3)組織
「おっつかれ〜♪今帰り?」
一瞬のフワッと浮いた感覚の後に目を開けると、ウルフカットの少女が私たちにそう話しかける姿が見えた。
私たちが来たところはとある建物の入口。ここが私たちが所属している組織が所有している建物だ。わかりやすくいうと、私たちが入ってる部活の部室みたいなもの。出入りは、自由。
「うーちゃんも今帰りなの?」
私は彼女の事をそう呼んでいる。
「そーだよー♪わたし、海に沈められそうになっちゃってちょっと大変だった〜♪」
そう、うーちゃんはえへへと笑う。無邪気に、笑う。
「あんちゃんとなるっちはどこ行ってたの?」
うーちゃんは私と男の子にそう尋ねる。
「俺たちは公園。火。それでわかるだろ?」
男の子こと成世はうーちゃんにそう伝える。
「へー♪あんちゃんのチカラならすぐだね♪じゃあ、行こっか♪」
そういって、うーちゃんは扉の前のにあるタッチパネルのようなものをササッと操作して扉を開ける。
てくてくと両側にビッシリと積まれたダンボールを横に見ながらおよそ20メートル程の距離の一直線の廊下を歩く。
1番奥まで歩いて、そこにある扉の前に私が手をかざすと、ピピっと機械音がして扉が開いた。
「お疲れ。はやかったな。」
社長さんが座っていそうな高級な感じがするふかふかの椅子に座って、大きい机に積まれた書類と向き合っているのは会長のカイ。歳は非公開らしいが、見た目は30代前半。少しぼさっとした髪に、黒縁メガネを、かけているのが特徴だ。
「かいちょー、これどこ置いといたらいい?」
うーちゃんがポケットから袋を取り出して会長に言う。
「あ、私も」
私もポケットを探って、さっき倒した紅い炎から落ちてきた宝石っぽいものを取り出す。
「ヒカルに渡しておいてくれ。」
会長は私たちにそう言う。その後に続けて、
「すまんな。見たらわかると思うんだが、今はしなければならない書類が山ほどあるんだ。また後日改めて話を聞く。」
そういって会長は少しあげたと思った顔をまた下げ、黙々と書類にとりかかった。
「お預かりします」
いつの間にか音もなく後ろに立っていたのは、さっき会長がヒカルと呼んだ会長の秘書だ。見た目は若そう。20代くらい。いつも黒いスーツを着ていて、ピシッとしているようだけど、実はちょっとドジっ子だったりする……
この前、積んであるダンボールを取ろうとしていたら足元にあった別のダンボールに気付かず躓いて『またやっちゃった』と呟いているのを見つけた時は、ちょっと笑いそうになってしまった。
「どうぞー♪」
そういって、うーちゃんが秘書さんに袋を手渡す。
それに続いて私も渡す。
「邪魔しちゃ悪いし、隣の部屋でお茶でも飲まないー?」
そううーちゃんが私たちに問いかける。
「んー、どうする?」
「いいんじゃねーの?」
なるせが私にそう言う。
そうして、うーちゃんに連れられて私たちは隣の部屋に移動した。
お読みいただきありがとうございます!