29:――救いのために
不老不死により、私にとって死は救いではなくなった。
では私にとっての救いは何か。
それはこの世界が、静寂に包まれることだろう。
私以外の何者もいない世界。
いずれは悪魔も殺すつもりだ。もちろん悪魔には内緒だが。
……悪魔も私にとっては仇。
全てが終われば復讐してやる。私は死なない。だから負けることはない。
悪魔に時魔法を渡してしまったから、タイムリープをされたら厄介だけれど、その時はその時だ。
大体タイムリープの際は他の人から見ればどうなっているのだろうか。一緒にその時間に引き戻されるのか、別の世界が生まれるのか。
厄介になりそうだと私は思う。
しかし決して引くつもりはない。私以外の全てを排除してこそ本当の安寧。その時、私に救いは訪れる。
この長い長い苦しみから抜け出すべく、癒しが。
きっと天の神々だって許してくださるはずだ。
空の上に実在するとされる神々。地上には決して降りて来られないため、ただ状況を傍観することしかできない無能と言ってもいいが。
そいつらに私を裁くことができようか? 私がいくら足掻いても彼らは手助け一つしてくれなかった。
私は誰からも見捨てられたのだ。
だから、何をしたっていいだろう。この穢れた世界をやり直すことくらい、許されるに違いない。
終わったら、私はどうなるのか。
そんなことはわからない。私も無に帰すのかも知れないなと思い、そうであったらどんなにいいだろうと願う。
私はまもなく破滅への動きを始める。
小さな村から潰していき、やがて王国の中心にまで手をかける。そして彼らを殺めるのだ。
ああ、なんていい計画だろう。うっとりしてしまう。
どれくらいの時間がかかるだろう。一年くらい? 物事は急ぎすぎず、確実に進めなくてはいけない。そういえば一年後といえば世界の破滅が訪れる、あの時だ。ちょうどいい。私もあの日あの時を終焉と定めようか。
結婚を誓い合い、口づけを行う二人。
しかし今度そこに立つのは私ではない。きっと彼女――メアだろう。
私はその時に彼らの幸せを打ち砕くのである。
さあ、それに向けてしっかり準備しなくては。悪魔にも手伝わせれば何もかもがうまくいくはずだ。
――全ては救いのために。
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