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間話3:パーティーでの出会い

 燃えるような赤い髪、澄んだ緑の瞳。

 その姿に魅入られたアタシは、その場から動けなくなった。


 貴族の子女になったアタシは、初めてのパーティーに出席することになった。

 ドレスと呼ばれるやたらにきつい衣装を身につけさせられたのは拷問かと思った。鞭打ち並みに辛い。

 それで歩かせられ、呻いていたその時……アタシはとある人に声をかけられたのだ。


「大丈夫か? 見かけない顔だな」


 それが彼――デリックとの初めての出会い。

 アタシはその瞬間、心を奪われた。


 胸がドキドキする。

 こんな思いをしたことは今までにない。これは一体何? 病気?

 頬が高揚する感覚がして、とてつもなく恥ずかしくなる。そして気づいたらこんなことを言っていた。


「デリック、お願い。アタシと踊って!」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 デリックがこの国の第一王子だと知ったのはその後のことだ。

 彼からは「ごめんね」と優しく断られてしまった。どうして? それがアタシの正直な思いだ。


 まだたった八歳であったアタシに身分差の意味はよくわからなかった。

 それに言葉遣いのマナーすら習得していなかったアタシは、デリック王子にしつこく付き纏い、そして挙げ句の果てには護衛たちに引き離されることになる。ますます訳がわからなくて、ただひたすらに怒りが湧いてくる。


 ――アタシの邪魔をしないで!


 アタシはただ、世界で一番幸せになりたいだけだ。

 その中でいい人を見つけたと思った。友達になりたい。ただその一心なのにどうしてそれがいけないのだろう。


 泣き喚くアタシに鋭い視線が突き刺さる。

 腹立たしかった。とにかくイライラしたし、なんだか悲しかった。


 また彼に優しく声をかけてもらいたい。

 今度は手を取り合って踊りたい。色々なことを思う存分に語り合いたい。


 そうすれば、アタシもきっと幸せな気持ちになれる。

 幸福に飢え続けながらアタシは、王子との再会を望んだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 幸せって何だろう?


 わがまま勝手にすること?

 違う。サキはこう言っていた。


『ご飯が食べられて暖かいベッドで眠れて、お母さんがいてお父さんがいて愛されて。……友達がいて、大切な人がいる。そんな生活が幸せなんだって、わたしは思うの』


 ならアタシもそれを願う。

 アタシはデリック様を手に入れる。あの人を手に入れて、絶対に絶対に幸せ者になってやるんだから。


 だけど――。


「お前の態度は悪すぎるようだね。どうやら少し甘く教育しすぎたらしい。これからはしっかり躾けていくつもりだから、覚悟するように」


 笑顔で養父――クリス・ドーランがそんなことを言い出したのだった。

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