南北を分断する長壁の要塞都市「バリキシメト」(8)
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「ラートリー、確かにラートリーだな?」
黒髪の男はアキラの左肩の上に飛ぶラートリーに向かって叫んだ。
「将軍?フジワラ将軍!」
ラートリーが頭を下げる。
「今は、フジワラ国防長官だよ」
横からカーメルが訂正する。
「つまりシュミーが、あのシュミーが死んだというのか?説明しろ!」
黒髪の男は再びアキラを睨み気を放つ。
アキラはゆっくりと近づいて来る男の放つ懐かしいが恐ろしい気を感じながら棒立ちとなっていた。
「父さん・・」
それはアキラから絞り出せたたった一つの言葉だった・・。
「・・父さん?」
男は今一度アキラを見つめ、様々な思いのこもった溜息をつく。
「構えてみろ」
アキラに剣を構える様促す。
「はい」
アキラは言われるがまま剣を両手で構える、その直後男は一足飛びに間合いをつめ剣を放つ。
「キーン」
剣のぶつかる音が数回すると男は再び間合いを取り剣を収める。
「腕を上げたな、晃・・」
男は微笑むと、隣の凍り付いた表情のカーメルに声をかける。
「どうやら息子もこの世界に飛ばされたらしい・・」
「晃、見違えたぞ皆は元気か?」
「曾祖父ちゃんは6年程前に亡くなった・・、母さんは父さん貴方を捜し続けていてその旅の途中3年前の飛行機事故で行方不明だ、まさかこんな所に居たなんて・・」
「そうか、師匠・・、探し回ってくれていたのか・・愛・・」
「俺迄、行方不明になってここに居るなんて曾祖母ちゃんに申し訳ないと思ってるよ・・」
「お前も、苦労したんだろうな」
「親父もな」
「親父か・・」
「・・お父さんって感じでもないだろう」
「・・そうだな、シュミー件も含めてこれまでの事を話してくれないか、私も話す事が沢山ある、これから私の執務室まで来てくれないか?」
「はい」
「カーメルすまんが案内してやってくれ」
そう言うと再びゴーレムに搭乗すると部下と共に「バリキシメト」の街に飛び立っていった。
「驚いた・・」
チャアは再びアキラの右肩にとまるとアキラの耳をつかんだ。
「すまない、「わの国」にまさか親父が居るなんて思いもよらなかった」
「アキュラは「わの国」の人間になるの?」
「わからない、でもチャアの思いもわかるし・・親父もこの世界で新たな人生を歩んでるみたいだしな」
「私は・・」
「チャアだってこれまでの人生を裏切ったりできないだろう?ラートリーだってそうだろう?」
「私達フェアリースライムは自分で人生を選ぶ事なんて本質的には許されてないから・・」
ラートリーが悲しそうに答える。
「自分の人生は自分の意思で決められる、それだけの事なのにな」
そう呟くアキラにも本質的にはその事が一番難しい事なのだと感じ取っていた・・。
どうか次回もよろしくお願いします。
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