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間話1:孤児院の少女

 今章は丸っとメア視点です。

 アタシは捨てられた。


 何故見放されたのかはわからないし、親の顔も覚えていない。

 ただ孤児院の前に捨てられていた。そしてそれを孤児院の連中が引き取った、それだけだ。


 孤児院は本当にひどい場所。

 食うや食わずの毎日、そして強制労働の日々。その中で友人と呼べる子供たちが何人も何人も死んでいくのを見た。ボロキレのようになっていく彼らをどうすることもできず、そしてアタシ自身も同じように痩せ細る。


 アタシは生まれてからずっと不幸だった。けれど不幸だなんて思ったことはなかった。

 これが普通だと思っていたから。この劣悪な環境の中で、「生きていられるだけ幸せ」と教え込まれていたから。


 でも本当は、生きていられても何も幸せじゃなかった。

 けれども孤児院に閉じ籠り、ただひたすらに命を削るアタシにはわからなかった。


 親を恨んだことはない。

 どこぞで生きているのかも知れないし、もうとっくにこの世には存在しないかも知れない。どちらにせよアタシにとってはどうでもいいことだ。

 アタシは、名前もないこのアタシという存在は、ただ孤児院で殴られ蹴られながらもただ生きていた。

 生きるだけしかできなかった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 アタシが初めて外の世界に憧れを持ったのは、いつの頃だったろう。

 きっかけは新しい子が孤児院に入って来たことだった。


 大抵は幼少の頃に捨てられここへ来るが、彼女は特別だった。

 彼女には名前があった。サキといった。


 サキはアタシと仲良くなり、アタシに色々なことを教えてくれた。

 外の世界にある幸せ。楽しい思い出。人間としての当たり前の生活。


 そんな話を聞いてアタシの中に願望が生まれる。

 『外に出てみたい』。


 最初は抑え込んでいたその気持ちが、日に日にどんどん膨らんで。

 アタシたちはもう耐え切れなくなった。


 そしてある夜、アタシとサキはそれを決行する。

 孤児院からこっそり抜け出す。それだけのはずだったのに。


 怖い大人に見つかってしまった。

 サキはそいつに殺された。アタシだけはなんとか助かったけれど心に穴が空いたかと思うほど辛かったし悲しかった。


 サキはアタシに幸せを教えてくれたのに、サキは幸せになれなかったのだ。


 アタシはサキにもらった『メア』という名前を胸に、生きることになる。

 メア。それがアタシの名前、アタシとサキが共に生きた証。

 そしてメアは幸せになる。サキの分まで、たっぷりたっぷり幸せになってやる。


 それがアタシの決意であり、人生の目標となったのである。

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