プロローグ:もう、いいでしょう?
もう……いいでしょう?
何もかもを失いたくなかった。
大切な物があって、守りたい人がいて。
だから私は生きて来た。救いたいと、足掻いて足掻いて足掻き続けた。
――でも、疲れてしまった。
幾度繰り返しても裏切られ続け、心が擦り切れていく。
好きだと言っても、大切なんだと叫んでも、誰も聞いてはくれなくて。
突きつけられる婚約破棄。断罪。嘲笑。
逃げても炎に焼き尽くされる。築き上げたものが崩壊していく。
お前が悪いと言われた。それでも頑張った。
けれど虚しく、何度も何度も何度も何度も、破滅して終わる未来。
疲れた。疲れて疲れて疲れ果てて、私はもう、何もかもが嫌になった。
そんなに私がいらなかったの?
そんなにあなたたちは私が嫌いだった?
そんなに私が悪かった?
どうして……どうして、愛してくれないの? 私はこんなにも守りたいと願って、奔走して、心をぐちゃぐちゃにして……なのに。
わかった。もう、わかったわ。
お望み通り、私はあなたたちとは生きていかない。
私は孤独で、たった一人で、世界を呪ってやる。
こんな世界……いらない。私が望んでいた幸せを奪っていくこの世界なんか消えてしまえばいいわ。
そうよ、何もかもが潰れてしまえばいいんだわ。守ろうと足掻いてその結果が同じなら、私が潰してやる。
全てが間違っていた。でも私はやっと、今、気づいた。
世界が破滅するべきなんだって。
全部を救うなんてできっこなかった。
掌からこぼれていって後は何も残らない。だったら失望は、もういらない。
何もかもが不必要。『私自身』すらも同じこと。
無に帰せばいい。いいえ、私がこの手で全てを無にする。
無にして……終わらせてみせる。
私を苦しませないで。悲しませないで。泣かせないで。希望なんて持たないから。
もう、いいでしょう? 楽になったっていいでしょう?
終わりだけが、今の私の救いなのだから。
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