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南北を分断する長壁の要塞都市「バリキシメト」(5)

更新いたしました。

  再びアキラは街に戻り「アン商会」の前に立っていた。

「ラートリーを俺から解放する約束はカーメルさんに頼まないと無理そうだから・・、店に入るよ」

ラートリーとチャアに最後の確認を取ると店に入る。

「いらっしゃいませ」

店員がアキラの姿を見ると深々と頭を下げる。

「総支配人がお待ちです、どうぞ奥へ」

店員の対応にアキラは少し驚きながらも再び応接室に案内された。



「この前はありがとうございました、おかげで約束を果たすことが出来ました」

アキラは応接室に入ると奥に座るカーメルに頭を下げた。

「それは良かった、「わの国」の昔から住人に出会ってみて君の「わの国」の印象は多少は変わってないかな?」

「はい、皆さんこの地に召喚され苦労されてたんだなと」

「苦労なんてもんじゃないよ、魔力も無く身体能力もこの地にもともと住んでいた獣人達に及ばない・・、ここ数十年に召喚された者が受けていた教育だけが彼等を上回る物だった」

「それが黒船なんですね」

「そうだ、そしてゴーレムを操る事で私達にも魔力ではないがオーラの様な物が備わっていた事が発見された・・、そしてやっと獣人達に一矢報いることが可能となったんだよ」

「でも、他の大陸に迄も攻め込まなくても・・」

「今、私達が行っている事は、独立運動であり、奴隷解放運動でもあり、産業革命でもあり、民衆を君主制から解放し自由な世界を作る為の闘いでもあるからだよ」

「この世界にも私達が知る価値観を持ち込もうとしているのですか?」

「少なくとも、独裁国家よりはましだと思うのだが、君は絶対王政の方が良いと思っているのかな?」

「・・わかりません、ただ少し強引な様な気がします・・、もっと時間がかかってでも穏やかに事を進める事は出来ないのかと感じます」

「・・では、今は私の元には来れないという事かい?」

「申し訳ありませんが・・、しかし顧客としてお願いしたい事が有ります」

アキラの答えにカーメルは少し残念そうにしながら会話を続けた。

「顧客として?、何か購入したい物が有るのかい?」

「はい、腕輪のフェアリースライムを自由にしたいのですが」

「なるほど・・それは、腕輪の支配から解き放ちたいという事かい?、それとも単に所有件を放棄したいという事かい?」

「どちらも可能なのですか?」

カーメルは首を振りながら答える。

「前者はフェアリースライムが死亡した場合だけだ、他の方法で成功したという報告はこれまでにはない。後者はここでも出来たのだが今は出来ない、この近辺の全ての術者は最前線の要塞都市「バリキシメト」に集められている」

「・・そうなんですか」

残念そうに俯くアキラにカーメルは。

「全ての準備が整ったら、私は一度「バリキシメト」に向かう。数日後にはなるかと思うが付いて来るかね」

しばらく考えアキラは答える。

「どうかお願いします」

「わかった、では同行願おう、それに・・君と同じ日本人を紹介できるかもしれない」



アキラは要塞都市「バリキシメト」に向かう事となった。





どうか次回もよろしくお願いします。


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