「藤原 武尊」「ヴェルビー・ナァ・ラーバン」(2)
更新いたしました。
遅い昼食をとる港街の人々で食堂はまだまだごった返していた。
(造船所関係ぽい人はどこかにいないかな?)
アキラがキョロキョロと周りを見渡しているとチャアが助言を告げる。
(私は今、音しか聞こえないからわかりにくいけどドワーフ族の人夫の声が近くでするので、そのそばに座れませんか?)
(え、ああ座れそうだよ)
ドワーフたちに背を向けた椅子にアキラは腰かけるとゆっくりと食事をとり始めた。
「こんなに昼飯を取るのが遅れたのは久しぶりだな」
「まったくだ、何でこんな寒い時期にお偉いさんが見に来る必要が有るのかね」
「なんでも、今主力になりつつある貨物用鉄鋼船の視察に本国の大臣さんが来るらしいので、ある程度完成させておきたいんだとよ」
「たまんないな、少しは休ませてほしいよな・・、夜間組の人夫も俺達が仕事に入る頃迄仕事しているしな・・」
「夜でも昼間の様に明るくしているそうだ・・」
「もう時間が無いぞ、早く戻ろう」
「もう、冷たい弁当しか食べる暇が無くなるんじゃないのかな、やれやれだぜ」
そう言いながらドワーフ達は店を出ていった。
(なんか親父の視察がかなり迷惑を皆にかけているみたいだな)
焼うどんの様なパスタを食べながら溜息をつくと。
(そんなものだと思いますよ、「メィミェイ」もよくぼやいていたわ・・)
チャアが前のマスターの話題が久しぶりに出すと。
(王族でも振り回される事がよく有るのなら、俺達なんかはなすすべ無しだよな・・)
世の中そんなものかともう一度溜息をつき、久しぶりの食堂での食事を楽しむ間もなく終えてしまていた。
食堂を出て、街の造船所が一望できそうな小高い丘を目指して歩き始めると、少し先に字が読めないアキラでも既に馴染みのある「アン商会」の看板が見えてきた。
(この先「アン商会」の店だよ・・道を変えようか?)
(アン商会の店でしたら大きな敷地に大きな建物なんでしょう?、迂回してたら相当遠回りになるんじゃないですか?)
(まあ確かにいつも以上に広そうなんだけど、またここでも出会う事なんてないよね)
(カーメルさんにですか?・・まさかこんなとこで会うなんてありえませんよ)
(そうだよな、まさかだよな・・)
そのまま直進しアキラがようやく「アン商会」の敷地を通り過ぎようとした時、店員らしき男女が急ぎ足で裏口から飛び出てくる。
「お客様、お待ちください店主がいえ、総支配人がお呼びになっています」
その言葉に建物を振り返ると最上階のバルコニーから手を振るカーメルの姿がアキラの目に映った。
「カーメルさん、何故そこに居るんですか・・」
思わずアキラは声に出してしまっていた・・。
次話もどうかよろしくお願いします。
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