捨てられてあんな劣悪な孤児院にいたのに、王妃様だよ? 誰もが羨んで憧れて。……最高!」
着付けが終わると、結婚式の会場へ。
ドレスの締め付けにも随分慣れてきたなとふと思う。アタシの今までの人生は、全て今この瞬間のためにあったんだ。
会場には、愛する彼の姿。
婚約してから三年、さらにさらに逞しくなっている。今日からあの人は婚約者ではなくアタシの夫なんだね。
「デリック様ぁ、お待たせしましたぁ。可愛いですかぁ?」
「……そうだな、可愛いと思うぞ」
「嬉しいですぅ」
アタシはニコニコ笑いながら、彼にエスコートされて壇上へ。
すでにデリックはアタシにメロメロだ。アタシがどれだけ色仕掛けを頑張って来たことか……それもようやっと報われる。
さあ、始めよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「愛を誓うと宣言せよ」
国王が厳かに言う。
アタシはそれにゆっくりと頷いた。
「アタシは、デリック様を夫として支え続けていくことを誓いますぅ」
デリックも軽く頷いた。恥ずかしいのか何なのか、言葉にはしなかったけれど。
誓いの言葉が終わると、自由な身動きが許される。
アタシは今、もう死んでもいいくらい嬉しい。
最愛の人と結ばれる。今までの泥水を啜るような半生は、こうしてバラ色へと変わるのだ。
思わず笑顔になる。
結婚したら何をしよう。
まず旅行がしたい。それが終わったら二人で愛を育んで、子作りなんてどうだろう。
なんていい考え。そうしようっと。
「デリック様、大好き」
唇を突き出し、身を委ねる。
このまま口づけを――。
「ははっ、はははははっ! あひゃ、はは、ふはっ。ああ、ああはは、ははぁぁあはははは! そこまでだ、メア・ドーラン。あはぁ、はははは!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その瞬間、魔女の悍ましい笑い声が響き、全てが崩壊した。
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