暗黒大陸イグドラシルの地下迷宮「アンマ」(12)
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アキラは目の前に広がる光景を現実のものと認識できないでいた。
(彼は先程までは目の前で食事をしていたんだ・・)
もはや、息をしていない男に向かってさらに蹴りを入れる者達・・、信じられないがその中には食堂で見かけなかった獣人達の姿まで有った。
「貴様達は何をやっているんだ!」
語気を荒げアキラが叫ぶ。
「俺達の種族内での問題だ、異邦人は口をはさむな!」
「そうだ、異邦人に取り入ろうとする者は何が有っても許されない」
口々にアキラに何を言っているんだと叫ぶ。
「魔力も無い、力もない異邦人の物を買ったり話したりすることは構わないが・・誇り高き我々を見下すことは決して許されない、ましては自ら誇りを捨て異邦人の足元に下るなどはな!」
「この港のギルドでは種族間の争いは認められていないしギルドが出てくるが、種族内での争いは種族内で治める様決められている」
「わかったら、仲間の元にでも行って良く言い聞かせてもらうんだな」
(アキュラ、駄目です退いて下さい・・)
上空のチャアが必死に怒りに飲み込まれているアキラに自制を促す。
(俺が相席など頼んだのがいけなかったのか?、「アムス」の街では何も問題はおきなかったのに・・)
(西の大陸での戦争と彼らの歴史がそうさせるのだと思います・・、アキラは異邦人以外何物でもないのですから)
(俺が気づかないだけでエルフ族やドワーフ族の人達も本当はあんな感じの種族なのかい?)
(多少は・・、そうですね・・、皆が皆自分の種族こそが最も優れていると心の底では思っていると思います)
(チャアもなのかい?)
(私達は・・全種族に下に見られていると思います・・)
(え、そうなのか・・)
(・・仕方がないですよ・・)
とぼとぼと城門に向かって歩いて行きながらアキラは考える。
自分たちの居た世界でも民族、国家間、地域間、宗教間で多数の紛争が起きてきていた・・ならばその上に種族間の争いが有るのなら、やはり自分が軽率だったのか?
「なあ、チャアは俺に何を求めてるのかな?」
「仇をという思いは今も変わりません、しかし何が有ろうとアキラをサポートしたい言う思いはますます強くなっていますよ」
「ありがとう」
「それと、シャトルーズですよね、この子をもっと知りたいという探求心がどんどん強くなってる・・」
検問所を出るとすぐに人目のつく場所でシャトルーズを呼び出すと大きく翅を広げる。
「予定通りこうすれば、必ず噂になるし俺が生きていることが皆に伝わると思う」
「そうですね、目立つように街の上空を飛んでいきましょう」
「俺は今日の事を彼の事を決して忘れない・・」
シャトルーズはその翅を輝かせ街を飛び越えると西の大陸へと向かっていった。
暗黒大陸イグドラシルの地下迷宮「アンマ」の章はここまでとなります。
次回から新章に入ります、どうか次章もよろしくお願いします。
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