南北を分断する長壁の要塞都市「バリキシメト」(10)
更新いたしました。
十年以上の時を経て再開した親子の会話とは思えぬ程、執務室内での空気は緊迫していた。
「転移してからこれまでのお前の足取りの話は、矛盾が無い事は判った、そうだろう秘書官?」
執務室の机の脇に控えている秘書官が答える。
「はい、先程、街に入る際に通過したゲートの記録では「アムス」の港湾で総ヶ月「ぜら・あな商会」の仕事をロックゴーレムで行っていたようです。その後、例の黒船で出航し次は「ベニン」の街に現れた記録が残っています」
「シュミーは「ハサンの国」に「なぁの国」の首脳が秘密裏に船の建造の交渉に向かっているとの報により黒船を拿捕するべく作戦行動に入って以降、消息不明と報告が上がっている。シュミーはこの世界に来てからの愛弟子の一人だ、心配もしていた・・それがなぜ戦闘空域でお前のゴーレムと共に暗黒大陸の地下迷宮「アンマ」に飛ばされ死ななければならん」
アキラは迷っていた・・どこまで正直に話せばよいのかと・・。
「親父、いや国防長官、腕輪の所有権を俺から外してラートリーから確認してもらった方が良いんじゃないか、俺はその為にここを訪れたんだから」
そう言うと、同席しているカーメルも頷き同意した。
「付与魔術士を呼んでくれ」
アキラの肩に乗るラートリーを見つめながら藤原国防長官は秘書官に命じた。
秘書官が部屋を出るとアキラの父はやや口調を変え、カーメルを気にしながらアキラに語り掛ける。
「未確認の情報だが、その戦闘空域でミスリルゴーレムの中隊が全滅している・・しかも黄緑色に光る奇妙なゴーレムにだ。お前がやったのか?」
「船を黒船を護衛する為に戦ったんだ・・、そう行動するのが当たり前だと思う」
「やはり、お前か・・先程の立ち合いの時に間に入りお前を守る様な尋常じゃない気が発生していた・・、お前のゴーレムだな」
「・・シャトルーズだよ、多分「アンマ」の最下層地底湖の主といえるゴーレムだよ」
「なるほどな、そう言われると納得できる」
「それと、ラートリーからシュミーさんの最後の言葉を必ず一人で聞いてくれ・・師匠に当てた最後の言葉だ・・」
「・・わかった。 カーメル悪いがこの後、私は息子とゴーレムで立ち会う・・私の個人的な我儘だ見逃してくれ・・」
カーメルの方に首を向けると一礼をする。苦笑いしながらカーメルは答える。
「お前の息子だ自由に立ち会えばいい、その後で息子が家出しようがお前の家族の問題だ、軍規は忘れろ」
「親父・・」
「ふ、シャトルーズの力・・どれ程の物か確かめさせてもらう」
「そっちが楽しみなのかよ・・、親父、変わってないんだな」
「変わらんよ、例え別の世界に来ようともな」
「そんな性格だから、行方不明になっても何処かで修行しているんじゃないかと御袋も世界中探して回るんだよ」
「お前もそう思われているかもしれんぞ」
「だよな・・」
「入ります」
その時、秘書官が付与魔術士を連れて戻ってきた・・。
どうか次回もよろしくお願いします。
もしよろしければ小説家になろうでの、評価、ブックマーク・フォロー、感想などを頂けますと幸いです




