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自由貿易港湾都市「アムス」(5)

更新いたしました。

   「このビル完成してたんですね」

アキラは15階建て位の建物を見上げる。

「ここは商店からは港の反対側ですからね、まあ今日のお礼ともう少し話を聞きたいので夕食はおごらせてもらいますよ」

ピガンが笑いながらビルへと入って行く。

「こんな格好で良いんですか?」

「個室を頼んでいますから問題ないですよ」

そう答えながらエレベーターホールに向かうと、エル族の女性が入り口を開きお辞儀をしていた。

二人が乗り込むと女性が魔力を使い操作しエレベーターは上昇し始める、五階を過ぎると入り口の反対側がガラス面となりアムスの港湾の美しい灯りが見えてくる。

「この世界に来て初めてエレベーターに乗りましたよ」

肩に乗るチャアも驚いている様子だった。

「私もこの街で初めて使いましたよ」

ビガンも実はあまり慣れてない様子だった。


最上階の飲食店の個室に通されると、そこから見える景色は街の郊外の夜景だった。

「高そうな店ですね」

「いや、私も内覧会で来ただけなんだよ、どんな食事が出るか楽しみだよ」

出されてきた料理はアキラの予想した通りフランス料理のフルコースを思わせる料理だった。

「どんどん背の高い建物が建築されていきますね」

「港と都市の再開発が一気に進んでいるようだね」

メインの料理を食べながらビガンが答える、そして会話は本題へと移っていく・・。

「やはり、黒船は買うべきではないと思うのかね」

「はい、新型の大型船に切り替える為の売り出しだと思います」

「黒船でさえも時代遅れとなると思うのかね」

「金銭的な問題も有るでしょうが購入するなら河川港でも接岸可能な大きさの船と外洋を航行する大型船と分けて考え購入すべきかと思います」

「両方使える黒船はその場しのぎになると・・」

「「わの国」に対抗して貿易を伸ばそうとお考えでしたらそうなると思います」

「君の世界ではそうだったと・・」

「はい・・」

「ゴーレムの飛行ユニットについてはどういう意見だね」

「ゴーレムは俺達の世界では存在してませんでしたので・・、航空機というものが大空を飛んでいましたから・・」

「・・聞いたことはあるが、この世界では完成したという話は聞かないな」

「魔力を込めたら浮き上がる金属があるから、必要無いんですよ」

「ではやはり輸送に特化した大型のゴーレムかな?」

「そんな話があるんですか?」

「噂だがな」

「・・・・・・」



食事を終えビガンが会計を済まそうとしていると大部屋の扉が開き異邦人の騎士らしき集団が出てきた。

そしてその中の一人黒い衣装のエルフ族の男にアキラは目が合ってしまった。

「君は・・、港でカーメル殿と話していた・・」

アキラは慌てて念話でチャアに騒がない様に伝える。

「はい、貴方も此処で食事を・・」

「打ち上げだよ、今日の商談での打ち合わせだったのかな?」

エルフ族の男が左足を庇う為に杖を使っている事に気づいた・・その時、背後から突然ビガンが叫ぶ。

「生きていたのか、ラーバン」

「ラーバン様だろう、ビガン」

「貴様!」

更に前に進もうとするビガンの襟首をアキラは慌てて引っ張る、その時キーンという音が通路に響いた。

襟首を離しエルフ族の男を睨みながらアキラはビガンの腹を手で確認する。

横一文字に切られた服に微かに血が滲んでいた。


「仕込み杖か!」

アキラは先程と全く同じ体制で杖を持っているラーバンに恐怖を抱いていた。





どうか次回もよろしくお願いします。


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