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18:五度目、六度目、七度目、八度目……

 デリックだけは。

 私に光をくれたあの人だけは、私が救う。このどうしようもない袋小路の中から助けて、そして幸せにする。


 私の願いはしかし、どれだけ繰り返しても叶わなかった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 五度目の人生は、一回目の焼き直しと言ってもいい。

 一度目の時と同じように振る舞おうと努力し、そして陥れられるのを覚悟で生きていった。


「――婚約破棄を宣言する」


 突きつけられる婚約破棄は冷たく、あまりにも悲しすぎて胸が苦しい。

 しかし私は至って平静に頷いた。


「わかったわ。私が悪かった。牢屋にでも何でも入れてちょうだい」


 しかしこの言葉が悪かった。

 牢獄に入れられたものの、メアにひどく怪しまれる結果となってしまった。


 そして悪魔に監視をされる日々。

 悪魔は普段は肩に乗るサイズの黒い鳥であるが、人の言葉を話すこともできるらしい。


 しかし私はあまり言葉を交わさなかった。余計に怪しまれるのが嫌だったから。


 そしてそうしている間に終わりがやって来る。

 第二王子が兄を殺すべく謀反を起こした。


 悪魔が私の見張りにつけられていたせいで行動が遅れ、結果、デリックもメアも死んでしまうという結果に。

 悪魔は行き場を失い、第二王子の手に渡る。そして私は第二王子と結婚させられることになったが。


「こんなの……間違ってるわ」


 デリックが死んだなら、この世界はもう終わりだ。「リープ」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 六度目の世界は、五度目の二の舞にならないようにと頑張った。


 『魅了の石』で虜になったデリックは、メアを愛する。

 そのはずだったのに……。


「それは、『魅了の石』だな」


 たまたまメアと顔を合わせる機会があった私の父親が、彼女の胸元を指して言った。

 彼としては私を王子に嫁がせたいわけであり、メアの存在はとても邪魔だった。だから『魅了の石』だと気づいた瞬間に指摘したのだろう。


 これが私にはひどく痛手であった。


 メアは悪魔の力で逃げ出し、正気に戻ったデリックは私と結ばれることになる。

 しかしこれでは、メアの逆襲を受けて終わる。そしておまけに第二王子の謀反も一切対抗する術がない。


「リープ」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 七度目の世界。

 第二王子が邪魔だったので、殺そうとした。


 しかしメアの時のようにうまくいかず、デリックに見つかってしまい婚約破棄をされる。

 私はその後も必死になんとかしようと奮闘したものの、結局この国は悪魔付属の第二王子の叛逆によって潰れるという末路を辿った。


「リープ」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 悪魔が邪魔だった。

 全ては悪魔が悪い。悪魔さえ滅ぼせばいいと思った。


 悪魔の居場所を突き止めるのは難しかったので、メアが悪魔と手を結んだ後、彼女に迫った。

 そして魔女と悪魔を一気に相手する。とはいえ私はたった一人ではなく、金をふんだんに使いこの国の力自慢をたくさん集めていたのだ。


 しかしそんなのは無意味に等しかった。


 魔女たちの前には誰の力も及ばない。

 私は時の流れを停止させたり遅くしたり速くしたり、ありとあらゆる手で抗ったが、どうやっても敵わない。


「リープ」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 いつも舞い戻る時間はランダムだ。

 一度目の世界を基本とし、後は『リープ』の時に使用した魔力によって時間が決まる。


 婚約破棄直後に戻った時は、『魅了の石』のことを暴いてから悪魔と戦った。

 もっと前、幸せの日々の中で目を覚ました私はデリックに『逃げる』という選択を勧めたこともある。


 第二王子を殺せたことも、二度か三度はあった。

 しかしいつも世界は滅び去っていく。毎度、愛する少年の命を救えないままに。


 繰り返しの数は、百度に迫ろうとした。

 その頃には私の心はすっかり擦り切れてしまっていた。

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