南北を分断する長壁の要塞都市「バリキシメト」(4)
更新いたしました。
「この村で間違いないかな?」
遠くに見える集落をアキラはラートリーに訊ねてみる。
「見覚えが有ります、間違いないと思います」
街を出て三日歩いた後の昼前にやっと見えてきた村だった。
村に近づくと一人の年老いた異邦人の男が農作業をしていた。
「こんにちは、暑いですね」
アキラが声をかけると。
「ああ、・・こんにちは、見かけない方だが、こんな村に何か用かな?」
「仕事中にすみません、この村に昔住んでいたシュミーさんの事を知てる方はご存じないでしょうか?」
「シュミー?、シュミーは一年程前に両親の墓参りに訊ねてきて以来、ここには訪れてはおらんが・・」
「実は、シュミーさんのご遺体をご両親のお墓の在る所まで運んで参りました、この腕輪でゴーレムと一緒に収納しております」
そう言って、アキラは深々と頭を下げた。
老人は驚いた表情をすると少しうつむいて答えた。
「軍に入隊しゴーレム部隊に配属されたと嬉しそうに言ってたのに・・、どんどん若い者から死んでゆく・・せっかく奴隷のような生活から解放されたというのに・・」
「申し訳ありません」
思わずアキラはもう一度頭を下げた。
「シュミーさんは、私が・・私の為に亡くなられました」
そして、更にもう一度頭を下げた。
「ご両親の墓に案内しよう」
老人はアキラを見つめそして道具をまとめると歩き出した。
そこはまだ真新しいおびただしい数の墓標が整然と並ぶ墓地だった。
「回廊を挟んだ解放軍と獣人達との戦いに獣人達が敗れ敗走した際にここらあたりの村々の異邦人は一斉に反旗を翻し解放軍に参加していったのだが・・多くの犠牲が出てしまった、シュミーの様な戦災孤児は街の孤児院に集められその後、ゴーレムの適性の高い者は軍に配属になっていった・・」
そう言うと二つの墓を指差し老人は再び歩き出す。
「皆に声をかけ道具を取ってくるのでしばらくここでお待ちください」
そう言うと思い出したようにもう一度振り返り。
「それでも・・、昔よりは今の方が良いと皆、感謝しておるんだよ・・」
そう言い残すと老人は歩いて行った。
皆が集まり両親の墓の隣をアキラと村の若者が掘り、アキラがシュミーの深い黄色のミスリルゴーレムを出現させると、村人たちは口々に立派なゴーレムだと驚き称賛した、そしてラートリーの本体がゆっくりと埋葬用の穴に向かい棺を塞ぐように暫くとどまると再びゆっくりとミスリルゴーレムへと向かっていった、眠る様なシュミーがそこに横たわり村人たちの涙を誘った。そして集められ供えられた花に包まれる様に飾り付けがされた姿にアキラは亡き母の葬儀を思い出していた・・。
土を被せるアキラの両肩に乗り気遣うように顔に寄り添う二人のフェアリースライム・・、人が生きる意味について・・そして戦争とはと、アキラは思いを巡らせていた。
どうか次回もよろしくお願いします。
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