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16:自殺未遂

「マレガレット、いつか俺のお嫁さんになってくれ」


 目の前には、綺麗に整えられた赤髪を風に揺らし、緑色の宝石のような瞳でこちらを見つめてくる少年。

 ああ……。私はそっと、彼の頬に手を伸ばした。


「ごめん、なさいっ……。ごめん……ごめんなさい」


 ――守れなくて。

 ――私を庇って死なせてしまって。

 ――あなたの、お嫁さんになれなくて。


 涙は自然と溢れて来た。

 リープする寸前にも泣いていたというのに、本当に私という奴は女々しくて弱い。


 ああ、そうだ。私は女々しくて弱く、自分の幸せなんてとてもとても願える身じゃない。

 彼と結ばれたいなんて思い上がりもいいところだ。彼が一度目の世界で告げた婚約破棄――あれが運命なのかも知れない。


 でも私はきっとそれに耐えられないだろう。

 ああ、なんて……なんて残酷なの。


 私は戸惑う少年を抱き止めながら、覚悟を決めた。

 デリックはメアと結ばれ、幸せになるのよ。メアが悪魔を手に入れさえすれば世界が滅ぶことはない。あの第二王子が反乱を起こすかも知れないけれど、悪魔の力があればきっと大丈夫。

 邪魔なのは私。私さえいなければ。


「こんなドブネズミを、どうか許して……」


 舌を噛み切った瞬間に口の中に血の味が溢れて、私はまたも意識を失った。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 これは私が後で聞かされたことなのだけれど。


 私はあの場で自殺を決行したものの……失敗に終わったらしい。

 デリックがすぐに護衛を呼びに行ったおかげもあっただろうし、王城にはたくさんの名医がいた。


 こうして延命をされた私は、屋敷に送り返される。

 父親にとっては、ただでさえお荷物だった娘がさらなるお荷物として帰って来たということだ。

 しかし下手に死なせると王族に怪しまれてしまう。ので、城から医者が来る時以外は地下に押し込め、半ば放置していたのだとか。


 デリックは私のことをとても心配していた。

 自分のせいで私が自殺未遂などという馬鹿な行いをしたのではないか。そう思い、長い間苦しみ続けたらしい。


 ……私はそんなことも考えず、簡単に自殺をしてしまった。

 この世から私がいなくなればきっと彼のためになる。そう思ってのことだったのに。


 何年も何年も昏睡していた私だが、十六の時――本来ならデリックと私の結婚式が行われるはずだったそのとしに目覚めることになる。

 しかしその時にはもう、全部が遅すぎた。

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