間話7:婚約を結ぶ条件
ドーラン家が、王家に婚約の申し込みをしたのは、あの社交パーティーから一月ほど経った頃。
アタシがお父様と交渉に交渉を重ねた結果、なんとか認めてもらえた。ああ〜、貴族は好きな人と結婚するためにこんな面倒な手順を踏まなければならないのか。
「まあ、アタシがもし貴族の家に拾われなかったらデリック様にも会えなかったわけだし……結果オーライってことで」
そうして、デリック王太子とドーラン家令嬢メア・ドーランのお見合いが行われることになった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「王太子殿下、ごきげんよぅ。改めまして自己紹介をいたしますねぇ。ドーラン家の長女、メア・ドーランと申しますぅ。よろしくお願いしますぅ」
「俺はデリック。この国の第一王子であり王太子だ。よろしく」
ああ、なんて立派な佇まい。
ダンス用ではなくお見合い用の礼服を纏った彼はとても凛々しくいらっしゃる。一方のアタシはパーティードレスではなく、豪華でさらに動きづらいフリフリドレスを着ていた。
「この度はわざわざお時間をいただきましてぇ、本当にありがとうございますぅ」
「では早速本題に入ろうか」
デリックは言った。
「クリス・ドーラン。メア嬢と婚約を結ぶには条件がある」
「な、何でしょう?」とお父様は引き攣ったような緊張しまくった声。
アタシは少しばかりイライラした。
「この娘が孤児院出の不純の娘という噂が立っている。これは誠か? 俺は身分はあまり気にしないが、周囲がうるさいのでな。これが本当か嘘か、確かめておきたい。……正直を言った場合だけ、婚約を許そう」
クリス・ドーランの困惑がアタシにはヒシヒシとわかった。
アタシが養子であることは周囲に明かしていない。アタシは幼少期にずっと隠されて育てられた子、という設定になっている。
しかし一方で、孤児院出身だと見抜いた人間も多いらしい。ドーラン家としてはそれは非常に都合が悪く、だからこそ養父が隠そうとするであろうこともアタシにはわかっていた。
だから、
「この娘は――」
「――アタシは孤児院の娘ですぅ! いじめられていたところをお父様に引き取られてぇ、助けられましたぁ!」
養父の声を遮って、アタシは高らかに宣言した。
王家側はきっと何かしらの情報を掴んでいる。その上で、アタシたちを試そうとしたに違いないと思ったのだ。
そしてそれは恐らく、間違ってはいなかった。
「……わかった。ならば、俺と君との婚約を認めよう」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
アタシと彼の婚約は無事に結ばれる。
これでアタシは未来の王妃だ。誰にも邪魔させない。邪魔するやつは皆殺しにしてもいい。
デリック様の妻になれるんだ。
アタシは心から嬉しくて、彼に抱きついていた。
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