間話2:金持ちに拾われて
幸せになりたい。いや、なってやるんだ。
その決意を固めたアタシの元に、一通の手紙が届いた。
「おいお前」と乱雑に首根っこを引っ掴まれる。そしてお説教を聞かされる部屋に連れて行かれた。
「手紙が届いた。お前宛てだ」
「……? アタシ宛て?」
ガクガク震えながらそう問いかけるアタシ。
ここの部屋は基本的に拷問の如き体罰を受けるところだ。また何かやられるのではないかと恐ろしくて仕方なかったのだ。
「『そこの孤児院の子供を一人、もらいたい』。これが先方の要望だ。条件が合致するのがお前だった。今すぐその家に行く支度をしろ」
「ど、どんな家……?」
孤児たちは、ごく稀にどこかの家へ行くことがある。
しかしその大抵の場所は劣悪な環境であったり、孤児たちを奴隷のように扱うために引き取ったりするため、最悪の場合は死ぬ。
アタシは死にたくなんてなかった。が、これを断れば今すぐにでも首が飛ぶだろう。
いくつかの決まり事――この孤児院でのことを決して話さないことなど――を約束させられると、アタシは早速服を着せられた。
いつもよりは小マシな麻の服。所々破けてはいるが、服を着られること自体が珍しいので驚いたものだ。
「行け」
面会室と呼ばれる部屋へ押し込められたアタシ。
そこで出会ったのは――。
「やあ、こんにちは」
立派な服を着た男性だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
アタシを養子にしたのは、この国で有数の金持ち家の当主。
クリス・ドーラン。彼はそう名乗った。
「私は生憎子供に恵まれなくてね。ここの孤児院の噂を聞いたので、もらいに来たんだよ」
「あ、うん……。よろしく」
どうやら恐ろしい人ではなさそうだ。
サキは言っていた。外にはもっとマシな大人はたくさんいるよと。
この人は、そういういい人なのかも知れない。それだったらいいなと思った。
「アタシ……アタシはメア。メアだよ」
このままアタシは気に入られ、無事に引き取られることになる。
メア・ドーラン。それがアタシの新たな名前になった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
養父に聞いたところによると、あの孤児院は潰れたらしい。
あそこにいた子供たちは解放されたようだが……彼らがどこへ行ったのかは知らない。
もしもサキが生きてくれていたら、と思う。
もう少し早くにドーラン氏が来てくれたら何か変わったかも知れないのに。
しかしどんなに思っても、サキが戻ってくるわけではないのである。
アタシ――メアは必死で、幸せを掴み取らなければならない。
やっと孤児院から出られたのだ。きっと幸せはすぐそこにある。
アタシはそう信じ、貴族令嬢としての生活を始めた。
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