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間話5:失踪した令嬢、マレガレット・パーレルについて

 アタシは仰天すると共に、嘆き悲しんだ。


「こんなにも努力してデリック様と結ばれようとしたのに……! 横取りなんてずるい、ずるい、ずるすぎるよ……!」


 顔も知らないデリックの婚約者となる娘を思い浮かべ、延々と妬みの言葉をかけ続ける。

 彼女に呪われろと心の中で叫び、そして顔をぐちゃぐちゃにして泣きじゃくる。最悪だと、そう思った。


 ――またアタシの幸せを邪魔するのか。

 いつか、絶対に見返してやる。デリック様はアタシの物だ。


 そう拳を固めたアタシだったが、実際は予想もつかない事態が起きた。

 それが、婚約者になるはずだった少女――マレガレット・パーレルの失踪である。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ドーラン家がマレガレットを誘拐したのではないかと疑われ、一度捜査されたことがある。

 その時に聞いた話によると、マレガレットはこう言い残してその場から消えたのだとか。


『私は、マレガレット・パーレル。――全てを諦め、手放した女よ』


 その言葉にどんな意味があったのか。

 彼女はどういうつもりでデリックの目の前から消えたのか。それはアタシにも皆目見当がつかない。

 この名乗りの直後、彼女は、まるで最初からそこにいなかったかのようにして消えたのだという。


 でも、この事件は、アタシにとってとてもとても好都合だった。


 婚約者候補がいなくなってしまったデリック第一王子。マレガレットの他に婚約者候補はいるかも知れないが、そいつらを押し退けてでもアタシが婚約者になるチャンスは生まれたということ。

 ……まだ、終わりじゃない。


「マレガレットさん、ありがとうね。失踪してくれて本当に助かったよ」


 このまま二度と表舞台には立たないでほしい。どういう理由で消えたにせよ、平民として平々凡々と暮らしていけばいい。

 どんな人生を送るにせよ、アタシに比べたらよほどマシなのだから。


「貴族からしたら、平民生活は大変なのかな? ――まあ、どうでもいいけど」


 顔も知らない相手のことだ。アタシは正直、障害でなくなった以上は何の興味もない。

 あとはデリックにまとわりつくであろう他の女たちを全部排除して、アタシが王妃の座に着くのみ。


 きっとそうすればデリックからの愛だって勝ち取れる。

 アタシはそうして幸せになる。幸せになるべき女なのだから。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 マレガレット・パーレルの名は一年も経てば貴族界の中から消えていた。

 元々、パーレル嬢は幼い頃は体が悪く、いつも屋敷に引きこもりがちだったので他の大勢の貴族は名前しか知らないような存在であった。なのでいなくなっても何の違和感もないのだろう。

 城下町でマレガレットらしき少女の姿を見たとの情報もあったが、それ以降はぷっつり途絶えてしまっていて足跡を辿れない。もはや誰も彼女の発見に期待はしていないだろう。


 アタシはこの結末に満足して微笑む。

 そして次の計画を実行するべく、お父様に頼みに行ったのだった。

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