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14:安堵も束の間

 メアの行方不明は広く知られたが、死体すら見つけることができぬままで事件はうやむやになっていた。

 まさか死体さえ発見されないとは思ってもみなかった。ここまで王国の捜査機関はボンクラなのか。


「まあいいわ。どうでも」


 私は順調に日々を重ねていた。

 デリックと私の愛を邪魔する者など誰もいない。互いに愛し合い、支え合って生きていく。


 無事に社交パーティーデビューも果たせたし、私は何の歪みもない楽しい人生を送っていた。

 いつしか私は十六歳で、結婚の年になっていた。しかし不穏の影は一切見えない。


 私はまたもウェディングドレスに身を包んでいた。

 今回は、きちんとハッピーエンドにしてみせる。そう意気込んで、会場へ。


 愛の誓い。

 そして、彼と口づけを――。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そこに破滅は訪れた。


 崩壊する王城、地響き、振動。

 次々と上がる悲鳴。重なる絶叫。逃げ惑う人々、叫びうずくまる者。


「何!?」


 私は叫び、周囲を見回した。

 これは一体、どうしたというのだろう。


 魔女は殺したはずだ。この手で殺めた。それは私が一番知っている。

 なのに……なのにこの衝撃は、まるであの時と同じ――。


「幸せな日を滅びの日に変えてやろう」


 そんな声が空から降り注ぐ。

 見上げた私は、「え」と声を漏らさずにはいられない。


 崩れかけの天井に立つのは、赤髪に緑瞳の少年。

 しかしデリックはまだこの腕の中に温もりがある。では、高嗤う彼は?


「……ジェイス」


「ははっ! そうさそうだそうだとも! ああ兄さん、結婚おめでとう!」


 呻くようなデリックの声に、天井の少年が笑う。

 私は体を硬直させ、動けなくなってしまった。だって、


「ジェイス……様?」


 この国の第二王子でありデリックの弟、ジェイス。

 それが少年の正体だというのだから。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 平穏な日々の中、一つだけ不穏な話があった。

 それは第二王子、ジェイスの失踪。ある日突然城からその姿を消したのだという。


 私は今まで一度と彼と会ったことがなかったし、ほとんど意識すらしていなかった。

 デリックとはどうやら不仲らしくて、それでも「どこへ行ったろうか」と毎日のように心配していた。


 しかしまさか、彼がこんな形で戻って来るなど誰が予想できようか。

 そしてジェイスの肩の上には、忌々しき黒い鳥が止まっていた。


「なぜあなたが、悪魔を!?」


「おや? 悪魔のことを知っているんだ。これは意外だね!」


「……なんで、なんであなたが!」


 私たちの祝福の時を壊すのか。

 私とデリックは今、最高の幸せだった。幸せを掴もうとしていたのだ。


 ……でもそれを予想外の相手に妨げられた。

 不安が胸いっぱいに広がっていく。


 どうしよう。どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう――。

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