表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/60

間話6:再会のデリック様

 お父様にお願いして、婚約者候補を潰してもらうことは容易かった。

 そうして順調に物事は進み、アタシは十三歳を迎える。


 ――人生二度目のパーティー。気合を入れなくては。


 白い髪を美しく結い上げ、灰色のドレスを纏う。

 これで立派なお嬢様の完成だった。


「メア。淑女らしく、やってくるんだよ」


「もちろんですぅ、お父様ぁ」


 この甘ったれた声ももちろん計算したもの。

 これなら大抵の男はものにできる。そう、教育係は言っていた。


「アタシの美貌と魅力だけで、デリック様を釘付けにしてやるんだから!」


 アタシは、アタシの人生を大きく変えるための運命の場所、社交パーティーへと臨んだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 まずは、パーティーの食事が振る舞われることになっていた。

 食べてから踊るのは苦しくない? と思ったが、そういうルールらしいので仕方ない。


 そうして食堂に入ったアタシは、目を見開いた。


 燃える赤毛に穏やかな緑の瞳。

 数年前より随分と立派な面持ちになった彼は、間違いなく、「デリック様……!」


 どれほど、彼との再会を願ったろう。

 あの初めての出会いからアタシは彼ともう一度会うために、どんな苦難にも耐えて来た。そしてそれがようやく報われる。


 食事になど集中できるはずがなかった。

 胸が高鳴り、動悸が激しい。ああこれが恋なんだ、とアタシは思った。


 高揚する頬。いけない、こんなにドキドキしていたら周囲に気づかれてしまう。そうなったら最悪、体調が悪いとしてパーティーから追い出されるかも。

 落ち着け、落ち着くんだアタシ……!


 食事が終わるとアタシはダンスホールへ駆け込む。

 先に彼を他の女に渡すものか。アタシだけのデリック様なんだから!


 そうして待っていると、すぐに彼が入って来た。

 横に他の人間を抱いていたりはしない。デリック一人だった。


 問題はどうやってデリックとコンタクトを取るかということ。

 考えて、アタシは閃いた。


「あ、あの〜」


 自然に見えるように、たまたまというように。

 今にも倒れてしまいそうなのをグッと堪えて、アタシは声をかけた。


「ちょっとだけぇ、いいですかぁ?」


「……誰だ、君は?」


「あぁ、ごめんなさぁい。アタシ、メア・ドーランっていいますぅ」


 やばいやばい心臓がやばい。爆発する。

 アタシは今、デリック様と喋っているんだ。喋れているんだ!


「ダンスパーティーはこれで二回目なんですけどぉ、前回は随分と小さかったものでぇ……」


 愛くるしい小動物を演じ、アタシが「一緒に踊っていただけませんかぁ?」と懇願する。

 すると、デリックは。


「…………。いいぞ」


 躊躇いがちではあったものの頷いてくれた。

 アタシは、耐え切れなくなって心からの歓喜の叫びを上げる。「ありがとうございまぁぁぁす!!!」

 周囲の視線が集まるが構うものか。ああ、嬉しい。嬉しすぎる。


 それからアタシとデリック様は二人で、最後の曲までずっとダンスを踊り続けた。

 あれはアタシの人生で最高の、夢のような時間だった。


 別れ際、アタシはそっと彼に微笑んで。


「また、踊ってくれますかぁ?」


「機会があったらな」


 最後は少しだけ冷たかったけれど、そこもまた魅力的だったのでよしとする。

 とにかくきっかけと、楽しい時間は得られた。

 次は彼の心を鷲掴みにする。アタシは心の中でそう誓っていた。

 面白い! 続きを読みたい! など思っていただけましたら、ブックマークや評価をしてくださると作者がとっても喜びます。

 ご意見ご感想、お待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ