「ゼラ・ニィー」「フローレンス・ケイト」(8)
更新いたしました。
「手が・・、手が離れ・・」
途中、チューンが悲鳴を上げていたが対して気にかけた様子もなくアキラはシャトルーズの曲芸の様な飛行を止める事もなく下層階へと突入して行く。
「チューン、うねる様な飛行はここ迄だ。代わりに速度が上がるが、もう少し耐えてくれ」
アキラの無慈悲な言葉にチューンは必死にシャトルーズの足首に自身のゴーレムをしがみつかせる。
「・・見えた」
視界が一気に広がりサバンナの様な広大な空間に飛び出す。
「最後の層だ、この後最後の通路に入ったら少し減速する。そのタイミングで二人は手を放してくれ」
「わかったわ」
ケイトの返事を確認すると同時にアキラは更にシャトルーズを加速する。
地底湖の最下層に到着したアキラが目にした光景は赤黒い大型のゴーレムにしがみついては振りほどかれるニィー達のミスリルゴーレムの姿だった・・。
完全に目覚めてしまっているアダマンタイトゴーレムが上層階に上がって行くという本能を邪魔され怒り狂っていた。
「ニィーさん、何をやっているんですか」
シャトルーズに気が付いたのか大きくゴーレムの手を振りながら叫ぶ。
「アキュラ・・いいところに、助けてくれ、こいつ思ったよりも力が強くて・・三騎がかりでも抑えきれないんだ」
「ニィーさん、ここでは捕獲しないって決めていたじゃないですか」
再びアダマンタイトゴーレムに飛びつくニィー達のゴーレムの様子が砂浜で子供三人がかりで大人に飛び掛かり遊んでもらっている様な光景だよと思いながらアキラは深い溜息をつく。
「もうすぐケイトさん達も来ますので・・、皆で羽交い絞めにしますのでニィーさんが傷をつけない様に一気に魔核を刺して止めを」
最終的にはシャトルーズで頭を決めて転がし、他の四騎で両手両足を抑えニィーが硬いアダマンタイトの隙間を狙って剣を通して止めを刺した。
「やったぞ、これで商会の使命が全う出来た。宮廷騎士団に献上するにふさわしいゴーレムを捕獲できた」
「私達もミスリルゴーレムを二騎分捕獲してきたのよ」
喜ぶニィーにケイトが更に良い報告をすると。
「良かった、本当に良かった」
安堵するニィーにケイトは一言付け加える事となる。
「でも、一度決めた事をリーダー自らが破るのはどうかと思うわよ、多分貴方達三騎はもう戦闘できないほどダメージを受けているみたいになっているわ、反省してね」
「確かに、様々な部位に亀裂が入っているな・・、改めてすまなかった」
二人の会話を耳にしてから、アキラは今の騒ぎで魔獣達が降りてこないか見張る為にその場を離れそしてひとり思う。
あの時・・最後の際にアダマンタイトゴーレムが発した、声にならない叫びの様なものが何か不吉なものの様に感じられ再び溜息をついてしまっていた。
次話もどうかよろしくお願いします。
もしよろしければ小説家になろうでの、評価、ブックマーク・フォロー、感想などを頂けますと幸いです。




