古の戒律により呪縛されし王都「ウロポロ」(8)
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「・・、で一週間後を目途に国民への『聖戦士』披露目の空中分列飛行を行いその夜には晩餐会を執り行う。って一旦、解散していた筈だよね」
「ぜら・あな」商会のゲストルームで遅めの昼食をとる為に食堂に現れたアキラの前に当たり前の様に座っているパーナと二人の護衛キラとトロフの姿が有った。
「打ち合わせの為よ、時間は大切に使わないとね」
パーナの言葉に頷きながら昼食を取り続けるトロフ・・。
「申し訳ないが、現時点での聖戦士殿が見分してきたことに対しての皆に表向きに公表すべき内容をすり合わせておかなければならないという事案がまず急務だったのです」
キラがこの事態を簡潔に説明する。
「そもそも、なんで俺が聖戦士になる訳だよ、他に方法が無かったのかい?」
「だだのゴーレム乗りの少年のありえない出来事の言葉を皆が信じると思いますか?聖戦士の言葉だから皆が耳を貸すようになるのです」
キラが当たり前の様にアキラに説明し、横でパーナとトロフが頷きながら食事をとり続けていた。
「アキュラ冷めるぞ、此処の食事は宮廷で食べる冷めた料理よりずっと旨いのだから」
その言葉に背後からセグーが答える。
「ありがとうございます、「アムス」支店より最新の料理方法を常に伝授させておりますので」
「アキラ、食事の後でお茶をしながら話を詰めていきましょう」
食事目当てかよ・・、と思いながらも大人しく昼食を済ませることにした。
「では、失礼いたします。何か御用が有れば止まり木の横にございますベルでお呼びください」
お茶の用意を済ませセグーが退出していった。
「さて、城では出来ない話を始めましょうか」
パーナがお茶を一口飲むと話を切り出した。
「先程話が出た「アムス」の件も一緒に良いか?」
トロフが尋ねる。
「かまわないわ」
パーナが答えるとトロフが話を続ける。
「最近、「アムス」の話題が市中でも頻繁に話されるようになってきた。皆、特に若者が、新しい文化に興味津々だ」
「この古都「ウロポロ」でも侵略者のはずの「わの国」の街があこがれの対象となるとはな」
キラが溜息をつく。
「アキラはどう思う?」
パーナの問いかけにアキラは答える。
「多分、俺達の世界の産業革命後の世界をなぞらえて行動しているように感じます。多分、王政の廃止それに伴い民衆に選ばれた議会民主主義の確立を狙っていると思います」
「産業革命?」
「新しいものづくりの始まりです、例えば黒船やコンテナによる流通網の構築それに伴う新しい商品の出現なんかです、学校で習っていた範囲なので専門家じゃないんですが・・」
「皆はその新しい商品に夢中って訳よね、王政の廃止か・・」
パーナの言葉にキラが声を荒げる。
「私達は最近まで多少のいざこざは有ったが平穏で静かに暮らしてきた。それを異邦人は全てひっくり返そうというのか!」
「親父はそういう事には疎いけど・・多分、「アン商会」のカーメルさん達は本気で俺達のいた世界をここでも創ろうとしていると思う」
「「わの国」の商品は危険な果実という訳か・・」
トロフの呟きにアキラも呟いた。
「維新や文明開化・・、今、この国は幕末の日本と同じ状態なのかな・・」
三人には解らないチャアにも翻訳できない言葉をアキラは呟いていた・・。
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