12:やり直し
意識が浮上した先、そこは十歳の頃、私とデリックが婚約して間もない頃のことだった。
どうして前回の地点と違うのか。
きっとそれは、二度目の人生の最後、私が魔力を尽くして遡行を行ったからだろう。
「今回こそ、何としても……」
何もかもを救い、メアを――魔女を殺さなければならない。
私はそう決心して、三度目の人生を歩み出した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
時魔法で戻って来た三度目の世界の目標は、メアを徹底的に排除すること。
とはいえ、彼女がいつから魔女となったのかはわからない。
魔女というのは、この国に古くから伝わる悪魔という存在と契約を交わした人物のこと。
かつて、悪魔とともに悪さを働く女がいたという。それが語り継がれる魔女であり、それは死力を尽くして討伐されたのだとか。
しかし悪魔がまだ健在であったのなら、新しい魔女が生まれるはずで。
それが彼女、メアということだった。
本当なら悪魔を倒せばいいのだろう。けれど自分にそんな力があるとは私は思えなかった。
だから私は決意する。
そして、こっそりと動き出した。
まずはメアの暮らすドーラン家を探す。
おおっぴらに探すことはできなかったので、色々な文献や町人の情報などを手に入れ、やっとその場所を割り当てた。
そこは私の屋敷からそう遠くない場所だった。
ここなら徒歩でも行けるかも知れない。
そして次に、メアと接触を取ることが必要だった。
もう王太子の婚約者になったことは知らされてしまっているだろうし、警戒されるとは思うのだが……。
私はこっそり手紙を送った。『デリックについて話がある』と。
そして返事は――。
「ぜひ」
この短い一言が紙に書かれていた。
しかしそれを見て私は歓喜する。早速、屋敷を飛び出した。
「この三度目で決着をつける。そして私は、今度こそデリックと愛し合うのよ。そのためならどんな非道な行為も厭わない」
私は、二度目の人生の末路を思い出す。
デリックの死、城の崩壊、悪魔、魔女。……二度とあんな惨劇を起こさせるものか。絶対に私が食い止めてみせる。
私の心は怒りで熱く燃え上がり、まるで『幸せな未来』があることを信じて疑っていなかった。
そうしているうちに、待ち合わせ場所へ到着したのだった。
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