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21:放浪の旅

 何日も何日も、ただただ彷徨い歩き続けた。


 いけどもいけども求めるものは見つからない。

 どんな苦痛な日々も、あの繰り返しの時間に比べればまるで天国のように感じた。それでも、


「はぁ」


 うっかりため息を漏らしてしまい、私は肩を落とした。……これは私の望んだことだ。なのにいちいち文句を言ってどうするというのか。己にそう罵ってやる。

 そうして目を上げれば、そこにあるのはだだっ広い田園風景。

 ここには泊まれる場所はあるだろうか。


「……空き家がなければないで考えるしかないが」


 ここ数ヶ月、私は世界各地を放浪している。

 もちろんその間には水や食料、そして寝床も必要なわけである。水・食料は川などで手に入れられるが寝床だけはそうもいかない。

 昼間は暖かいが夜冷えがあるので野外で寝るわけにもいかない。現金はあるものの、何かあった時のためにきちんと残しておく必要があった。


「……ちょうどいいところがあったな」


 そう言って私は、誰も住んでいないボロボロの小屋に足を踏み入れた。

 こういうところは人が来ないから好都合だ。しかし、こういった物件がない場合ももちろんある。そういう時は、旅人だと言って泊まらせてもらい一晩をやり過ごすのだ。


「でもいつまでもそういうわけにはいかない。……悪魔を見つけなくては」


 私は必死に悪魔を探している。

 メアや第二王子が手に入れていたあれは、一体どこにいるのだろう。どれだけ渡り歩いてもその噂を聞くことはなく、全くもってどこにいるどんな存在なのかが掴めていない。


 でも悪魔を早く手にしない限り、私が世界を破滅させることはできない。

 魔女になることも叶わないのである。


「――それにしてもあいつらは、どうやってその情報を聞き及んだのだろう」


 私はふとそう思った。

 不思議すぎる。あんな無力な少女が、そしてひょろっとした少年王子が、どうしてそんな話を知り得たのか。

 百度のループの中、彼らが一体どうやって悪魔と出会ったのか何度も聞いたが教えてはもらえず、その度に敗れたのを思い出す。


 きっと口封じされていたか何かだ。そうでなければ、あんなに頑なに話そうとしないなんてはずがない。


『そんなことどうでもいいでしょ、クズ女が!』

『はっはっは! そんなことを訊いてどうする? 愚かな娘よ」


 嫌だ。脳裏に響く声を私は必死でかき消した。

 ……でも一つ、進むべく道が見出せたかも知れない。


「早速、行ってみるしかないだろうな。どんな手を尽くしても聞き出してやる」


 私はそんな言葉を吐くと、満足してその日は眠ったのだった。

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